逝きし世の面影

政治、経済、社会、宗教などを脈絡無く語る

今も千人余の水漬く屍と共に沈む戦艦アリゾナとミズリー号

2016年12月09日 | 文化・歴史
兵士の遺体と共に対日戦の記念碑にするアメリカ『それにしても常識外れな酷い話である』

宗教感(価値観)の違いだど言えばそれまでだが、アメリカ一の観光地であるハワイにある真珠湾のアリゾナ記念館の存在が不思議である。
アメリカ海軍の戦艦アリゾナ (Arizona) は1941年12月8日の真珠湾攻撃で1,177名の兵士と共に沈没した。現在も湾の底に沈没状態で静態保存され、船体上にアリゾナ・メモリアルがあるが船体を引きあげず遺体と共にそのまま記念碑としているのです。(なぜか遺体を収容していない)
もちろんアメリカ軍は陸上の戦没者の遺体(遺骨)の収容にはことのほか神経質で、未だに第一次世界大戦や第二次世界大戦、朝鮮戦争とかベトナム戦争の遺骨を掘り起こして遺族に返しているし、アリゾナの場合にも主砲は引き上げて要塞砲として再利用しているのですから、上から船体が見えるほど浅い港湾内のアリゾナの引き上げなど簡単に出来る。ところが遺体諸共に対日戦の記念館にする。(平均的な日本的価値観『道徳観』なら、滅ぼした浅井朝倉の髑髏で杯を作った織田信長を髣髴する極悪非道としか思えない野蛮な所業である)

人類史上最初の世界大戦(総力戦)である第一次世界大戦に対して戦争の域外にいたアメリカが後出しジャイケンで参戦する口実になったドイツ海軍潜水艦によるイギリス船籍のルシタニア号撃沈と同時期に建造されたのがアリゾナで、まだ現役だったが老朽戦艦だった。基準排水量は33,100トン、乗員は915名だが、12月8日の真珠湾攻撃時では1,177名の兵士と共に沈没したとされている。
話は逸れるが、意味不明のスローガン『戦争を無くすための戦争』のアメリカ参戦当時の第一次世界大戦では明らかにドイツ軍側が有利だった。ロシア革命で東部戦線が崩壊し挟撃される心配のなくなったドイツ軍の西部戦線の進軍をアメリカ軍が止めることになる。ちなみに日本とは大違いで実は英仏両国にとってはWWⅠの人的被害はwwⅡの一桁違いの膨大な損害を出している。

1945年9月2日に日本軍の降伏文章が調印された戦艦ミズリー号(排水量48,500トン)が1999年からは沈没したアリゾナの直ぐそばに係留され今では二つで一つの記念館状態になっている(ビフォー&アフターの心算かも知れないが、それにしてもアメリカの目的が露骨すぎて浅ましい限り)

『日本海軍の真珠湾奇襲攻撃(対米戦争)よりも何時間も早い 日本陸軍よるマレー半島攻略戦(対英戦争)』

日本海軍連合艦隊(山本五十六)のパールハーバーは『宣戦布告なき奇襲攻撃だった』との風評ですが、これは間違いでは無いが歴史的事実としては正しくない。日本はアメリカが所有する電信網を利用して真珠湾奇襲攻撃直前に宣戦布告する予定だったが、なぜか日本大使館には電文が届かず結果的に時間が前後する。
イギリスのチャーチルは日本海軍の真珠湾奇襲攻撃を聞いて、歴史的な快挙であると大喜びしているのですが、第一次世界大戦でも第二次世界大戦でも同じで、アメリカの参戦無くしては到底イギリスの勝利は無かったのである。
そしてパールハーバーの何時間も前に日本陸軍は最重要な戦略的要衝(シンガポール)のマレー半島のイギリス軍を奇襲攻撃していた。
米英両国にとって日本陸軍のマレー半島の方は奇襲だったかも知れないが、しかし、日本海軍のハワイの真珠湾の方は全く奇襲では無かったのである。
開戦から2日目の12月10日にはイギリスが誇る最新鋭戦艦であるプリンス・オブ・ウェールズ(排水量36,727トン乗員1,521名 )がレパルスと共にマレー半島東海域で日本軍の航空隊により簡単に撃沈されるが、この時の戦死者はアリゾナよりもはるかに少ない。これは、港湾内だったのに救助出来ず乗員の大部分が死んだアリゾナの例があまりにも異様なのです。

