エゾ中村のブログ

「藤圭子」から「現代医学の功罪」まで、思いの丈を綴ります。 ・・・ From 北海道 ・・・

噴火湾

2020-05-26 09:11:16 | 旅行・地域

北海道地図を見れば、噴火湾 がどこか直ぐに分かると思います。 イカ飯(駅弁)で有名な森町から、日本屈指の鉄鋼の町・室蘭市に位置する ほぼ円形の湾は面積が 2,485㎢と大きく、東京湾の1,380㎢を遥かに凌ぎます。 1796年、イギリスの軍艦が立ち寄った際、船長・ブロートン海尉は駒ヶ岳や有珠山を見て「噴火によるカルデラ(地盤沈下)に違いない」ゆえに  「噴火湾」  と命名したそうです。 しかし その後の調査では、噴火による“カルデラ”でない事が明らかになっています。 元々、噴火湾は太平洋に面する大きな入江なのなのです。 我々地元の呼び名は、穏やかな湾である事から 「内浦湾」  と呼んでいますが、日本中に同名の湾が4か所あるので、やはり 「噴火湾」 と呼んだ方が良いと思います。


噴火湾は、湾内に多くの漁港(約50ヶ所)が点在します。 戦前 “鰊”(にしん)が獲れた頃は、各漁港に活気があった様ですが、今は“道東”・“道北”に比べ、どこも疲弊しています。 原因は 噴火湾の入り口“室蘭市”が、製鉄業を始めとする工業地帯で、タンカー・大型船舶の往来が多く、自然であるべく“魚道”を妨げている事です。 元々 浅い海が、魚の環境(繁殖)に悪影響していると思います。 残念ながら“噴火湾”自体が、昔ながらの豊かな海ではなくなったのです! 


それ以上の問題が、“漁師”の首を締めています。 それは、ホタテの養殖 です。 魚が獲れなくなり苦渋の選択が、漁民の将来に禍根を残してしまったのです。 噴火湾の一部で始まったホタテの養殖は、当初 大金(ホタテ特需)を生んだのが問題です。 その成功を真似しない 漁師はいません。 次から次と、湾内はホタテの養殖で埋め尽くされました。 湾の特徴は、潮の流れが少ない事です。 養殖(*ミミズリ)は外洋に比べ楽ですが、ホタテが成長する過程で排出する糞の量は膨大です。 調査によると、50年程で湾奥部のヘドロ(ホタテの糞)は1メートル以上、海底に蓄積されている様です。 結果的に噴火湾の環境は荒れ放題、一時 羽振りが良かった一部の漁師は、生活保護を受ける羽目に陥りました! (*ミミズリ: 200個ほどのホタテの稚貝を、密閉した籠に入れブイで吊るし大きくなるまで育てる)  

私は、噴火湾の港町で生まれ・育ちました。 幼い頃から、港や海辺が遊び場でした。 そんな環境の中で育ちましたが、なぜか魚介類が苦手です。 その理由は、港独特の魚介類が発する鼻を衝く“腐敗臭”がでした。 それが“アレルギー?”となり、魚貝が好きになれませんでした。 そう言えば 漁師の息子(友達)は、船酔いが激しく 跡継ぎを諦めました。 案外 “郷土に勤しむ”(適正・適応)は、個人差が大きいと思います! 

噴火湾の“ホタテ養殖”と、日本政府が目指す“観光立国”は、似ていませんか? 中国人のインバウンドを狙ったものの、トラブルが起きた瞬間 全ての計画が頓挫する。 “ホタテ養殖”・“観光立国”、夢破れて・・・ 何事も「一寸先は闇」なのでしょうか?