文明のターンテーブルThe Turntable of Civilization

日本の時間、世界の時間。
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安倍晋三は日本を再び世界の舞台に押し上げ、経済と外交で並外れたレガシー(遺産)を残した。とりわけ、安保政策は先見の明があり、安倍の名前は世界に生き続ける

2022年08月25日 16時47分00秒 | 全般

以下は、今日の産経新聞に、「民主主義擁護のリーダー」だった安倍元首相、と題して掲載された岡部伸の論文からである。
日本国民のみならず世界中の人達が必読。
見出し以外の文中強調は私。
凶弾に倒れた元首相の安倍晋三。
来月27日に米元大統領オバマ、フランス大統領マクロン、ドイツ前首相メルケルら各国の要人数百人が来日して国葬が挙行される。
外交安全保障で積極的平和主義を掲げ、国際協調路線の枠組み作りを主導して「民主主義世界の擁護者」と肯定的に評価されたためだ。
月刊各誌も改めてそうした功績に焦点をあてた。
7月9日付英フィナンシャル・タイムズ紙は社説で「安倍晋三は日本を再び世界の舞台に押し上げ、経済と外交で並外れたレガシー(遺産)を残した。とりわけ、安保政策は先見の明があり、安倍の名前は世界に生き続ける」と評価した。 
慶応大学教授の細谷雄一は『中央公論』で「戦後日本外交の基礎を作ったのが吉田だとすれば、冷戦後の日本の外交路線をアップデートしたのが安倍晋三元首相」と指摘し、吉田ドクトリンに代わる新外交路線を築いたと説く。  
外交政策研究所代表の宮家邦彦も『VOICE』で「最大の功績は、日本の外交政策の在り方自体を大きく変えたこと」と論じ、常に荒波を生き延びるため何をすべきか答えを出そうとしていたとし、「安倍氏ほど国家観と戦略観をもった政治家はほかにいなかった」と述べた。
中国、ロシア、北朝鮮の核を保有する権威主義国に囲まれ、戦後最悪の東アジアの安全保障環境で日本が生き残るには、軽武装と経済成長重視の日米同盟を基礎とした外交政策を更新しなければならない。
そこで日米同盟のさらなる機能強化を図る日米安保「相互化」のため安全保障法制を整備し、集団的自衛権の行使を可能にした憲法解釈変更を行った。
さらに国家安全保障会議(日本版NSC)を創設し、インテリジェンス活動を強化する特定秘密保護法、テロ組織による組織犯罪を未然防止するテロ等準備罪などを成立させた。
こうした外交安保政策が、「グローバルな積極的平和主義に基づいた、平和構築のための国際協調路線の政策」として行われたと日本大学危機管理学部教授の福田充は『VOICE』で訴える。
細谷は『中央公論』で、政治体制も異なる指導者から信頼され友好関係を築けたのは、「『国際協調主義に基づく積極的平和主義』を掲げて世界中の指導者たちと交流し、さまざまな国際協調枠組みのイニシアティブを発揮したこととも関連している」と論評する。  
海外で「国際協調主義」を評価されながら、国内では「日本の右傾化」「日本を戦争ができる国にする政策」と批判対象になった。
だが福田は『VOICE』で「グローバルな視点に立てば必ずしもそうではない」と反論する。
安保法制は、西側国際社会の潮流である集団安全保障の考えを日本に導入し、自国だけでは他国の侵略から守れなくなった国際状況に合わせた集団的自衛権を確立するためのものだった。 
福田は「ロシアによる一方的なウクライナ侵攻に直面した世界で一国だけで自立して自国を防衛することの困難さを目の当たりにした日本においても、その意義は再認識された」と指摘し、国際的観点から評価される点だと訴える。
憲法解釈変更と新たな安保法制の制定を、当時のメディアの多くが「立憲主義への反逆」「戦後日本が積み上げた民主主義への挑戦」(朝日新聞)などと批判したが、細谷は『中央公論』で「立憲主義を破壊することはなかったし、日本の平和主義を破壊することもなかった(中略)。日本の民主主義が破壊されたわけでもない」と異議を唱え、むしろ世界中で民主主義後退が懸念され、扇動的指導者や権威主義的指導者が溢れるなかで、国際的には「民主主義を擁護するリーダーと認識されてきた」と指摘する。
自由や民主主義などの価値を守り、民主主義世界で指導的地位に立ったからこそ数百人の世界の要人が悼み、日本を訪れるのだ。

これだけ国際評価の高い不世出の「世界の指導者」を送るのは国葬以外にないだろう。
価値観を共有するパートナーとの連携強化を掲げ、2016年に提唱した「自由で開かれたインド太平洋」構想を、駐日米国大使のエマニュエルは『文芸春秋』で「何の疑問も持たず日常的にこのフレースを使っていますが、これこそ安倍元首相のレガシー」とたたえた。
細谷は「今では世界中で政府関係者や専門家が言及する『クアッド』という日米豪印4ヵ国の協力枠組みを発案、提唱した」と加えた。
「安倍首相により日本の右傾化が進んだ」などの俗論に、『VOICE』で宮家は「保守主義者であることは間違いないが、彼の保守主義は自民党内の保守勢力を糾合する手段であり、安倍首相の本質は柔軟な現実主義者」と切り返し、「左傾化し過ぎた日本政治の重心を左から中央に戻そうとしただけであり、それが左からは『右傾化』に見える」と主張する
細谷も「より柔軟でプラグマティックな政治姿勢がそ統治の特徴」で「開かれた保守主義」と指摘した。
ウクライナ戦争の長期化で民主主義の土台が各国で揺らげば、中露の強権国家が力ずくで隙を突いて現状変更を試みるだろう。
米国を代表してエマニュエルが『文芸春秋』で「安倍元首相が作り我々に残してくれた枠組みの中で、様々なことを実行に移していきます」と語るように、国際協調主義に基づき民主主義を守る外交路線を継続させていかなければならない。
(敬称略) 

 

 


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