文明のターンテーブルThe Turntable of Civilization

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ドイツ見習え論が日本を滅ぼす…ドイツへの憧れが醒めた理由…親日派を装うドイツ人記者

2021年11月10日 14時54分01秒 | 全般

以下は2021年10月1日に出版された下記の本「ドイツ見習え論が日本を滅ぼす」(メルケル後の迷走でEU大波乱)からである。
日本国民のみならず世界中の人たち、特にドイツ国民が必読。
活字の読める国民は最寄りの書店に購読に向かわなければならない。
世界中の人達には、私が出来るだけ知らしめる。

ドイツへの憧れが醒めた理由
豊田 
ドイツとの縁ですが、年長者として私から口を開かせてもらいますと、戦後に武蔵高校から大学受験をする際にドイツ語で受けようとしました。
不規則動詞の表を壁に貼ったりして勉強しました。当時は英語以外で受けたほうがやさしかった。
すると文部省がそれは不公平だと言い出してドイツ語の出題を難しくする方針に変更されたので、私は英語受験に切り替えました。
それでも武蔵高校ではドイツ語受験組がたくさんいましたが。
SF同人誌『宇宙塵』で、ドイツ留学経験のある大学教授の同人から、「君、ドイツ語やってたよね」と言われて、ぺリー・ローダンシリーズというドイツ初のスペースオペラの原本をいただきました。
この本のことを同人雑誌に書いたのですが、現在に至るまで全世界で何億部も売れている超人気本で、春秋の筆法をもってすれば私が最初に発見した、ということになるのですが、これもドイツとの縁の一つです。 
「宇宙英雄ローダン・シリーズ」として今はハヤカワ文庫で650冊も出ています。
何人ものプロ作家が持ち回りで書き続けているシリーズでSFの世界では知らない人のいない世界的なロングセラーです。 
私の若い頃はドイツは総じて人気がありました。
今は大学でもドイツ語の人気は往時ほどではありませんが、日本は明治以来軍制や科学技術、医学、音楽などをドイツに学び、西欧文明の代表格として仰ぎ見ていましたから、ドイツ崇拝の思いは強かったのです。 
ところがある時期から、私自身もそうでしたが、ドイツへの憧れの思いが醒めてしまって、好きだったのが一転して、日本人の立場から批判的に見られるようになった気がします。ドイツを尊敬しているだけでいいのか、といった感じです。
日本人はドイツを好きだけれどドイツ人は必ずしも日本を好きではないのか、と気づいたこともあります。
ヴィルヘルムー世の『黄禍論』などを知ってからはなおそう思いました。
ドイツと日本の似ている部分と違う部分。これはあって当然のことですので、このあたりを40年ドイツに暮らす川口さんにお聞きしたい。
親日派を装うドイツ人記者
川口 
豊田先生のご本を拝読して驚いたのはドイツのことをよくご存じだということです。
普通、本を読んでいてドイツについての記述に出くわすと、ちょっと違うなと思うことが多いのに、先生のご本では、チラッとついでに出てくるような文章に、「そう、そう、その通り」と思うことが多かった。
なのに、ドイツにはいらしたことがないとおっしゃるので、びっくりしました。 
たとえば、ドイツ人が日本人を必ずしも好きではない一例として挙げられた南ドイツ新聞記者のゲブハルト・ヒルシャー氏。
「ドイツ人の代弁者として日本人に対しては親日派を装いながら」という前置きは的を射ています。
私も、彼はおそらく、日本で周りにいた人に対しては親日派を貫いていたと想像しています。
だから、彼がドイツに送っている原稿を見たら、皆、びっくりしたのではないでしょうか。
ドイツ人の日本への悪口を歓迎する日本人
豊田 
ヒルシャーは南ドイツ新聞の主筆で、以前は日独比較文化論で鋭い分析をして人気がありましたが、次第に反日オピニオン・リーダーになりました。
ドイツ人も酷いことをしたが日本人だって同様だ、と言いたかったのでしょう。
残虐な行為をしたのはドイツ人だけではないのだ、と。日本を巻き込んだあげく、一種の免罪符を得ようとしている気がして、愉快ではありませんでした。 
日本人は反省好きですから外国人が悪口を言ってくれるのを歓迎するふうさえあります。
よく世間で言われる自虐史観は、反省好きの国民性の上に成り立っているもので、言われたことを糧として、悪いところは直してよくしていこうという面がありますから、ヒルシャーもそうした言説を言いやすかったかもしれません。 
「嘘も百回言えば本当になる」とヨーゼフ・ゲッベルスがいったように、日本人だってこんな酷いことをしたと大げさに何度も書き送れば信じてしまう人も出てきます。
本当はそういう外国人記者に対し、そのようなやり方は通用しないよと、ちゃんと言ってあげられる日本人がいないとダメなのですが、言われるがままに放置していた。
