武井武雄をあいする会

童画家武井武雄が妖精ミトと遊んだ創作活動の原点である生家。取り壊し方針の撤回と保育園との併存・活用を岡谷市に求めています

武井武雄をあいする会シンポジウム(5) 参加者からのご意見・ご質問

2013年04月28日 15時43分35秒 | シンポジウム
武井武雄をあいする会の設立趣旨入会申込み生家の保存・活用を求める署名生家保存・活用のための募金

参加者(男性)
 責めるわけではありませんが、武井家住宅は今日まで野ざらし状態だったわけですよね。それがいざ壊されるということになったら、いやそれは大変に貴重なものなんだと。今まで市の方に、保存について強く要請してきたような方はいらっしゃらなかったのでしょうか。


小口代表
 私だけです。
 私の祖父は武井武雄さんと友達で、武井武雄さんの童画というのはすごく身近にありました。でも、「すごい人だな」とあらためて知ったのは、大学生になって、岩波書店の哲学全集で鶴見俊輔さんが武井武雄さんのことを10ページぐらいにわたって書いているのを読んだ時です。あの鶴見俊輔さんがこんなに高く評価している人なんだと思いました。
 武井武雄さんの家は、平成20年5月に岡谷市に寄贈されるまでは個人のものでした。その後、西堀区に「武井武雄の生家を考える会」が設置され、生家を保存することと、西堀保育園の存続を求める答申書が西堀区に出されております。ところが、このあいだ、西堀区から岡谷市へ主屋の取り壊しに賛成するという要望書が提出されてしまいました。これは、大変だということで、このシンポジウムを開催することになったわけです。
 私は、生家は価値があるから保存しようという運動を20年以上ずっとやってきました。千葉大学の大河先生に「どうしても!」ってお願いして鑑定してもらったこともあります。護摩札を全部下ろして調べて、一番古いものは享保12年のものだということを突き止めたりもしました。でも、正直なところ、私は今回はあきらめていたんです。そうしたら、いろいろな人から電話がかかってきて、「おい、いよいよ壊されることになったようだぞ。小口さん、応援するからもう少し頑張ってみないかい。」と言われて、「武井武雄をあいする会」を立ち上げることにしました。
 私は、世界的な童画家である武井武雄さんの生家の取り壊しを、西堀区や岡谷市の一部の人たちだけで決めてしまって、本当に良いのかと疑問に思っています。毎朝応援の電話がかかってきます。岡谷で300年後まで名前が残る人物は、片倉兼太郎と武井武雄しかいません。奇跡的に残っている生家をいま壊してしまって本当にいいのでしょうか。どうか皆さん、一緒に考えていっていただければと思います。


生家をめぐる経過の詳細はこちら


吉澤先生
 「機が熟す」ってよく言うんです。今、私、千曲市の稲荷山の街並み保存にも関わっているのですが、これもずっと放って置かれてきました。20年ほど前に一度、国の建設省サイドから街並み保存について仕掛けたことがありました。しかし、なかなかうまくいかなかった。今回は、珍しく地元の人にも話に乗っていいただいて、妻籠とか、奈良井とか、同じような流れになりつつあります。物事にはタイミングというか、建物っていうのはずっと放って置かれても、魂があるというのか、不思議なんですけれども、方向が変わってしまうということがあります。私は地元ではないのでよくわからない部分もありますが、今まで放って置かれたというのは、機が熟していなかったということだろうと思います。ただ、この建物は、先ほど藤森先生が話されていたように、何か大きな生命力をもった建物であって、そうじゃなかったら300年も取り壊されずに残っているはずがない。ぜひ大事にしてほしいと思います。



参加者(男性)
 今日いただいた資料を見ますと、イルフ童画館と生家とが二重投資であるという意見があると書かれていますが、岡谷市の財政的な話というのはどうなっているのでしょうか。


小口代表
 今、岡谷市は約90億円かけて新病院の建設をしています。生家をどのように活用するかにもよりますが、新病院の事業費の1パーセントあれば、保存・再生ができます。私は、市がその気になってくれれば、できない話ではないと思っています。


降幡先生
 今お金の話が出ました。再生工事というのは、今あるものが価値を生むために行うものです。歴史的なものの価値は金銭では計れない部分もありますが、例えば武井武雄さんの生家を5,000万円かけて再生すれば、倍の1億円以上の価値があるものとして蘇らせることができます。再生とはそういうものです。



参加者(女性)
 私は、今日、会員にさせていただきました。武井武雄をあいする会は、この後、どのような活動を展開されるのでしょうか。


小口代表
 生家の保存ということが目的ですが、具体的な活動内容は皆様からこれから募集したいと思っています。会誌の発行とか、命日の2月7日に墓参りをするとか、武井武雄さんのゆかりのある場所を訪れるなどということも考えています。



