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経済成長の源泉

2010年01月16日 | 経済学

昨日の話の続きであるが、経済成長や生産性上昇の源泉は投入される資本や労働、熟練労働者、知識労働者などの資源ではなく、その資源がどのような生産や仕事に使われているのかということ、及びその仕事がどのように組織されているかによっていた。

二十世紀において、先進国の経済は一人当たりGDPで換算して百倍もの成長を遂げたが人間の能力がそれだけ上昇した訳ではない。資本や労働の投入量の増加もその一部しか説明できない。教育水準の上昇によっても説明することができない。そもそも、生産性の上昇が主として起こったのは製造業であり、教育水準が高い労働者が投入された労働ではなかった。つまり、知識労働者の増加は生産性上昇の原因ではなく、むしろ結果であった。

また、技術進歩に経済成長や生産性上昇の原因を求める向きもあるが、十九世紀までは緩やかだった経済成長が、二十世紀において急に加速したことを説明できない。そもそも、基本となる科学技術がもっとも急激に発達したのは十八世紀から十九世紀においてであった。だから、二十世紀に入って突如急激な生産性の上昇と経済成長が起こったというのは、技術進歩によって経済成長や生産性の上昇が起こったとするには矛盾した事実である。

結局のところ、投入資源によっては経済成長や生産性の上昇を説明することはできないのであるが、現在の経済学は答えを持たない。ここ四十年人的資本が経済成長に与える影響や、教育投資の与える所得や経済成長に対する影響が研究されたが、それによって多くの経済成長や生産性上昇を説明できない現実においては、それらだけによって経済を分析しようとすることは逆にミスリーディングになるだろう。

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