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本書は、2015年頃の日本の未来とそれまでに日本が乗り越えなければならない課題を明らかにすることを狙いとしてまとめられたものである。何故2015年かというと、その頃はいくつかの点で日本にとって大きな転換点になると考えられるからである。 まず、日本の総人口はすでに減少が始まっているが、内需に依存している業態は今のままでは成長できなくなる。第2はグローバルな市場統合の動きである。アジアは2015年頃までにFTA(自由貿易協定)が成立している可能性が高く、関税という意味での国の境がなくなるため、クロスボーダーのビジネスにおいては大きな発展のチャンスが訪れる。第3は2010年代になると地方の衰退という論点も深刻さを増すということである。これらの課題を乗り越えていくためには、日本をグローバルに開かれたネットワークの中に位置づける、すなわち、「開国」という考え方が必要であるとしている。 第1章の「成熟化が加速する2015年の日本」では、人口のさらなる減少、大きく変化する家計支出、存在感が失われる日本経済、グローバル化に乗り遅れる日本の非製造業、疲弊する地方と大都市外縁部など、第2章では、「2015年の日本、新しい家族のかたち」ということで大きく変わる家族のあり方、2015年に想定される6つの家族像などがまとめられている。 第3章の「イギリスの経験に学ぶ2015年の活性化の条件」では、スコットランドの事例を取り上げている。この地域は製造業の衰退とともに1980年代に入って「開国」戦略に着手し、今では、欧州を代表するハイテク産業の集積地として見事に復興している。 第4章の「第3の開国の必要性」では、グローバル化が進展する中で閉塞する日本、ガラパゴス化現象に陥る日本ということで携帯電話、デジタル放送、建設業、エネルギー・環境分野などの事例を取り上げている。またグローバル化に巻き込まれるドメスティック産業ということで第3の開国の必要性をまとめている。第5章の「第3の開国で脱ガラパゴス化をめざす日本の産業」では、とりわけ、グローバル化に乗り遅れている日本の非製造業はガラパゴス化現象からの脱却が必要であるということで、国内外のグローバル化先進企業のケーススタディを行っている。そして、非製造業がグローバル化するための成功要因ということで、成功事例の中に見出される7つの共通項をまとめている。 第6章の「第3の開国で閉塞突破をはかる地域社会」では、東京依存型構造から脱却し、地域が諸外国と直接結び付く構造をつくっていくべきであるとの提言をまとめている。いわば、「レイヤーケーキ」型構造から「マーブルケーキ」型の地域構造への転換であるとし、こうした地域構造を構築していくための施策をまとめている。 本書は野村総合研究所における「プロジェクト2015」の成果を取りまとめたものであるが、地域の活性化、非製造業の活性化に向けた非常に重要な方向性が述べられていると考える。是非一読をお勧めしたい一冊である。 |
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