そんな訳で色々一段落したということで、
久々にショートショートの最新作を公開します。
例によってまったり更新してゆくつもりなので、
気が向いた時にでも読んでもらえたら幸いです。
それでは、お楽しみ下さい。
――
◎過去作品
○連載もの
・クエスト・フォー・ザ・ムーン(全7話)
その1
その2
その3
その4
その5
その6
その7(エピローグ)
・ロボトミー・ソルジャー(全4話)
その1
その2
その3
その4
・メリー・クリスマス・フロム・アルカナ(全2話)
その1
その2
・リターン・フロム・ザ・ドラゴンズ・ヘッド(全7話)
その1
その2
その3
その4
その5
その6
その7
・タイガース・ダウンフォール(全4話)
その1
その2
その3
その4
・デイズ・イン・サマースクール(全5話)
その1
その2
その3
その4
その5
○その他エピソード
・バトルトーナメント:あなたが決める禁止カード(連載再開未定)
その1
その2
・切札戦士 ジョーカー13(ワン・スリー) 第14話
・エージェント・イン・スイムスーツ
・イーリスの物語
・シャドウメイジ・ジ・アサシン
○特別企画
・COJゲームブック:幻のアニメ(2016年エイプリルフール企画)
<<<エスケープ・フロム・ゲイン・グランド その1(プロローグ)>>>
作:Nissa(;-;)IKU
冷たい水たまりの感触が、サンダル越しにも伝わって来る。静馬は息を切らしながら、薄暗い回廊を突き進んでいた。胸当てと腰巻きだけの殆ど半裸に近い姿。その右手にはバットめいた木製の棍棒。電子カメラ付きのゴーグルが無ければ、古代ローマの剣闘士といっても通じたことだろう。
先週までは近代的なバトルスーツに銃器も使うことが許されていた。それが突如「ハンディキャップ」として、この様な余りにも時代錯誤な姿での戦闘を強制されることとなったのである。
強制――然り、彼は望んでこの戦場に飛び込んだ訳ではなかった。ごく普通の高校生であった彼は転校から間もなく何者かによって拉致され、気づいた時にはこの「施設」で武器を手にしての「戦闘」を強制させられていたのである。
初めは何かの研究の為の、VR技術を使った模擬戦闘だと思っていた。だが収容者の顔ぶれの予想以上に早い変化から、1つの疑念が湧き上がった――もしかしてこれは模擬戦闘ではなく、実際の「殺し合い」をさせられているのではないか、でも何故――。
最初の戦闘から既に3ヶ月、未だに答えは見えない。係員に問い合わせても「成績次第」と事務的な答えしか返ってこない。謎に迫る為にも、今は戦闘から生還し、手がかりを掴むしかない――。
ゴーグル内蔵のディスプレイが警告を発する。「生体反応あり」「制限時間120秒」「失敗時自爆装置作動」静馬は思わず舌打ちした。そして爆発と共にミネストローネと化した狩野のことを思い出した。その日狩野は仮眠室に帰ってこなかった。やはりあれは現実なのか、それとも――。
角を曲がると目の前に黒ずくめのバトルスーツ姿の人影が現れた。静馬と同じくゴーグルで目を覆っているが、手には大型の銃器が握られている。先日係員に連れ出された有島か――その背格好やヘルメットからはみ出した銀髪から、静馬は予測した。
敵に声をかけることはルール違反となっている。発覚した場合も直ちに遠隔爆破されるという。やはり戦うしか、殺すしかないのか――静馬は棍棒に力を込めた。
――
「《グラディエーター》!またしても《グラディエーター》が勝ったー!」大音量のテクノミュージックの中、MCの若々しい声がフロアに響き渡る。ギャラリーからは大歓声が上がり、無数のトークンと皿が飛び交った。
中央のホログラムスクリーンには、古代ローマ風の剣闘士が、バトルスーツ姿の近未来戦士の頭部を棍棒で破壊する瞬間がスロー再生されていた。その間をスーツもタイツも黒で統一したバニーガールが腰をくねらせながら進み、勝者に賭けていた老夫婦にトークンの山とカクテルを手渡した。
――ここは地下カジノ「ゲイン・グランド」。地下回廊でのリアルな戦闘を快適なフロアで観戦しながら、戦士達の勝敗を掛けて一攫千金のチャンスに挑めるという、まさに隠れ家的な娯楽場である。
その「ゲイン・グランド」を仕切るのが、ステージ上でMCを務めるベネチア風仮面の男「マック」である。このカジノに入場した者達はその派手な内装とマックの巧みなトーク、そしてスクリーンに映し出される戦闘の迫力に、もれなく虜になる仕組みである。