そういうことが日本人は嫌いなのかもしれませんが、結局日本側の問題でもある。 
意外に自信がないドイツ人
川口 
自虐的とはちょっと違いますがドイツ人もそれと似たところがあって、ホロコーストによって世界中から酷い人間だと非難されてきたからでしょうか、良い意味でも、悪い意味でも、自分たちはどこか特別だと思っているところがあります。
優秀なんだけど、嫌われているかもしれないので、どこかで遠慮しなければいけないというアンビバレンスな感情……。 
以前ドイツ料理についてのエッセイを書いていたとき、それを知った友人に、「あまり悪く書かないでね」と言われたこともありました。
そのときは、「食べ物には自信がないんだな、この人たちは」と思いました。
フランスやイタリアに引け目を感じているのですね。
豊田 
その感じ、韓国にのめりこみはじめたころ、韓国で経験しています。
いろいろなホテルに泊まりましたが、当時は韓国料理のレストランが、まったくなかった。
せっかく韓国へ来たのだからと、街の食堂へでかけました。
そこで、知人に、なぜ韓国のホテルには韓国料理のレストランがないのだと問い詰めると、韓国料理は外国人の囗に合わないからという答えが、戻ってきました。
自信がなかったからでしょう。その韓国人が、今や韓国料理は世界一だなどという。自信不足と自信過剰のあいだで、揺れ動いているようです。 
ところで、食べものの話だとよく言われるのが、「イギリス人はどんな不味いものでも食べられるから七つの海を支配できた。フランス人はそうでないから限られた植民地をフランス風にしたがった」。
ベトナムはフランスパンが美味しいですよね。そこへ行くとドイツは……。
川ロ 
ドイツ人は元来、食べ物にはあまり興味がなかったので、なんでも食べられるかというとそうでもなく、昨日食べたものを今日も明日も食べられれば満足という人が多い。
新しい物を試すという欲求はあまりありません。
それに比べて日本人は、新しいものは大好きだし、それをもっと美味しくしようと味の研鑚を重ねる。
研究心が強いから日本の中華料理は本当に美味しいですよね。ドイツの中華料理はあまり美味しくない。
取り分ける習慣もないから、ドイツの中華料理屋では、一人一皿で注文して黙々と食べています。
皆んなで分けようと提案しても、たいてい却下される。
一人で「青椒肉絲」だけを食べ続けるのは、辛いものがあります。
豊田 
強力な王朝のあった国は料理がいい、と言いますね。王宮に必ず腕のいいコックさんを呼びますから。
川口 
その伝で行くと、小さな邦国の集まりだったので、ドイツという観念が希薄だった。
比較的大きな国でも、コックはフランスから、音楽家はイタリアからなどと連れてきていたことも多く、いつまでたってもドイツ料理というジャンルが確立しなかった。
美味しい物はあっても、では、何がドイツ料理?といわれると、わからないのです。 
日本人はソーセージ(ヴルスト)やジャガイモを挙げますけど、ソーセージは軽食で立ち食い蕎麦みたいなものだし、ジャガイモは単なる主食です。
だからあれがドイツ料理といわれると、ドイツ人は「?」となります。
お肉も野栄も美味しい素材は山ほどありますが、ドイツ料理をイメージできるものがあるようなないような。
ザワークラウトは冬の間のビタミンC補給としてのいわば白菜のお漬物みたいな存在だし、アイスバインなど見るからに野蛮っぽくて、ドイツ人でも好まない人が多い。 
でも、従来の領邦国家それぞれの郷土料理には、美味しいものがたくさんあります。
肉は、牛も豚も鶏も七面鳥も鴨も鹿も、一定の値段を払えばそれぞれに美味しいし、野菜も美味しい。
北ドイツの北海やバルト海に行けば、魚料理も豊富です。
日本人が旅行に行くとそこのところがわからないから、わざわざあまり美味しくない物を注文しては、文句を言う。
たとえばステーキが硬いとか。霜降りを期待してはいけません。
豊田 
私も、同じ失敗をしています。マヤ・アステカ文明を扱ったテレビの仕事で、メキシコへ行ったときのことです。
小松左京さんと私が、かけあい漫才のようなナヴィゲーターを務めました。
夜遅く着いたばかりのホテルで、メニューを吟味するのも面倒なのでステーキを注文したところ、これが硬くて食べにくい。
翌日は朝一番、マヤ・アステカで神様とされるハグアル(ジャガー)の取材に動物園へ。
ちょうど食事の時間で、巨大な肉のかたまりが、ジャガーの前に放りこまれる。
ところが、ジャガーが、食いちぎろうとするが、なかなか噛みきれない。
われわれ、みんな昨夜のステーキを思いだしました。
小松左京が、ジョーク一発。「おい、あいつは、プロだぞ」
もちろん同じ肉ではないが、プロの食肉目ジャガーに食いちぎれないものが、人間に噛みきれるわけがありません(笑)。
この稿続く。


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