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レーン=メイドナー・モデル

2009年05月19日 | 経済学

今日はスウェーデンの経済政策の基本の一つになっているレーン=メイドナー・モデルを紹介する。同一労働同一賃金の原則もこの理論から導かれるものである。wikipedia より図へのリンク

レーン=メイドナー・モデル(Rehn-Meidner model)は、スウェーデンのブルーカラー労働組合の頂上団体である全国労働組合連合(LO)の経済学者であったイェスタ・レーンとルドルフ・メイドナーによって提唱された経済政策。

右図は、ある職種を雇用する国内企業を利潤率(棒グラフ)の順に並べたものである。このとき、賃金交渉が企業レベル(あるいは産業レベル)で分権的に行われているために、当該職種の賃金水準が線分ABのように利潤率に応じて高くなっていると仮定する。

ここで、労働組合と経営者団体の頂上団体の間で集権的な賃金交渉が行われ(ネオ・コーポらティズム)、企業間や業種間での賃金格差の縮小が実現し(連帯的賃金政策)、当該職種の賃金水準が線分abに設定されたとする(線分abが水平であれば、完全な「同一労働同一賃金」である)。さらに、新しい賃金水準は、インフレーションを引き起こさない程度の水準に抑制することが労使間で合意されたものとする。

この場合、当該職種に対する従前の賃金水準が線分ab以下であった企業1~企業4では、△MAaの労働コストが新たに発生し、経営合理化の圧力が強まる(場合によっては倒産に至る)。その結果、企業1~企業4によって解雇された労働者が失業する。

一方、当該職種に対する従前の賃金水準が線分abを上回っていた企業5~企業8では、△MBbの余剰が生じ、拡大再生産のための投資に振り向けることができる。

このとき、企業1~企業4において生じた失業者が企業5~企業8に吸収されるように、政府は積極的労働市場政策を実施する。これは、労使双方がインフレ抑制に協力する代わりに課せられた政府の義務として位置づけられる。

このように、労働力移動の流動性を高めることによって、インフレを惹起することなく国内経済全体の生産性が高度化され、国際競争力が高まる。

一言で言うと生産性の低い企業を市場から撤退させ、生産性の高い企業に労働者を移動させることによって国全体の生産性を上げると同時に、平等を達成できるということだ。ここで重要なのは、生産性の違いには労働者の能力だけではなく、その企業ごとの生産性格差も関係していると言うことだ。だから、その企業の生産性が高いからといって労働者に高い賃金を払うのは、能力の高くない労働者に高い賃金を支払う非論理的な政策であるということだ。さらに、高い賃金を支払うとその企業の成長が阻害され新しい雇用が生まれず、賃金格差も発生してしまう。だから、社会全体としては生産性の高い企業の賃金を上昇させないようにして成長させ雇用を生み出させ、生産性の低い企業を市場から退出させるのが合理的である。

日本においては、企業別組合になっているために一部の企業の正社員の賃金が高すぎ、優良企業が成長して雇用をどんどん生み出していくということが出来ないでいる。結局は、そのような状態は経済成長を押し下げるだけでなく、不平等さえ拡大してしまうことになる。だからこそ、同一労働同一賃金が重要になってくるとも言えるのである。

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