昨年7月、同胞を大量殺戮の容疑者、アンデシュ・ベーリング・ブレィヴィク(Anders Behring Breivik) の裁判は、4か月にわたる公判のすえ、本日判決が下された。それは死刑のないノルウェーでの極刑で21年の禁固刑であった。判決文は100ページあり、それを読み上げるのに一日中かかった。裁判は10時に始まり、休憩を入れながら判決の読み上げが終わったのは夕方6時に近かった。
この裁判の一番の論点は、ブレィヴィクの精神状態が「正常」か「異常」かというところにあった。本日の判定では、ふつうに物事の判断ができる精神状態で責任能力ありとされた。正常な精神をもつとされる青年が、あまり世間に受け入れない思想をもち、それに忠実な犯行をおこなったといえる。
彼の住む世界は国粋主義のそれである。ノルウェーを含むヨ―ロッパはアラブ系人種の大量移住により、国を乗っ取られる、原住民(!)であるヨ―ロッパ人の存在が脅かされている、と信じこんでいるのだ。その「イスラム化」を推進するノルウェー政府や労働党の動き身をもって制止する行為であった。
そうして大量殺人をやってのけた彼は自分を正義の味方、正々堂々、勇敢な騎士だとみている。立派な確信犯なのだ。それで、裁判で精神異常者の犯行とされることを恐れた。「病気」のためと判定されると控訴し、裁判を続けるつもりであることを宣言していた。
彼は今回の判決を受け入れた。それを聞きながら、満足そうにうす笑いをしているのをニュースでみられる。禁固期間の21年は最高であるが、それ以降は5年単位で無制限に禁固を延長できる。文字通り終身刑とすることが可能である。
(http://sverigesradio.se/sida/gruppsida.aspx?programid=4180&grupp=17419)
今のところノルウェーの人たちの多くは、ブレィヴィクを一生閉じ込めておきたいようだ。釈放されると何をしでかすか分からないと恐れているのだ。彼の持つ思想に共感を抱く者も増えるだろうと危惧する。
今日の判決には、被告、検察側、世論の3者が満足している。
これから長い月日をブレィヴィクは刑務所で過ごすわけだが、彼には3部屋与えられるとラジオで聞いた。1部屋は寝室、2つ目は勉強部屋でここでパソコンを使用して読み書きができる。3つ目の部屋は居間のように利用し、マスメディア等との面談はここで行うという。このような特別な扱いは、ブレィヴィクを徹底的に他の受刑者から隔離するためである。彼の持つ思想がウイルスのように広がっていくのを警戒しているのであろう。
参考:2011年8月28日ブログ「ノルウェーのテロ事件」
(http://blog.goo.ne.jp/stockholm_1966/e/a6283aaa8962db4db8d7352b8ddd8707)