転生の宴

アヴァロンの鍵対戦会「一番槍選手権」を主催するNishiのブログ。最近はDIVAとDBACのプレイが多めです。

COJショートショート:リターン・フロム・ザ・ドラゴンズ・ヘッド(その6)

2015-03-13 01:58:39 | 創作物(M・o・Aちゃん他)
昨日は夕方から新宿へ。
COJのPRを回収した後は久々に東口に向かい、
買い物などをしてきたのでした。
尤もゲーセンは西口の2店とスポランしか覗いていないので、
次回辺り別の店の様子も調べてみたいと思います。

そんな訳で久々にショートショートの投稿です。
連載中の「リターン・フロム・ザ・ドラゴンズ・ヘッド」も終盤戦に入りました。
お楽しみ下さい。

◎過去作品

○連載もの

・クエスト・フォー・ザ・ムーン(全7話)
その1
その2
その3
その4
その5
その6
その7(エピローグ)

・ロボトミー・ソルジャー(全4話)
その1
その2
その3
その4

・メリー・クリスマス・フロム・アルカナ(全2話)
その1
その2

・リターン・フロム・ザ・ドラゴンズ・ヘッド(連載中)
その1
その2
その3
その4
その5

○その他エピソード

・バトルトーナメント:あなたが決める禁止カード(連載再開未定)
その1
その2

切札戦士 ジョーカー13(ワン・スリー) 第14話

エージェント・イン・スイムスーツ
イーリスの物語

<<<リターン・フロム・ザ・ドラゴンズ・ヘッド その6>>>

作:Nissa(;-;)IKU

――

(突如、オフィスの奥から鋭い衝撃音が飛び込んだ。そこには一人の少女が膝立ちで座っていた。銀色の長い髪。紫色に輝く瞳。そして黒いボディスーツとタイツに包まれた肢体は華奢だが、不思議な妖艶さがあった。)

(「誰だ、お前は――」ナイトシェードはその少女に向けて声を上げた。そして困惑した――(((沙夜ちゃん?助けに来てくれたの――?)))内なる声が突如、彼女の意思を遮ったからであった。)

60階を超える――そして全てがリバースデビルの監視下にある――高層ビルの窓を突き破っての侵入。この時点で既に尋常ではない出来事である。だがそれ以上にナイトシェードを困惑させたのは、その侵入者の姿であった。

「沙夜――?一体何のことだ――」ナイトシェードは思わず呟いた。「あの日」から彼女は目の前の少女、「京極院 沙夜」のことを完全に忘れ去ってしまっていたのだ。

「あの日」――彼女はASTのとある秘密基地の屋上に降り立つところだった。直後、肩口に鋭い痛みを感じ、気を失った。そして気が付くと青緑色の壁に囲まれた実験室にいたのだ。その時から、彼女はリバースデビルの酷薄なるエージェント「ナイトシェード」となっていた。

彼女の記憶は書き換えられ、実験室を管理する被り物の男、「タワー」が「パパ」となり、ASTに所属するの縮れ毛の大男、「山城 軍司」は「ママ」を殺した「仇敵」となった。そして軍司を殺すべく、アルカナでの戦いに進んで身を投じるようになったのである。

基地の爆破は彼女が気を失っている「空白の時間」の間に起きていた。当然、そこで検査を受けていた沙夜が爆破に巻き込まれたことなど、知る由もない。そもそも、沙夜という少女がいたこと自体、記憶から失われてしまっていたのだ。

だが、(((沙夜ちゃんだ!幽霊じゃない、本物の沙夜ちゃんだ!)))彼女の内なる声は次第に大きくなってゆくばかりであった。「一体何なんだ、これは――」ナイトシェードは頭を押さえながら後ずさった。

「――漸く戻って来られたか、それにしても」沙夜が口を開いた。そしてゆっくりと立ち上がりながら、室内を見回した。辺りを落ち着きなく見回すサングラスの男達。そしてオフィスの反対側に、黒いスーツの女を認めた。「よりによって敵陣の真只中か」

直後、沙夜の周りに光の粒が集まり、それらは濃紫色の和服と変わった。「おくみ」の無い、フロントスリットのドレスを思わせる意匠が、彼女の歳不相応な妖艶さを引き立たせていた。

――

遭難者の保護の為にアルカナに飛び込んだ光平がロボット兵の女達と遭遇したのは、丁度その時であった。彼女らに囲まれ、座り込まされている人影に、光平は一瞬、昨日の出来事を思い出した。

