プロコフィエフの日本滞在日記

1918年、ロシアの若き天才作曲家が、大正期のニッポンで過ごした日々

プロコフィエフの短編小説

2005-09-06 | プロコフィエフ短編
日記中にもあるように、プロコフィエフは日本滞在中に『彷徨う塔』『誤解さまざま』『許しがたい情熱』『ひきがえる』といった短編小説を手がけています。6月25日の日記では、自らの作家性について自問自答するくだりもあり、単にピアノのない状況下で暇つぶしで物語を書いていたわけではなく、小説執筆も創作活動の一環としてとらえていたことがうかがえます。

作曲家が書き残した短編小説集は、2003年に本国で出版され、今、手元にその本があります。黒い表紙の小さな本には、日本滞在中に書いた作品や未完のものも含めて11編が収録されています。

試みに『ひきがえる』を訳してみましたが、「くねくね男」と「ひげ男」の珍妙な会話によって綴られる、ユーモラスでシュールな作品です。しかし、微妙な言葉の言い替えが、なかなか日本語では表現しにくく、一筋縄ではいかない訳者泣かせの作品ともいえるでしょう。

そもそもプロコフィエフの文章は、美文とは言いがたく、日記翻訳の際も、ロシア人監修者でさえもが「こんなロシア語はありません!」と手を焼く場面がたびたびありました。日記の性格上、他人に見せることを想定していなかったのかもしれませんが、独特の言い回しもまた、天才プロコフィエフの個性のひとつなのではないでしょうか。

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