昨年11月に社会民主党の党首モーナ・サリーンが辞意を表明してから、後継者選びに時間がかかり、候補者の決定があったのは、今週末25~27日に予定されていた同党の臨時総会の一週間前であった。
それまで、候補者として色々な名前が挙がり、消えていったが、ホーカン・ユーホルト(Håkan Juholt)の名前は最後の最後まで現れなかった。社民党は、人選は準備委員会という密室で、伝統的に1名の候補者を選び、総会では満場一致でそれを承認するシステムをとっている。
(社民党のHPより)
3月25日の臨時総会で満場一致で党首に選ばれたのは写真のホーカン・ユーホルトである。
南スウェーデンにあるスモーランド地方出身で、1962年生まれ。1994年より国会議員。一時は防衛問題を担当し、2004~2009年は、社民党の副幹事長を務めた。現在は役職なしのふつうの国会議員で、党の外部ではかなり無名な存在であった。
3月26日に、一時間にわたる就任演説を行ったが、社民党が元来、党の基本姿勢としていた連帯、平等、完全雇用にもとずく社会づくりを目指し、市民の信頼を取り戻すことをあつく語った。理想の社会を語る彼にパトスが十分に感じられる。なかなかの弁舌家でアドリブもうまい。真面目そうであるが、機転の回転度は劣る穏健党の現首相ラインフェルトの強敵ディベーターとなるかもしれない。
柔らかいスモーランド方言で話し(イケアの創業者、カンプラードと同郷)、特徴のある表情は、なんだかゲームのスーパーマリオに似ている。イケメンで瀟洒な都会型男性のイメージからは程遠いが、相手に親近感をもたせるだろう。
かなり興味深かったのは、彼のスピーチの途中で、サリーンの前に、10年間(1996–2006年)首相を務めた元党首ヨーラン・パーションが中座しようとした時の出来事だ。パーションは、経理畑出身で実務型の政治家なので、ユーホルトの語る「連帯や平等」などの理想に関心は薄い。だから、じっと聞いているのがあほらしくなったのだろう。それに、ある記事によると、パーションはユーホルトに投票しないよう、準備委員会の一部に裏から手を回したらしい。
とにかく、会場の前の方に座っていたパーションが席を立ちかけたのを見て、ユーホルトは素早く「ヨーラン、話はまだ途中だよ」、と公衆の面前で彼を制した。自分の候補に反対工作をしたパーションに仕返しと同時に、誰が現在実権をもつかを明確な形で示したのだ。パーションは支配欲が人一倍強いことで知られているが、ユーホルムユはその彼に自分の時代は終わっていることを躊躇なしに示した。就任演説という儀式の最中に、礼を欠く行為をしたパーションは背負い投げをくって完敗した。
党首としての指導力がありそうなこのスーパーマリオ氏、2006年、2010年度と総選挙二連敗の社民を再び政権の場に戻すことができるだろうか。いままでほとんど無名だったユーホルトの今後がなんだが楽しみになりそうだ。
幹事長は女性
(社民党のHPより)
同時に新しく幹事長が選ばれた。カーリン・イェムティーン(Carin Jämtin)は、1964年にストックホルムで生まれた。2003~2006 年は開発援助大臣であった。2007年、ヨーラン・パーションが党首の座を降りた時、後継者の一人として候補に挙がった。2006年以来、現在までストックホルム・コミューンで野党側議員として活躍。支持者の多いベテランの政治家。彼女の就任演説はここ。