馬鹿バスケ

Brooklyn Comets(ABA)でのアシスタントコーチを終えて、今はNYでスタッツいじり。

Bruce BowenはDirtyか?

2007年06月05日 | バスケについて考える
いやー、Cavsのファイナル進出は予想できなかった。

レギュラーシーズンの勝率がチームの今の実力を現していないチームは、Golden Stateだけではなかった。Cavsにも、Larry HughesのPGへの転向、Pavlovicの成長、またここへきてのGibsonの成長等、シーズン途中から多くの変化があり、チーム力は確実に上昇してきていたのだろう。

ファイナルの見所のひとつは、如何にBruce BowenがスーパースターLeBron Jamesを苦しめられるか?Bowenが一流のディフェンダーと認められてきている一方で、これまでBowenがプレイした2回のファイナル(03年 vs Nets、05年 vs Pistons)では、対戦相手にLeBron級のスターがいなかった。今回はLeBronのお陰で、地味なディフェンダーであるBruce Bowenにも、世間の注目が集まってきているように思う。

注目を集めているもう一つの理由としては、Western Conference準決勝におけるStoudamireの"Dirty"発言。この発言以来、Bruce Bowenは果たして本当にDirtyかという議論がTVやネットを賑わせている。確かに過去のハイライトなんかを見せられると、腕を掴むなんてのはかわいいもんで、ユニフォームを引っ張ったり、倒れた相手の頭を知らん振りして踏んでみたり、かなり汚い。

ちなみに、Sports Illustratedが昨シーズン、現役選手を対象に実施したアンケート、"Who is the dirtiest player in the NBA?"の結果は以下の通り。

Danny Fortson, Sonics.....27%
Bruce Bowen, Spurs.....16%
Reggie Evans, Sonics.....9%
Ron Artest, Kings.....9%
Andres Nucioni, Bulls.....6%
Matt Harpring, Jazz.....5%
Dikembe Mutombo, Rockets.....3%
Raja Bell, Suns.....3%
Mark Madsen, Timberwolves.....2%
Kobe Bryant, Lakers.....1%

さすがBowen見事に2位を確保。しかも1位のFortsonは、昨年途中からプレイングタイムがかなり減ってきていて引退も囁かれているくらいなので、実質的には1位みたいなもの。

しかし、果たして何が相手に「Dirtyだ」と感じさせるのだろう?これを数字で見られないかと思い、とりあえず上のリストに上がった10人の、今シーズンの「48分当たりファウル数」を調べてみたのが以下の表。

Name PF/48 Flag
Fortson 11.54 0
Bowen 3.41 0
Evans 6.12 0
Artest 3.72 0
Nucioni 5.61 1
Harpring 5.66 0
Mutombo 5.80 0
Bell 3.83 1
Madsen 10.19 1
Bryant 3.13 0
(PF/48は、48分当たりファウル数。Flagは、Flagrant Foul数。)

Bowenはあれだけ毎試合相手のベストプレイヤーにマッチアップしていながら、以外にも時間当たりファウルの数は10人の中で下から2番目に低い。Flagrant Foulの数もゼロ。単純にフィジカルなプレイが多いから相手に嫌われている、という訳ではないようだ。

「Dirty」発言のお陰で最近Bowenも多くのインタビューに晒されていて、その幾つかを聞いていると、Bowenは「いかに心理面をかく乱し、相手のパフォーマンスを低下させるか?」を自分の仕事として真剣に捉えていると感じられる。腕を掴む、ユニフォームを掴む、足を引っ掛ける、知らないふりで寝ている相手をまたぐ。。。ルールに触れないギリギリところでの嫌がらせを繰り返すことによって、相手を心理的に動揺させる。バスケットボールは、激しい動きの中で実に微妙な動きや繊細なボールコントロールが要求される為、ちょっとした動揺は大きな結果の違いとなって現れてしまう。

Bowenは、おそらくRaja Bellのような闘志丸出しのディフェンダーと違って、実に冷静に「相手を動揺させる」仕事に徹しているのだと思う。だから相手がカッカしてきてヒートアップした状況にあっても、自らもそれに釣られて冷静さを失うことは少ないのだろう。Bowenの今期のテクニカルファール数はわずか4つ。ちなみにRaja Bellは8個、Kobeは14個(意外なのはTim Duncanですら9個)。

ここまで見ると、BowenがDirtyか?との問いに対する答えはYesになる。でも彼はそれを計算の上で行い、相手を心理的にかく乱し、身体能力に勝る相手のパフォーマンスを下げることに見事に成功していると思う。このファイナルは、どんな手でBowenがLeBronを嫌がらせるのか、その小技に注目してみたい。

参考までに、Sports Illustatedが数ヶ月前に発表した、"Who is the toughest defender in the NBA?"のアンケートの結果は以下の通り。Bowenは、運動能力で相手の威嚇するタイプのディフェンダー、ArtestとBen Wallaceをおさえて見事1位。今年Defensive Player of the Yearに選ばれたMarcus Cambyは5位以内に入ってないし。

Bruce Bowen, Spurs.....37%
Ron Artest, Kings.....31%
Ben Wallace, Bulls.....11%
Andrei Kirilenko, Jazz.....4%
Kobe Bryant, Lakers.....3%


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2 コメント

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Unknown (Dameo)
2007-06-05 17:06:11
月バスの記事拝見させていただきました 面白かったです。

Bruce BowenはNBAのトライアウトの試合で55点を取ったこともあるのにNBAで生きていくためにディフェンダーに転向した選手らしいですね。 頭でNBAに生き残っていくのはすばらしいと思いますが、Bowenのディフェンスは危険なプレイも多く見え、ファールギリギリのディフェンスも大事だとは思いますが、怪我はなしにしてほしいです・・・。

NBAの試合記録で捻挫とか小さい怪我も記録されているならNBAでマッチアップした相手が一番怪我する選手とか出したら面白そうですw

後前回のコメントですがJordanはミートからの1on1にトラベリングが見られた物のほかの部分では欠点を感じなかったのでバスケに詳しい方から見てJordanにも欠点はあるのかと思い書いてました。

長文失礼しました。 お仕事忙しそうですががんばってください。
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Re (t123da)
2007-06-10 03:36:53
Dameoさん

記事拝見頂いたとのこと、ありがとうございます。Bowenはかつてヨーロッパでプレイしていた時は点取り屋で、Tony Parkerが昔Bowenのファンだった、なんてTVでやってました。

怪我の分析は実に面白そうですが、記録がないので難しいかな。。。ではまた。
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