「メグ!無事か!」光平が呼びかける。児童文学でも人気の若き冒険家、「天鳥 烏兎」――彼の妹、愛美はこの日、まさに烏兎そのものの服で登校していたのである。

「『メグ』って、妹さんの?」ギター型端末が発するホログラム越しに、オペレータの綾花が訊ねた。「ああ、だが、まさかリバースデビルが目をつけていたとはね――」

リバースデビルの生体兵器「ロボット兵」の存在は光平にも知らされていた。だが実物を見るのはこれが初めてである。ロボット兵の統率の取れた動きと非人間的な身体能力は、エージェントである彼にとっても脅威である。

ロボット兵の1体がこちらに気づき、突進してくる。光平は宙返りで彼女の背後に回りつつ、金色に輝く巨人を出現させる。古代ローマの闘士を思わせる「プログラム」である。

残る女達も愛美を捕らえている一人を残して次々と光平に襲いかかる。光平と巨人は互いの背中を守るように身構え、牽制の蹴りを同時に繰り出す。女達は一瞬怯むがすぐに立ち直り、鋭い回し蹴りを仕掛ける。そのうち1人の攻撃が巨人の腰を捉えた。

巨人の上半身がギロチンで刎ねられたがごとく吹き飛ばされ、消滅する。残った下半身は2、3歩ほどよろめいたあとに倒れ、光の粒となって同じく消滅した。この理不尽なまでの身体能力が、「ロボット兵」の恐るべき武器の一つである。

一方光平はどうなったか、巨人と同じく真二つにされていただろうか――いや、彼は左右180度開脚で辛くも攻撃をやり過ごし、鞍馬選手を思わせる全方位足払いで女の一人を転ばせることに成功していた。一瞬判断が遅れていれば、彼も巨人と同じ運命を辿っていたことであろう。

(何とかやり過ごして、メグを助けないと…)輪を作って取り囲んでくる女達の姿に、光平は若干の動揺を感じていた。高い身体能力と統率の取れた動きは脅威だ。だが、彼女らとの戦いに気を取られて、愛美が連れ去られてしまうことだけは、断固として避けなければならない。

倒れていた女が立ち上がり、輪に加わる。だが、「な、何だ?」光平はその女の動きに思わず声を上げた。彼女は全身を激しく痙攣させた後、突如廃工場に向けて走り出し――そして工場の壁の側で爆発したのである。壁に大きな穴が出来、朽ち果てた什器が顕になった。

ロボット兵の制御を行う特殊な電子機器、「生体クラウド端末」は、高密度のエネルギー体でもある。これが物理的、または電子的に重大な衝撃を受けることでエネルギーの暴走、そして爆発を引き起こすことはASTも突き止めていた。

「でも傍受したデータには特に変化は見られないわ」綾花が転送するナビゲーションは、ただ残りのロボット兵の存在だけを表示し続けていた。「一体何が起きたのかしら――」

「何かこう、向こうの方が動揺してるみたいだな――」光平はギター型端末を構え直しながら、ロボット兵の様子を観察した。「この隙にメグを助け出せれば――うおっ!」

今度は別のロボット兵が痙攣を始め、先の女の後を追うように走りだした。今度は工場の奥で爆発し、什器をいくつか巻き込んだ。そして一人、また一人と女達は工場に飛び込んでは爆発し、工場を火の海に包んでいったのだった。

「まずいな、あれがメグを巻き込んで爆発したら――」ふと光平は愛美のいた側に視線を移した。その姿に彼は思わず目を見開いた――女は愛美を縛る縄を解き、拘束から解放しはじめていたのである。「助け出そうっていうのか?一体何が起きてるんだ?」

気が付くと光平を取り囲んでいた残りの女達が一斉に痙攣をはじめ、やがて列になって工場へと突き進んでいった。「嫌な予感がするぜ――」光平は急いで愛美のもとへ駆け寄り、彼女を抱きかかえた。直後、工場の窓が一斉に火を噴いた。

光平は妹を庇うように屈みこんだ。爆発の熱が背中越しにも伝わってくる。振り返ると、工場の屋根のあった場所から勢い良く炎と黒煙が噴き出していた。その炎を背に、ロボット兵の最後の1人が立ち尽くしている。

「メグ――無事か?」光平は憔悴しきった妹に静かに語りかけた。「お兄ちゃん――?何でここに?」「話は後だ、まだここを離れるんじゃないぞ」光平は愛美を庇うように立ち上がり、ギター型端末を構えた。

ロボット兵が振り返る。その頭上にホログラムが現れた。銀色の長い髪。フロントスリットのドレスを思わせる濃紫色の和服。その姿に光平は見覚えがあった。「沙夜ちゃん?」

「えっ、沙夜ちゃんが!」綾花の声が思わず裏返った。「京極院 沙夜」。彼女は数日前の襲撃で、建物の爆発に巻き込まれて死んだ――髪の毛一本残さず燃え尽きた――筈であった。だがホログラムはまさにその生きた沙夜を――傷ひとつない身体を持った少女を――映し出していたのだ。

