哲学者か道化師 -A philosopher / A clown-

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冲方丁『スプライトシュピーゲル3 いかづちの日と自由の朝』

2007-12-18 | ライトノベル
スプライトシュピーゲル 3 (3) (富士見ファンタジア文庫 136-10)
冲方 丁
富士見書房

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 冲方丁の近未来サイバーパンクテロものの三巻。今回もいつもに増して、どんどん事態が推移していくカオスな構成。僕は見たことが無いけれど、作者も言及しているからには『24』に近い感じなのではないかと。
 3巻は国家に裏切られた特殊部隊が国家に報復する話なんだけど、なんと言っても超絶構成がすごい。これだけ複雑な流れが圧縮された小説は、他に思いつかない。それに、いかにも冲方的な人間主義+ロマンチシズムがあって、燃える人は燃えるかも。僕はイマイチ乗り切れなかったが。それ以前に、文体見た瞬間にパスしてしまう人も多いだろうが。
 しかし、冲方は文体も構成も語彙も知識も主張もすごいなと思う。呆れるように関心してしまう。そういう意味では、限りなく最強に近い小説家ではあると思うんだけど、最高の小説家ではないんだよなあ。あえて欠点を挙げるとすれば、人間関係を描くときに、いかにも、なものを描きすぎて、感傷など微細なものを描かない点だろうか。何か、構成が巧すぎるだけに損をしている部分があると思うのだけど…。

 まあそれでも『スプライトシュピーゲル』のシリーズのなかでは文句なく今までで一番面白い巻だったと思う。でも、どうなんだろ。あんまり売れてないのかな。実力の割に知られていない作家だし(大学院のそれなりにラノベ読む友だちも知らなかった)。もったいないと思うのだが…。
 今回の話で、展開があったとともに一区切りついて、果たしてどこへゆくのやら。

 最後に、この巻は例によって『オイレンシュピーゲル』の3巻と話がリンクしているのだけど、『スプライト』の3巻を先に読むのがおすすめ。

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