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『劇場版 ソードアート・オンライン オーディナル・スケール』。

2017-02-19 19:53:21 | 映画日記
『劇場版 ソードアート・オンライン オーディナル・スケール』を観てきた。

映画、というより舞台設定が面白い。
原作は見たことないし、TVシリーズも観てない。
要するにVR技術+脳への刺激を使った”仮想現実”空間が有り、そこに繋がれたまま、ログアウトを不可能にされた、言わば体だけをこちらにおいたまま意識は仮想世界においていかれてしまった事件があり、数千人の死者を出してしまった。詳しいことは知らんが、その奥にはVR空間で並列化された脳という高速計算体を使った何かが進行していた。と言ったところかな?
今作は、VRで飛び込むの空間から、ARで上書きする世界での物語。

VRは現実世界を仮想世界に飛び込ませるもので、ARは仮想世界を現実世界に上書きするものだ。全空間を仮想空間に置き換えるVRと比較してARは随分しょぼく見えるけれど、応用範囲と危険性はARが圧倒的に上だ。
仮想世界に飛び込むVRは全てがリアリティーの世界だ。だから全ては電子化されたステータスであり、自分の能力たとえば腕力や魔法力はスキルでしかない。作中でも死者が出ているように、高度なリアリティーは人を殺すだろう。
人間は思い込みで支配されている。特殊な(あるいは拷問下)状況では、ただの鉛筆が焼きごてに取って代わる。押し付けた鉛筆はミミズ腫れを引き起こす。何日も暗闇に置かれれば幻聴、幻覚が生まれる。焼きごてだ、という思い込み。暗闇でない、と思い込み。だから仮想現実でも一定以上の思い込みと刺激があればあっさり人は死ぬだろう。
VR技術は、Playstation VRなどでもうすでに出来上がっている。幸いなことにそれは五感を刺激するものではないから問題はない。モーションコントローラーの方が危ないぐらいだ。
随分おっかない技術だけど、ARはもっと、オットリとした怖さを持つ。
多くの人が持っているスマートフォン、携帯ゲーム機などでAR技術は体験している。そこに映る風景に仮想現実を上書きする。Windows95ぐらいの頃からあるけれど、グラス型のウェアラブル端末。いよいよそれが本格的に現実世界に現れている。
検索すると様々な製品が出てくると同時に、工場の生産ライン作業者に使用するという事例もある。つまり、この部分にどの部品をつけるのかを現実世界に上書きする。前の工程でどんなミスが有ったのかとか、遅れとか、自分の作業時間などが表示されていくんだろう。
便利だ。ADHDの僕には欲しいツールだ。何時から何をしなくてはいけなくて、次に何を準備しなくちゃいけなくて、という計画性と短期的な記憶を補ってくれる。しかもとんでもないぐらいのオンデマンドで。たぶん、僕の外部ストレージとしての脳となってくれる。
でも、もし、その外部ストレージが書き換えられたら?
でも、もし、そこにあるはずのものがなかったら?
でも、もし、横断者がいる横断歩道に、横断者がいない仮想世界が現実に上書きされたとしたら?
でも、もし、ないはずの鉄柵が、ある仮想世界に上書きされてしまったとしたら。
携帯電話ですら依存症を、インターネットでさえ依存症を生む脆弱な精神を持つ僕らにARが現れたら?

僕は自身を持って言えるけれど、どんなにカッコよくて面白そうで先進的な技術も、必要がなければ受け入れられない。
21世紀になっても車が空を飛ばないのはそのためだ。
21世紀になっても月旅行が実現しないのはそのためだ。
ただ、例外はあって、ファッションとして残る技術もある。
例えば、ウォークマンを始めとして携帯型音楽プレーヤー。タブレット端末。腕時計もそうかもしれない。
僕も使っているスマートウォッチも5年後に残ってるかどうか怪しい。スマートフォンがあれば問題ないからだ。
VRは残らないと思う。どんなに仮想世界にのめり込んでも、それは仮想でしかない。セカンドライフと同じだ。ただ、アダルトコンテンツとリンクすれば残るかもしれない。
でもARは違う。絶対に残るし広がると思う。何よりも軍事転用可能というのがでかい。『虐殺器官』でも描かれているけれど、膨大なデータをオンデマンドで取り出せるのはでかい。医療の場でも使おうとするだろう、CT、MRIなどで詳細なデータを作っておけば、どこに病巣があってどう辿り着けばいいかがわかりやすくていい。
でも、それらはデータじゃない。人を殺す行為だし、人の病気を治すためのものだ。仮想空間に上書きされた現実世界なのだ。

Amazon、googleもそうだけど、彼らは恐ろしく僕の趣向を知っている。ARがこれらとリンクしたら。と思うとゾッとしない。見たものから僕の全てを拾い集めるデータベースが出来上がる。何に興味があるか、食の趣向はなにか、部屋のインテリアはどんなものか、仕事内容はどんなものか、好みの女性のタイプは。

そんなこと言ったらどんな技術にも危険があるだろうが。
と言えば、それまでだけども。

この作品が描く世界は、いつかやってくる世界だと思う。でも、それが実現した世界は、僕らが思うよりも恐ろしい世界だとも思う。

そして、また誰かが次の仮想世界を創り出そうとしている



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