参加者(男性)
 上田市から来ました。私は上田城復元の審議委員にも加わらせていただいておりますが、上田城は文化庁に文化財として登録されておりますので、実はその区域の中は何も手が出せないんですね。武井武雄さんの生家というのは、文化財にはなっていないとお聞きしました。そうすれば、逆に、生家を活用する方法は、皆さんのパワーとアイデア次第で何でもできるぞと思いました。
 それから上田には、「たそがれ清兵衛」という映画で使われた丸山邸というのがあります。幕末から明治初期に地域のためにお金を出してくれた材木屋さんでして、その丸山邸の復元をしようとしました。そのお金をどうしようかという話になって、みんなのパワーが伝わらないと、国も県も市も動かないよということになって、私たちは復元の実行委員会を城下町活性化会という会から別に作りまして、費用の約3分の1を寄付で集めることができました。
 そこで質問なのですが、岡谷市は、武井武雄さんの生家の復元費用について、見積もったということはあるんでしょうか。


小口代表
 聞いたことがありません。


参加者(男性)
 行政の悪口を言うわけではありませんが、個人所有のものを寄付されても、やっぱりお荷物になってしまうから。これを残そうと思ったら、皆さんの熱意、パワーでお金集めをするということも大事だと思います。丸山邸の話をしますと、お金を集めて、いざ復元しようとしたら、火事になって焼けてしまいました。でも、焼け残った材木を使って復元しました。そうしたら、交通の便があまり良くないところなのですが、皆さん結構訪れてくださいます。
 先ほど、吉澤先生が言われた上田に1軒だけ残っている武士の家は、実は私の友人の家なのですが、文化財に指定されています。「文化財に指定されて、市からいくらもらっているだい。」って聞いたら、年間3,000円だそうです。市はいろいろやらなければいけないことがあるから、優先順位をつけてやっているんでしょうけど、市民の側も自ら動いていくことが必要だと思っています。武井さんの家は文化財に指定されていないそうですから、皆さんの熱意でいくらでも活かすことができます。上田からも応援をしていきたいと思います。



参加者(女性)
 私が、今日参加させていただいたのは、新聞に「今回の運動に最後の望みをかける」と書いてあったからです。絶対にこれは壊してはならないという決意をもって来ました。
 私は川岸の出身ですので、片倉兼太郎の銅像を造るときにも、こうしたことは私どもの代でやっておかないと未来永劫できないよねということで始めました。そうしたら思いのほか寄付が集まって、あのような立派な銅像ができました。それでもお金が余りましたので、余ったお金は今後のメンテナンスということで、全額岡谷市に寄付しました。
 正岡子規の子規庵というのが東京にありますが、正岡子規が亡くなった時の布団がそのまま敷いてあり、庭にはヘチマが植えられています。そこへ行ってみて、子規の偉大さを思い、そして34歳で亡くなったことを本当に悲しく思いました。武井武雄さんの絵はイルフ童画館に行けば見ることができますが、私にとっては、ガラスの中に入れられた美術品という感じで、東京に新しくできた美術館と何ら変わりません。しみじみとした体温を感じません。「あの時代に、あんなモダンなものを描いていたんだ彼は。」という感動は、やはり生家があってこそだと思うんですね。セザンヌにしても、ゴッホにしても、生まれ育った家を保存するだけでなくて、そこに絵の具をつけたパレットを置いて、それに観光客が感動しているわけです。
 岡谷の武井武雄ではなくて、世界中から注目されています。文化に理解がない岡谷市民が生家を壊してしまったと世界の人から言われないように、もし、寄付を募るのであれば、私も年金の中から寄付をいたします。全国に生家が壊されるということを知らしめて、保存するために寄付を集めるということが必要だと思います。今後の運動の方針というのをしっかり立てていただきたいし、お金が本当にどのくらいかかるのかということを示していただきたいと思います。


降幡先生
 今年の1月28日に、私は市長さんにお会いして、生家の保存をお願いしました。そうしたら、市長さんは、あそこは保育園を改築することに決まっているからと言われました。それで私は、両者を調和させるということで、児童図書館という案を提案させていただきました。ですが、私としては、あの建物は、武井武雄先生の生家だとして、あの場所に、あのままで保存するのが本式だと思っています。
 先ほど私は、5,000万円という話をしましたが、これは図書館にしたらいろいろ設備がかかるのでおおざっぱに5,000万円と言いました。ただ保存するだけであれば、もっと費用が安くなる可能性はあります。予算については、どのように活用するかによって、大きく変わってきます。ただ保存する場合、あるいは児童図書館にする場合、それぞれ活用方法がわかれば費用を見積もることができますので、それを皆さんにお示ししていくことは、この会を進めるに当たって必要なことだと考えています。


吉澤先生
 いい建物であることは間違いありません。先ほどのご意見にもありましたとおり、市民の熱意を示していくことも重要だと思います。壊してしまったら、のちのち後悔を残すということは歴然としていますので、そのことは承知してほしいなと、私からはそのことをお伝えしておきます。