「空気」に異議あり!

世の中の「空気」のいくつかを相対化していきます。初めての方は、左下の「カテゴリー」の「注意事項」をご覧ください。

民意は尊重すべき?

2007-08-07 | 政治の空気
よく「民意は厳粛に受け止めなければならない」というような発言を、
選挙に負けた政治家などから聞かれます。
民主主義というのは多数決の原理がはたらき、また政治家にとって選挙民は
お客様のように頭を下げなければならない存在なので、このような発言が
出るのでしょうが、少なくても政治家ではない国民にとっては、
私は選挙結果の民意というのは、結果以上に尊重すべきだとは思いません。

民意は、選挙結果によって既に議席を動かしているという、
実質的な勝利をおさめている訳ですから、
むしろそれ以降は、結果を出した民意こそが批判を受ける責任を背負うと
見るべきでしょう。
多数派によって議席を変え、さらにその多数派に逆らってはならないとする
なら、それはファシズムに他なりません。多数派だからこそ責任があり、
多くの批判を受ける方がはるかにバランスが取れています。

ドイツにおいて、ナチスの責任について、一部ヒトラー1人を極悪人に見立てて
責任を押し付けようという向きもありますが、一方で当時のドイツ国民の責任を
厳粛に受け止める向きもあります。
それは当時のドイツは形式的には民主制で、選挙によって合法的にヒトラーを
選んだからです。ヒトラーは国民を無視して独裁者になった訳ではなく、
多数派の「民意」によって独裁者となりました。

それだけ、多数決という結果を導き出す民意というのは責任が重いものであり、
選挙結果が出た後はむしろ、その民意は少数派からの批判を受けなければ
ならない状況になります。

それを、多数決の結果が出たら、少数派は自らの主張の誤りを認めて
多数派を批判してはいけないかのような空気は、危険なファシズムであり、
身近な例で言えば「いじめ」の空気に他なりません。

アメリカで、現在のブッシュ大統領の再選時の大統領選は、国論を2分する
ギリギリの選挙が行われました。
結果ブッシュは僅差で勝利しましたが、その結果を受けて、
ブッシュを支持しなかったグループは、
ブッシュよりも「ブッシュに投票した国民」に怒りを覚え、
「もうこんな国にはいたくない。カナダにでも移住したい」
という声が多く聞かれたそうです。

どちらが正しい云々ではなく、アメリカは「民主」主義を自分たちの必要性で
作った国ですので、主役は国民であり、国民の意思、つまり「民意」が
大きな責任も伴うということを知っているのです。

実際選挙中も、ブッシュ反対派とブッシュ支持派が、
互いに相手を批判するデモを行っていました。
日本では特に政府支持派がデモをすることなど考えられません。
アメリカのブッシュ支持派はマイケル・ムーアなど数名の反ブッシュ運動家を
厳しく批判するデモを行っていました。

これが「民主」主義であり、批判の「平等」も「機会」も保たれていると
思います。常に誰でも責任があり、批判を受けうる状態なのです。
政府「だけ」が批判を受けていい存在なのではないのです。


前々から申しておりますように、今回の日本の参院選では、
拉致被害者を無視した形で選挙が行われ、民意も被害者を無視した結果を
出しました。この民意の責任は今後も追及されなければなりません。

さらにこの「民意」に乗っかって、多くの自民議員が安倍いじめに加わって
います。中には糞の役にも立たない小泉チルドレンの一部までもが。

確かに議員にとって、安倍氏のような人気のない党首の元では選挙に負ける
可能性が高く、死活問題です。
しかし当選だけのために議員をやるというのは、議員としての資質がないとしか
言いようがありません。こういう時にこそ、議員の真価が問われるのでは
ないでしょうか。

こうした様々な状況、今の日本の政界、マスコミ、国民に蔓延する
「安倍いじめ」の空気を感じるにつけ、

「民意を尊重すべき」

という言葉には、

「全員いじめに加われ!」

という意味が込められているように感じてなりません。

11 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
安倍人気 (人魚)
2007-08-07 20:09:57
本当に日に日に安倍さんを擁護するコメンテーターがいなくなりました。
それも救いようのない幼稚な総理との非難に集中しています。
以前はその実行力も認めていたくせに
総理は心理的に良く耐えていると思います。
朝青龍は爪の垢でも煎じて呑め
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いじめに耐える (太一)
2007-08-08 00:18:07
人魚さん

>日に日に安倍さんを擁護するコメンテーターがいなくなりました

なるほど。「いじめ」の進行状況と全く同じですね。
最初は少しいじめられっ子寄りの意見を持っていた人でも、
いじめが進行するにつれて、自分も責められたくないために、
黙るようになって傍観者になったり、
場合によってはいじめに参加したりするようになる。

私はいじめを受けた経験もありますので、
こうした空気には敏感ですし、絶対に従いたくはないですね。

>総理は心理的に良く耐えていると思います。

そう思います。
朝青龍などと比べると一見ひ弱そうに見えますが、
精神的にはむしろ強いところを見せていると思います。
これからの困難もなんとか耐えて頑張って欲しいです。
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民意は必ずしも尊重しなくてよい。 (松谷 祐子)
2007-08-08 16:30:59
10年先、20年先の国の在り方を考えた時、現在の民意と逆のことをする、せねばならないのが「政治」というものだと思います。そして批判に耐え、後年になってから「あの時のあの政治家は偉かった。」と国民から評価されるのが真の政治家だと思います。民意にはぜひ応えねばならない民意と、さらりとスルーすべき民意があり、それを誤ることなく判断できる者が「大物政治家」と呼ばれるのです。
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長期的な視点の欠如 (太一)
2007-08-08 20:58:41
松谷さん