「それにしても《グラディエーター》、本当に強い!これで99連勝だ!」ステージ上ではマックが滞りなくトークを続けていた。「あれだけハンデをかけられてもしっかり勝てるなんて、これは前人未到の100連勝来るかも――おっと!」
突如、BGMが妖艶なビッグバンド風の曲に切り替わり、ステージの脇からビキニ姿の女達が腰を揺らしながら現れる。女達はマックを取り巻き、艶かしく彼の頬や腕に口づけをする。マックも応えるように彼女らの胸やヒップを順繰りに撫で回した。
「さあバトルが一段落したところで、お待ちかねのショータイムだ!」女達の愛撫が続く中、マックは笑顔を絶やさずトークを続けた。「ここから先はこの『ゲイン・グランド・ガールズ』が主役だ!彼女らのセクシーなダンスを楽しんでくれよ!」
再びBGMが変わり女達によるポールダンスが始まった。フロアからの大歓声を背に、マックはステージを彼女らに譲った。
――
ゲイン・グランドでの熱狂が続いている頃、一人の少年が生徒会室の端末に向かっていた。コマンドを入力すると、オールバックの初老の男がホログラムで映し出された。「やあパパ」
「遅いぞ七太郎」「パパ」と呼ばれたその男には、軽い笑みがこもっていた。「予定より10分以上遅れたということは、やはり『ビジネス』だな?」
「お陰様で絶好調だよ、この一帯の住人はすっかり虜さ」七太郎は笑顔で応えた。「パパもたまには遊びにおいでよ」
「うむ、その件なんだ」男の表情が急に険しくなった。「ちょっとした問題が起きた、どうやら『組織』が動き出したらしい」「組織…パパのところの?」「いや、その『ビジネス』のきっかけになった例の組織からなんだ」
二人の間にしばしの沈黙が走る。七太郎はふと、ホログラム越しにうっすらと輝くベネチア風仮面に目を向けた。
<<<その1おわり、その2につづく>>>
――
◎おまけ:M・o・Aちゃんが何か言う

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久々にショートショートの最新作を公開します。
例によってまったり更新してゆくつもりなので、
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それでは、お楽しみ下さい。
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◎過去作品
○連載もの
・クエスト・フォー・ザ・ムーン(全7話)
その1
その2
その3
その4
その5
その6
その7(エピローグ)
・ロボトミー・ソルジャー(全4話)
その1
その2
その3
その4
・メリー・クリスマス・フロム・アルカナ(全2話)
その1
その2
・リターン・フロム・ザ・ドラゴンズ・ヘッド(全7話)
その1
その2
その3
その4
その5
その6
その7
・タイガース・ダウンフォール(全4話)
その1
その2
その3
その4
・デイズ・イン・サマースクール(全5話)
その1
その2
その3
その4
その5
○その他エピソード
・バトルトーナメント:あなたが決める禁止カード(連載再開未定)
その1
その2
・切札戦士 ジョーカー13(ワン・スリー) 第14話
・エージェント・イン・スイムスーツ
・イーリスの物語
・シャドウメイジ・ジ・アサシン
○特別企画
・COJゲームブック:幻のアニメ(2016年エイプリルフール企画)
<<<エスケープ・フロム・ゲイン・グランド その1(プロローグ)>>>
作:Nissa(;-;)IKU
冷たい水たまりの感触が、サンダル越しにも伝わって来る。静馬は息を切らしながら、薄暗い回廊を突き進んでいた。胸当てと腰巻きだけの殆ど半裸に近い姿。その右手にはバットめいた木製の棍棒。電子カメラ付きのゴーグルが無ければ、古代ローマの剣闘士といっても通じたことだろう。
先週までは近代的なバトルスーツに銃器も使うことが許されていた。それが突如「ハンディキャップ」として、この様な余りにも時代錯誤な姿での戦闘を強制されることとなったのである。
強制――然り、彼は望んでこの戦場に飛び込んだ訳ではなかった。ごく普通の高校生であった彼は転校から間もなく何者かによって拉致され、気づいた時にはこの「施設」で武器を手にしての「戦闘」を強制させられていたのである。
