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資源分配と所得分配

2010年01月09日 | 経済学

二つ前の記事の補足なのだが、現実の経済においては資源分配と所得分配は密接にリンクしている。というのも、賃金水準というのは労働者がしている労働の限界生産性の価値と強く相関しているので、資源分配が決まってしまえば、その資源分配における限界生産性の価値によって賃金水準がほぼ決まってしまうからである。

さらに言うと、現実の世界においては賃金支払い後の所得再分配の方法は予め決まっているので、結果として資源分配が決まってしまえば最終的な所得分配は決まってしまう。したがって、ある資源分配に対する所得分配は無数にあるのに対して、所得分配が決まればそれに対応する最適な資源分配は一つに決まってくるのではなくて、現実には最適な資源分配とそこでの所得分配とは一対一に対応している。

また、社会によって累進課税制度などの所得分配の仕組みには差があるが、基本的には低所得者と高所得者との差を縮める形で行われている。違いは、どの程度所得再分配によって格差を縮めるかの違いだけである。したがって、資源分配が決まってしまえば、その状態における所得分配は元の所得分配から格差を縮小した分配に基本的に限られるために、資源分配が決まってしまえばごく小数の可能性しか所得分配には残されていない。

所得再分配の制度が変わると資源分配に影響があるかも知れないが、その影響は限定的である。というのも、結局は高賃金労働者は高賃金労働者であり続けるだろうし、逆もまた然りである。たから、変わるのは賃金水準の差がどの程度かということだけで結局は基本的な賃金の分配からどれくらい最終的な所得分配がその賃金格差を縮めるかということに過ぎない。賃金上昇が労働時間に与える影響が歴史的にはマイナスであることを考えると、大きな影響があるのはよほど限界税率が高い場合だけだろう。

だから、結局は資源分配が決まってしまえば基本的な所得分配は決まってしまう。そのため、資源分配と所得分配を分けて論じること自体が不可能である。また、資源分配と所得分配との間に密接な関係があるために、資源分配を改善する政策が強力な反発を招くのである。テレビ局のような規制業種の規制を緩和して資源分配を改善することが経済全体にとって好ましいことであることは当たり前であるが、そのような資源分配の改善は必然的に所得分配に影響を与えるので特権階級は必死に反対するのである。

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