>10年先、20年先の国の在り方を考えた時、現在の民意と逆のことをする、
>せねばならないのが「政治」というものだと思います。

仰る通りだと思います。
とにかく民意は視野が狭くて短絡的なところがありますからね。

もっとも政治家と民意だけならいいのですが、今はマスコミが巨大な力を持っていて、民意を悪い方に誘導することもしばしばなので、そこも大きな問題だと感じます。
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確かに・・・ (松谷 祐子)
2007-08-09 21:33:54
マスコミは日々、民意を「誘導」どころか「捏造」しております。
街角アンケートなる怪しい調査など、全く信用に価しないものです。
「真実」などは銭(=視聴率)の敵なんですよ。面白ければよし、視聴者をどこまで調子の乗せられるかの競争なんです。でも、このマスコミの体質は日本だけではないようです。台湾等も酷いって、黄文雄先生が仰ってました。ただ、国民にメディアリテラシーが発達しているかどうかが問題なんです。我が国民のメディアリテラシーは、残念ながら極めて低い。参院選に結果がそれを物語っておりましたねぇ~。
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メディアリテラシーの低さ (太一)
2007-08-09 21:41:10
>民意を「捏造」
>「真実」などは銭(=視聴率)の敵

なるほど。その通りですね。

>我が国民のメディアリテラシーは、残念ながら極めて低い。

そう思います。
その理由の数々を、今後とも考えていきたいですね。

>街角アンケートなる怪しい調査

においても悪用されていますが、基本的には他国以上に
「みんなと一緒でなければならない」
と思う心理が大きいと感じますね。
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視聴率も怪しい… (かず)
2007-08-09 22:47:05
視聴率自体も「捏造」の可能性もあります…。
日テレが興信所に依頼して、視聴率計を設置している家庭を探り出した上で、その家に訪問し、幾らかの金銭を渡して、視聴率操作に協力させてた件が2003年にありましたよね。
それに、2000年にニールセンが撤退して以後、ビデオリサーチが視聴率調査を独占していますから、何らかの手心が加えられていても不思議ではないと思います。
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ここにも「談合体質」 (太一)
2007-08-10 00:15:50
かずさん

>視聴率自体も「捏造」の可能性もあります…。

仰る通りだと思います。

ビデオリサーチ社1社で独占しているのだから、当然捏造の疑いは強い。
この前、どこかの会社も視聴率調査をやると宣言していたようですが、結局潰されたのでしょうか。

それと日本の視聴率調査の項目自体、アメリカに比べて遅れていると言われています。単に見ている率だけ量っても、どの程度深く見ているか分かりませんし、宣伝効果の正確な指標にはなりそうもないですね。

松谷さんのお話と総合すれば、ビデオリサーチ社と特定企業の「談合」によって視聴率、つまり「銭」を作り出して、勝手に儲けている。
極めて日本的な業界のあり方ですね。
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先進国型全体主義・メディアファシズム! (かず)
2007-08-10 21:27:28
メディアが行う過激な安倍バッシングを見ていると、これが「先進国型全体主義」「メディアファシズム」なのではないかとさえ思ってしまいます。
記者クラブ制度や、新聞再販制度、免許制度等、旧態依然とした「談合制度」を戦時中から引き摺っている日本のマスコミは、本当に異常です。
戦時中は朝・毎・読をはじめとするマスコミが大政翼賛になり、まさに日本を「全体主義」へと持っていきました。
マスコミは「戦後レジーム」どころか「戦中レジーム」であり、「大本営発表体制」そのものです。
※今は特亜の大本営を発表していますけど…。
その上、どの口で「談合」のニュースを報じているのか疑いたくなります。
更に、自分達が談合して、自分達にとって都合の悪いニュースを封殺するマスコミが、どの口で不祥事を隠蔽していた企業や団体のニュースを報じているのでしょうか?
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メディアファシズムという言葉 (太一)
2007-08-10 23:09:08
かずさん

>先進国型全体主義・メディアファシズム

上手い表現、ありがとうございます。

ネットで「反日ファシズム」という言葉を見てなるほどと思いましたが、
「メディアファシズム」はさらにニュートラルな表現ですね。
今後使うべき表現だと思います。

>戦時中は朝・毎・読をはじめとするマスコミが大政翼賛になり、
>まさに日本を「全体主義」へと持っていきました。
>マスコミは「戦後レジーム」どころか「戦中レジーム」であり、
>「大本営発表体制」そのものです。

そう思います。西村幸祐さんも近いことを言われていました。
戦中と同じであることを、国民は気が付くべきでしょう。

>自分達が談合して、自分達にとって都合の悪いニュースを封殺するマスコミ

国から特権を貰って、一般国民よりもはるかに高い給料を貰っているマスコミ人は、
まさに国民から金をむしりとる公務員のような存在ですね。
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