初めは何かの研究の為の、VR技術を使った模擬戦闘だと思っていた。だが収容者の顔ぶれの予想以上に早い変化から、1つの疑念が湧き上がった――もしかしてこれは模擬戦闘ではなく、実際の「殺し合い」をさせられているのではないか、でも何故――。
最初の戦闘から既に3ヶ月、未だに答えは見えない。係員に問い合わせても「成績次第」と事務的な答えしか返ってこない。謎に迫る為にも、今は戦闘から生還し、手がかりを掴むしかない――。
ゴーグル内蔵のディスプレイが警告を発する。「生体反応あり」「制限時間120秒」「失敗時自爆装置作動」静馬は思わず舌打ちした。そして爆発と共にミネストローネと化した狩野のことを思い出した。その日狩野は仮眠室に帰ってこなかった。やはりあれは現実なのか、それとも――。
角を曲がると目の前に黒ずくめのバトルスーツ姿の人影が現れた。静馬と同じくゴーグルで目を覆っているが、手には大型の銃器が握られている。先日係員に連れ出された有島か――その背格好やヘルメットからはみ出した銀髪から、静馬は予測した。
敵に声をかけることはルール違反となっている。発覚した場合も直ちに遠隔爆破されるという。やはり戦うしか、殺すしかないのか――静馬は棍棒に力を込めた。
――
「《グラディエーター》!またしても《グラディエーター》が勝ったー!」大音量のテクノミュージックの中、MCの若々しい声がフロアに響き渡る。ギャラリーからは大歓声が上がり、無数のトークンと皿が飛び交った。
中央のホログラムスクリーンには、古代ローマ風の剣闘士が、バトルスーツ姿の近未来戦士の頭部を棍棒で破壊する瞬間がスロー再生されていた。その間をスーツもタイツも黒で統一したバニーガールが腰をくねらせながら進み、勝者に賭けていた老夫婦にトークンの山とカクテルを手渡した。
――ここは地下カジノ「ゲイン・グランド」。地下回廊でのリアルな戦闘を快適なフロアで観戦しながら、戦士達の勝敗を掛けて一攫千金のチャンスに挑めるという、まさに隠れ家的な娯楽場である。
その「ゲイン・グランド」を仕切るのが、ステージ上でMCを務めるベネチア風仮面の男「マック」である。このカジノに入場した者達はその派手な内装とマックの巧みなトーク、そしてスクリーンに映し出される戦闘の迫力に、もれなく虜になる仕組みである。
「それにしても《グラディエーター》、本当に強い!これで99連勝だ!」ステージ上ではマックが滞りなくトークを続けていた。「あれだけハンデをかけられてもしっかり勝てるなんて、これは前人未到の100連勝来るかも――おっと!」
突如、BGMが妖艶なビッグバンド風の曲に切り替わり、ステージの脇からビキニ姿の女達が腰を揺らしながら現れる。女達はマックを取り巻き、艶かしく彼の頬や腕に口づけをする。マックも応えるように彼女らの胸やヒップを順繰りに撫で回した。
「さあバトルが一段落したところで、お待ちかねのショータイムだ!」女達の愛撫が続く中、マックは笑顔を絶やさずトークを続けた。「ここから先はこの『ゲイン・グランド・ガールズ』が主役だ!彼女らのセクシーなダンスを楽しんでくれよ!」
再びBGMが変わり女達によるポールダンスが始まった。フロアからの大歓声を背に、マックはステージを彼女らに譲った。
――
ゲイン・グランドでの熱狂が続いている頃、一人の少年が生徒会室の端末に向かっていた。コマンドを入力すると、オールバックの初老の男がホログラムで映し出された。「やあパパ」
「遅いぞ七太郎」「パパ」と呼ばれたその男には、軽い笑みがこもっていた。「予定より10分以上遅れたということは、やはり『ビジネス』だな?」
「お陰様で絶好調だよ、この一帯の住人はすっかり虜さ」七太郎は笑顔で応えた。「パパもたまには遊びにおいでよ」
「うむ、その件なんだ」男の表情が急に険しくなった。「ちょっとした問題が起きた、どうやら『組織』が動き出したらしい」「組織…パパのところの?」「いや、その『ビジネス』のきっかけになった例の組織からなんだ」
二人の間にしばしの沈黙が走る。七太郎はふと、ホログラム越しにうっすらと輝くベネチア風仮面に目を向けた。
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――
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