ドイツが第一次世界大戦の敗北(ベルサイユ体制)で失った旧領土

『第二次世界大戦でフランスが降伏しイギリスが猛爆撃下(降伏寸前)で結ばれていた日独伊三国同盟の本当の意味とは、』

そもそも古今東西一つの例外も無く軍事同盟とは共通の仮想敵国を想定して結ばれるものなのです。日英同盟は膨張する陸の覇者ロシア帝国を仮想敵国として七つの海を支配した覇権国家イギリスが、同じく海洋国家である日本と結んだもの。
第二次世界大戦はドイツ軍の東部への膨張(ポーランド侵攻)に対して、1939年9月1日英仏の方が先に宣戦布告して始ったが、その後戦況は小康状態(不思議な平和状態)を続けていた。
ところ1939年8月23日唐突に独ソ不可侵条約が締結され東部戦線の心配を無くした後で、ドイツ軍が突如フランスに電撃的に侵攻し簡単に攻略する。
1940年6月22日にフランスが降伏したのを見た松岡洋右外相は9月の三国同盟締結によってフランス領のインドシナの戦略物資のジュートや穀物とかオランダ領のインドネシアの石油を狙っていたのである。
第二次世界大戦でも第一次世界大戦の時と同じ『火事場泥棒』的な利益を得ようとしていた日本の目的が余りにも分かり易い。その意味での1941年12月8日未明の日本陸軍のマレー半島上陸は一本道だったのである。
逆にまったく意味(目的とする国家的利益)が分からないのが日本海軍(山本五十六)の真珠湾攻撃(対米戦争)である。日本にとってハワイ占領などの計画が最初から無いのですから、アメリカ国民を怒らして日本との戦争に導く以外には、まったく余計な意味不明の作戦だった。(国家によるピンポンダッシュのような迷惑行為?)
戦略的に需要なインドネシア占領とか穀倉地帯のベトナム占領とは大違いでアメリカの植民地のフィリピンの場合にバナナ程度しかないので得られる利益よりも損失の方が大きい。またシーレーンの防衛目的との理屈も、全面戦争が一番危ないのですから基本的に成り立たない。
それなら米ハーバード大留学の経験もある頭脳明晰な山本五十六の目的とは、真珠湾の奇襲攻撃でアメリカ国民を怒らして日本との戦争に導く(アメリカ軍を使って大日本帝国を滅ぼす)ことが隠されたミッションだったことになる。


孫崎 享 ‏@magosaki_ukeru · 12月8日
安倍首相の真珠湾訪問、日本の現職首相として初めてと大々的に報じているが、ファクラー元NYT東京支局長初めてではないとツイッター。吉田首相が現職で訪れている。
孫崎 享@magosaki_ukeru
日本のメディア:大手メディアは安倍首相真珠湾訪問予定を一斉に「現職の総理大臣が真珠湾を訪れて犠牲者を慰霊するのは初めて」と報道したでしょう。「私達は大変な誤報を行いました。お詫びします」と言うのが当然でしょう。どこのメディアがそれをしているか。しないとすれば恥の感覚も喪失したか。
孫崎 享@magosaki_ukeru
安倍真珠湾訪問。吉田首相真珠湾訪問。1951年9月属国的な旧安保条約結んだ帰りに真珠湾訪問。隷属的姿勢の象徴が真珠湾訪問。そして隷属姿勢強める安倍首相が第2番目とはこれまた象徴的。メディア安倍最初と大誤報。誤報謝罪したか。



『サンダル履きでアリゾナ記念館を慰霊訪問した安倍昭恵夫人』2016/09/02 天木直人のブログ

きょう9月2日発売の週刊フライデーに、安倍昭恵夫人のアリゾナ記念館訪問の写真入り記事が掲載されている。
それを見て驚いた。
「夫は夫、わたしはわたし」を繰り返す安倍昭恵夫人の言葉の数々については驚かない。
しかしサンダル履きの軽装で慰霊している姿には驚いた。
ひょっとしてこれは慰霊ではなく、ハワイ観光旅行の一環としてアリゾナ公園を訪れたということなのかもしれない。
あるいは、郷に入れば郷に従えの言葉通り、外務官僚の助言に従って、米国人を真似たということなのかも知れない。
いずれにしてもこのフライデーの記事は必見である(了)

サンダル履きで首にレイをかけた無神経で陽気なハワイ観光客の一人と見れば何の違和感も無いが、場所は千人余の遺体が入った棺桶(水没した戦艦アリゾナ)の上なのですから、やはりこれは不謹慎であろう。ましてや日本国首相の夫人(ファーストレディ)の公職にある人物としては不謹慎の極みである。



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