ぼちぼち スウェーデン

スウェーデンで見たこと、聞いたこと、考えたことを、同時代に生きるみなさまとシェアーを!

冬の風物詩と並行する世界矛盾

2010-12-14 | 日々雑感

 

12月半ばからは行事が多くなり、24日がクライマックスとなる。スウェーデンはクリスマスでもイヴを祝うので、23日は日本式に言えば大晦日となる。

12日は第3アドベントの日。クリスマスまであと、2週間足らずとなる。

第2~3アドベントの2週間は、人々は樅(もみ)の木の下に置くプレゼントを買い求めるので、街中、人出でにぎやかになる。

翌13日は、ルシア祭。一年の内、一番暗い時期にはうってつけの行事だ。この日の朝、病院や、学校・保育所、高齢者施設などをルシアの行列が訪問する。コーヒーとサフランパンをふるまってもらい、彼らの歌うクリスマスの歌を楽しむ。

ルシアの一行は白い長いパジャマのようなものを身につけ、頭にローソクを飾りつけ、手にも持っている。そんなことは知らない外国からの旅行者が、真っ暗な路上でルシアの行列に出くわすと、あの世から幽霊が出てきたと驚くことがよくあるらしい。

 

   

クリスマスとお正月の間の数日間、休みをとる人が多い。すると、24日~1月1日(今年は2日が日曜日だから1日プラス)まで、かなり長い連続休暇となる。

一年の最終日である31日は、12時の鐘を待ってシャンペンなどで新しい年の到来を祝う。元旦は祭日だから二日酔いをさまし、2日からは平常通りに働く。

11日の金曜日は、恒例のノーベル賞の祭典がノルウェーとスウェーデンで行われた。平和賞の授賞式は伝統的にノルウェーで行われるが、この賞の受賞者に関しては、「どうしてこの人が??」と疑問詞が付く年が多々あるが、今年はマトモな選択であったと思う。

受賞者の椅子が空席なのが印象的だった。ノーベル賞委員会委員長の演説はかなり直接的で、劉氏のもつ基本的人権を指摘した。そして、この北欧の小国が、強い言葉で大国中国を説教した。冗談半分として言うが、ノルウェーはいま石油があるから強く、国として自信のある行動がとれるのかもしれない。

むかしまだ、オロフ・パルメが生きていた頃は、スウェーデンも「世界の良心」の役を担っていた。この小国の首相が、アメリカのベトナム北爆を真っ向から批判し、抗議デモ行進の先頭に立った。70年代は、もうそんな昔のことになってしまったのだろうか・・。

現在は、アメリカの先棒を担ぐ一小国と見られているようだ。スウェーデンがウィキリークスの代表者アサンジュをセクハラで訴えたのは、かなり懐疑的に受け取られている。むしろ、本当の目的は、彼を国賊と仕立てたいアメリカに身柄を引き渡すためと、みる向きは多い。アサンジュ自体、それを恐れているのが何よりの証拠だ。

「世界の良心」国から、アメリカの「岡っ引き」国になってしまっているかに見える現状を、ここに暮らす一員として残念に思うこの頃である。              

ところで、土曜日の11日には予想外の出来事が起きた。アラブ系の男性が街の中心地で自爆したのだ。路上ではなく、どこかデパートとか、中央駅とか、人の沢山集まる所で自爆するつもりだったのだが、誤って早く爆発させてしまったのではないかと推測されている。直前に、車も一台爆発させている。死者は本人だけで、他の人を巻き込まないですんだ。

現在、スウエーデンにおける、初めてのテロ行為だと国中大騒ぎだ。

自爆した男性は、ラーシュ・ヴィルクス(ブログ「時の人:ラーシュ・ヴィルクス」をお読みください)と、スウエーデンのアフガニスタン派兵などを批判し、アラブ人よ、立ち上がれと呼びかけている。

これにより、かねてから問題視されているアフガン派兵が真剣に討論されるだろう(PS:されないどころか、国会は多数決で派兵期間を延長した)。そしてまた、イスラム系移民に対する風当たりも強くなるかもしれない。それに、外国人排斥を主眼とする政党、スウェーデン民主党が喜び、さらに支持者が増えるかもしれない。

今年は憂鬱なニュースで終わりそうだ。

 


Volvo社長の退職金

2010-12-09 | 人々のくらし

 

ボルボ社は、バス、大型トラックなどを製造する大企業である。スウェーデン国内では3万5000人の従業員がいるが、地球規模では10万人である。

自動車産業は世界的に不況であり、ボルボ社も例外ではなかったが、最近、景気が回復している。それで、来年の夏、社長レイフ・ヨワンソン(Leif Johansson)は60歳を迎えるので、退陣の好機会と判断したらしい。

ヨーワンソンは、退職の時点で、ボルボの社長を14年間努めたことになる。退職の際、彼がゲットする退職金は、100,000,000クローナ弱であるそうだ。日本円だと、今日の交換レートが1クローナ=12.82円なので、ざっと13倍するとよい。なんがか、庶民には天文学的で実感がうすい金額だ。

通常、一般勤労者には、退職金は出ないシステムであるが、財界のトップ陣には、退職金だけではなく、毎年、巨額なボーナスが支払われる。それらの条件は役員会(取締役会?)で、決定されるので、一見、民主主義の基本に基づく体裁が整っているようにみえる。

しかし、大企業のトップ陣は、お互いの企業の役員を受け持ちあっているので、実情は、仲間たちがお手盛りで、自分たちの取り分を決めていることになる。

詳細は覚えていないが、ある製造会社の社長の年間収入は、工場労働者200人とかの年収分相当であったので、一時は随分騒がれた。

一部の都市銀行のお手盛りも派手で、支店を閉鎖して大量の従業員を解雇するような経営が思わしくない年でも、トップ陣はちゃんと巨額のボーナスを手にしている。

 

  超要職にあるのだから、超報酬は当たり前?

