転生の宴

アヴァロンの鍵対戦会「一番槍選手権」を主催するNishiのブログ。最近はDIVAとDBACのプレイが多めです。

COJショートショート:エージェント・イン・スイムスーツ

2014-07-31 00:00:00 | 創作物(M・o・Aちゃん他)
昨日は所用の関係で夕方から吉祥寺入り。
COJはパックをちょっと剥いてみようと思ったのですが、
1発めで出てきたのは6枚目の《伝説の道化師》。
《女神の息吹》が引ける日は遠い様です。

さて突然ですがCOJショートショートの新作が完成したので公開します。
今回は既に公開している連作とは異なる単発もので、
「夏」をテーマにしたものとなっています。
楽しんでもらえればと思います。

・過去作品
クエスト・フォー・ザ・ムーン その1
クエスト・フォー・ザ・ムーン その2
クエスト・フォー・ザ・ムーン その3

<<<エージェント・イン・スイムスーツ>>>

作:Nissa(;-;)IKU

夏である。夏といえば海水浴は欠かせないという人は多いだろう。海で泳いだり浜辺でスイカ割りやバーベキューを楽しんだり、その楽しみ方は様々である。

エージェントとして日夜アルカナ内で戦いを繰り広げている7人も、今回幸運にも揃って休暇を取ることが出来た為、1泊2日の予定で海水浴に出かけることになった。仁と軍司が交替で運転するバンが向かった先はとある寂れた漁村。平日は人の入りも少なく、海水浴場としてはかなりの穴場である。

――

車と荷物を宿に預け、目的地の砂浜に辿り着いたのは正午を少し回った頃。この日は他の客の姿は無く、実質貸し切り状態である。

最初に海に飛び込んだのはアフロヘアーも荒々しい色黒の大男、軍司だ。赤白ボーダー柄のタンクトップにスパッツ型のボトムというレトロなデザインで、サーブボードを抱えて競泳用ゴーグルも付けてどこまでも泳ぐ気満々だ。

本人は「ブーメラン」こと競泳用のマイクロビキニで出る気満々だったが、女性陣に不評だった為に「プランB」としてこれを着ることになったのである。

大人げなく海ではしゃぐ軍司を遠目で見ながら、バーベキューコンロを組み立てているのは光平と仁である。これで少し遅目の昼食のバーベキューを焼こうという算段だ。食材の仕込みは既に光平が済ませており、火が入ればすぐにでも焼ける仕組みだ。

仁は黒地に赤のラインの入ったトランクスタイプ。光平は黒地に黄色のラインの入ったボクサーブリーフタイプの水着である。軍司の様に奇をてらうこともなく、オーソドックスなチョイスである。

コンロが組み上がり、木炭に火を入れようとしたところで、反対側から黄色い声が飛んできた。振り向くと更衣室から2人の「少女」が近づいてきていた――だが様子がおかしい。

緑白ボーダー柄のタンクトップにスパッツ型のボトムという「タンキニ」スタイルのまりねに手を引かれてやってきたのは、水泳帽に旧型スクール水着に身を包んだ金髪碧眼の「少女」である。その胸元に貼られたゼッケンには、サインペンで名前が書かれていた――「くろの」。

そう、「彼女」こそまりねの手にかかり、「この日の為に用意しておいていた」という女児用水着を着せられてしまった時矢なのだった。いくら第三者の視線の無い環境とはいえ、余りの仕打ちに時矢の顔面は既に真っ赤である。

少し遅れて更衣室から出てきたのは、パレオの付いたピンクのリゾートビキニ姿の綾花だ。彼女の手にはビデオカメラが握られており、嬉々としてレンズを時矢やまりねに向けている。「エージェントの懇親活動の一環」のレポートとして提出するという話をすると、時矢の顔面は蒼白になった。

ひと泳ぎ済ませてきた軍司が海から戻ってきた。彼が自分の水着がまりねとペアルックっぽいと指摘すると、まりねは思わずひっくり返った。相当ショックだった様だ。

一方その頃、沙夜は少し離れた岩陰でビニールシートを広げ、パラソルの下で一人くつろいでいた。大胆にも真白いハイレグのワンピースを身にまとい、両足を包む褐色のタイツは、年齢不相応な程に妖艶な光沢を放っていた。

どう見てもこれから泳ごうという雰囲気を感じさせない佇まいだが、勿論これも考えのあってのことである。日差しの強い日中の時間を避け、気温も落ち着く夕方辺りから海に入ろうという算段だ。

そこにやって来たのはコンロの作業を一段落させた仁である。バーベキューの準備が出来たので、沙夜を昼食の席に呼ぶ為である。

沙夜はハイヒールのサンダルを履き直し、パラソルを掲げながら、仲間たちのもとへと向かった。その姿は旧世紀のデータに伝わる「レースー・クイン」を思わせた。

仁・光平・軍司の「成人組」が缶ビールを、残りが麦茶やコーラを掲げて乾杯したところで、一同は異変に気づいた。今まで晴れ渡っていた筈の空の一部が、厚い雲に覆われはじめていたのだ。その雲からは、不吉な雷鳴が鳴り響いている。「ゲリラ雷雨」――一同の脳裏に不吉な言葉がよぎった。

せめてコンロと食材を雨から守らなければ――仁達はパラソルを砂浜に挿し、これから降り出すであろう大雨に備えた。だがその目論見は予想外の出来事で破られた。

突如、村内のスピーカーが一斉にサイレンを鳴らせたのである。同時に地震と津波を警告する早口のアナウンスが砂浜全体に鳴り響く。綾花のカメラに付属の無線端末からも、同じく地震警報と津波警報が届けられていた。

雨が降り出すのと地面が激しく横揺れを始めるのとはほぼ同時だった。最早荷物やコンロを気にしている余裕は無い。足元がおぼつかない中、一同はパラソルだけを抱えて一目散に反対側の高台へと向かった。ハイヒールの沙夜は仁が背中に、足の遅い時矢は軍司が脇に抱え、高台に向けて、ただひたすら走り続ける――。

――

高台に建つ村の公民館。激しい暴風雨の中、一同は村人たちと共に憔悴した様子で、会議室の床に座り込んでいた。津波と大雨が重なったことで、海岸沿いの道路にまで海水が流れ込んだとのことだ。これでは旅館で一泊どころか、明日帰れるかどうかも怪しい。

着替えを持って来る余裕もなく、水着のまま避難してきた一同に、保温シートが分け与えられた。親切な事務員が気を利かせてくれたのだ。当面着替えの出来ない彼ら、特に女児用水着のままの時矢にとってはありがたい心遣いである。

非常食のビスケットをかじりながら、綾花は携帯端末で今の災害の様子を調べていた。この大雨が明日未明まで続くこと、津波で帰りの道路が一部寸断されていることを知り、綾花はため息をついた。その横では沙夜が窓の外を眺めている。外は依然大荒れで、海では津波で流されたボートや車が右往左往している。

果たして無事に帰ることは出来るのだろうか。いずれにせよ今晩はこの避難所で過ごすことは確実である。疲れの取れないであろう長い一晩が始まろうとしていた。

<<<エージェント・イン・スイムスーツ 完>>>

――

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