「長らく心配をかけさせたことをお詫びする」沙夜が口を開く。「敵陣からの通信ゆえ、不具合も多いかも知れん」

「敵陣――まさか、『リバースデビル』のアジトから?」こちらを陥れる為の罠ではないか――そんな考えが一瞬光平の頭上をよぎった。だが先程のロボット兵の挙動は、それでは説明できそうになかった。だとしたら――「あのロボット兵達も、沙夜ちゃんが?」

「彼らは間違いなく、おぬしと少女を殺すところであった」沙夜は小さく頷きながら応えた。「それ故、彼らの計画を書き換えさせてもらったのじゃ」

「まさか、沙夜ちゃんが――」二人のやり取りを、綾花は呆然と眺めていた。死んだと思っていた沙夜が生きていて、そのまま単身でリバースデビルのアジトに潜入し、彼らの通信網を乗取っていた――冗談の様な話だが、事実は受け入れざるを得なかった。

「もうすぐ通信が切れる」ホログラムにノイズが走り始めた。「明日、例の場所で落ち合――」最後の一言の途中でホログラムは消失した。そして最後のロボット兵も、炎に包まれた工場へと飛び込んでいった。

――

建物は未だに炎上を続けていた。アルカナに残されたのは光平と愛美の2人だけとなった。「敵の反応消失、もう大丈夫よ」ホログラムの綾花は安堵の表情を浮かべていた。「オッケー、今から戻るぜ」光平は笑顔で応えた。綾花を安心させる為の、彼なりの配慮であった。

「お兄ちゃん、助けに来てくれたの――?」座り込んだままの愛美は、兄の姿を見て少し安心した様だった。「ああ、メグが危ないって聞いたからな、飛んでやって来たのさ」光平は妹を背負い、歩き始めた。

愛美は何かの偶然で、意図せずアルカナに飛び込んでしまった様だった。その衝撃が、彼女を肉体的・精神的に大きく消耗させているのだ――光平はそう結論づけた。

現実世界へ戻る「ゲート」へ向かう途中、光平の頭上では様々なことが巡っていた。妹がリバースデビルに目を付けられてしまった可能性。恐らく引越しが必要となるだろう。妹も通学路の変更、あるいは転校が必要になるかも知れない。その際の家賃の支払い、定期券変更の手数料――。

「お兄ちゃん?どうしたの?」兄の背中の上で、愛美が訊ねた。「いや、今日は何の料理を作ろうかなって」愛美に向き直った光平は、笑顔で応えた。「丁度今面白いメニューを思いついたんだ、家帰ったら試してみようかな?」愛美は微笑みながら小さく頷いた。

歩くこと数分、光平の前に赤黄色に輝く壁――「ゲート」が現れた。相当に疲れていたのだろう、背後では妹の小さな寝息が、光平の髪を揺らしていた。

――

通信を終え、沙夜は室内を見渡した。端末の傍らにあった箱からは黒い煙が立ち上り、床ではオペレータや管理者が気を失ったまま痙攣を続けていた。生体クラウド端末の連鎖爆発を防ぐ「ファイアウォール」が無ければ、彼らも爆発の犠牲となっていたことであろう。

彼らの目は電子式のカメラアイに換装されていた。それが裏目となった――電子的な観測に対する、ある種の「免疫」を持った沙夜を、リバースデビルの高度に電子化されたカメラアイは遂に捉えることが出来なかったのである。

ナイトシェードの姿は既に無かった――彼女は室内に展開された「ゲート」を使い、既に逃亡を果たしていたのだ。「鈴森 まりね――」沙夜はふと、ナイトシェードのかつての――本来の名前を呟いた。「必ず連れ戻そう、おぬしを待つ者達の為に――」

その後、沙夜はエレベータを通じ、正面出口からビルを抜けた。本来なら不審者として捕らえられるところである。だがリバースデビルの電子的捜査に対する「免疫」が、彼女を救ったのである。

ビルを出たところで、沙夜は僧衣姿の一人の男に気づいた。「お祖父様――」沙夜は男――祖父の前で一礼した。「沙夜は今、戻って参りました」

「おぬしが戻ってきたということは――」祖父は静かに頷いた。それは沙夜が生きて戻ってくることを信じていたかの様であった。「『月姫』様はおぬしを認めた様じゃな――あの地を引き継ぐ者として」

「重大な使命です――」沙夜も小さく頷き返した。「ですが、必ず成し遂げてみせます――あの地に眠る力を目覚めさせる為に」

「うむ」祖父は夕焼けで染まり始めた空を見渡した。「では、帰るとしよう」

そう言った直後、二人の姿は路上から消えた。車道ではスーパーマーケットのトレーラーが、いつもと変りなく輸送を続けていた。

<<<その6おわり 本エピソードは次回その7で完結予定です>>>

――

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