スウェーデンは、アメリカ等とは対照的に、労働収入の最高と最低の差額が小さい政策をとり続けてきた。平等政策の一環である。しかし、民間企業のトップ陣は例外となっている。「責任のあるポストは、それに見合った待遇をしないと、人材は海外に流出」というのが、正当な理由となっている。

スウェーデン人は、これまで平等・連帯の精神と、それに基づく国政をよしとしてきた。それなのに、遠くに見える星のように巨額な金額を聞いて、ふつうの勤労者はどう思うか?

「アホらしい!」だろう。しこしこ働くのが馬鹿々々しくなるのが、ふつうの反応だと思う。

そして、庶民もそれなりに、自分のできる範囲で、取り分を多くする努力をするのが人情だろう。自分さえよければよいという姿勢を、ボスたちが見本を示しているのだから・・。当然、勤労者のモラールにも悪影響を与えるだろう。

庶民は、財界トップ陣に比べて、微々たる自分の収入から、さらに税金を「とられる」のが納得しにくくなる。とくに普遍的な福祉社会を維持するのに自分の稼ぎを使われるのを、アホらしいとふつうの勤労者が思うのは当然の成り行きだと思う。

一部の人間が得る巨額な報酬は、連帯精神の上にたつ福祉社会に、じわじわとひびを入れていく。


中央党の100年

2010-12-04 | メディア情報

 

ちょうど100年前の12月1日、24名の農民が「兄弟よ、手を結ぼう!」との呼びかけを、地方新聞を通じて行った。当初は、農民同盟(Bondförbundet)と名乗っていたが、1957年に、現在の中央党(Centerpatiet)に改名している。

1930年代から、おもに社会民主労働党(社民党)と、連立、あるいは、閣外から協力を行っていた。しかし、2006年からは、穏健党を中心とする保守4党連立による政権党となっている。

得票率は1970年代の最高期には、25パーセントを超えたが、今秋の選挙では6.6パーセントに落ちている。選挙以降も、支持率は下降気味であり、次回の選挙戦が危ぶまれている。

メディアによると、今回の選挙でも絶対的に有利な立場にあった穏健党支持者の多くが中央党に投票し、最低得票率の4パーセントをクリアさせ、国会からの脱落を救ったという。中央党が脱落すれば、穏健、国民、キリスト教民主党の3党だけで政権を維持するのは難しいからだ。

ついでながら、この現象は保守グループに限ったことではなく、社民党支持者が同じように、長く左翼党を支えてきた。これまで左翼党は、閣外からずっと社民党を支持してきている。今回の選挙で、社民と左翼党は環境党と共に、初めて革新3党連立で政権獲得を目指したが至らなかった。

現在の中央党は、元来の支持層であった農民層の減少により都市指向となり、中小企業経営者層、自営業者層を主なターゲットにしている。それら党の動向により、地方の支持層の信頼を失うことになり、昨今、脱党した人たちが地方で新しい党作りをする現象が目立っている。

また、一部のストックホルム中央党のメンバーが「Streplan中央党」と称する組織を結成している。Streplanは、高級住宅地にある瀟洒な店舗や、レストラン等が集中するストックホルムの一角である。他の都市、マルメやヨテボリにも類似のグループが結成されている。

このような都市型中央党一派は、党内では最右翼の位置にあるようで、原発推進派だし、規制緩和を主張する。自分たちは近代的なリベラルで、自由を好むとかで、なんだか保守の穏健党のさらに右側に自らを位置付けているようだ。

党がもっていた元々のイメージ、乳牛が牧草を食んでいる田園風景などからは程遠く、100年という歴史の流れを感じさせる。

 

 原発反対の旗印を降ろす

中央党にとって大きな痛手となったのは、党一番の「目玉商品」であった、原発廃止の方針を、今回の保守連立内閣の方針に沿い、古くなった原発所の代わりを新築する案に同意せざるを得なくなったことだ。それにより、党のアイデンティティがますます不鮮明になり、支持層を失ったのは否めないだろう。新しく支持を得えてはいるだろうが、全体的には支持率は減少している。

目下のところ、来年3月に党首に就任満10年となるモード・オ-ロフソン(Maud Olofsson)の党内での位置は、揺らいではいないが、どうやら多くの党員が、彼女が自主的に引退してくれるのを心待ちにしているようだ。若手層が自信満々で出番を待っている(DN2010-12-01)。

中央党だけではなく、政党の人気がかげりだすと、党首の進退が話題となる。今回の選挙結果が思わしくなかった諸政党(社民、キリスト教同盟、左翼党)内でも、程度の差こそあれ、党首の進退が話題にあがっている。

さて、これから100歳になった中央党はどこへいくのであろうか。70年台に新進の気風で原発反対の旗印を高く掲げ、1976-78、1979-82年間は連立政権ではあるが、中央党から首相をだしていた。いまは穏健党の背後で、新原発所の建築にそっと賛成の挙手をする存在になっている。

理念を失わずに現実にうまく対処し、有権者の信頼をどう取り戻すかは、べつに中央党だけの問題ではないのだが、前途はかなり難しそうだ。