明治14年9月25日、神足勝記は小仏峠を越えて山梨県に入りました。(越えてすぐの相模湖町・藤野町は神奈川県、その先の上野原町から山梨県になります。この辺は水源の関係から歴史的にやや入り組んでいます。)
小仏峠付近:赤鉛筆の箇所は旧御料地(今日は触れません)
最初に、小仏峠付近の地図の説明をします。
右上から高速道路に沿うように追ってください。
まず、中央線高尾駅からバス〔黒い線〕で小仏バス停まで21分〔歩行なら約2時間〕。そこから登山道〔赤い線〕に入って西へ進み、コース時間50分で小仏峠。下って分岐点まで45分。さらに底沢の分岐点まで20分。そして、与瀬とある相模湖駅まで35分。
合計は、バスを利用しての所要時間約170分(約3時間)。全行程歩行するなら270分(4時間半)です。
ここを歩くとわかりますが、バス停からしばらくは広い林道で、下って、分岐点の手前からまた林道です。それもきれいに舗装してあります。そういう現在の道でも半日かかる行程ですから、往時の山道を歩いての旅はさぞ大変だったに違いありません。
ちなみに、私は40分くらいで登り、下りは、のんびりと歩いて、分岐点からは奥の方へ入ったりして遊びました。もし時間があればおススメです。
そして、途中でたわわに実ったカナガワのヤマナシを見つけてザック一杯に持ち帰り、ジャムを作って味わいました。美味かったですよ。
作ったのは、もちろんアノ素晴らしいカミさんですが、もう2度とイヤだと言っています。何が理由かというと、小ぶりで皮をむくのが大変なんですね。仕方ないから、今度は自分でやるつもりです・・・。
オット、モトイ!
この件は『御料局測量課長 神足勝記日記 ―林野地籍の礎を築く―』日本林業調査会(J-FIC)では、「解題」13ページ下で「・・・甲州街道を八王子に向かい、小仏峠を越えて山梨県に入る」と要約して書きましたが、実はもうちょっと長くて次のようになっています。
まず、出発から八王子までです。
「9月25日 雨 日曜日 ・・・午前6時発。四谷塩町に至り、戸川〔為
継〕氏と倶に馬車に乗し、8時発。連日の降雨、道路泥濘。高井戸駅を経、
神奈川県多摩郡に入れは、道路頗る好し。布田駅を過き、12時府中駅に
着。午食す。1時頃同所発。多摩川を渡り、日野駅を経、2時八王子駅に
着。下車、暫休。復乗車。」
いよいよここから小仏です。なお、駒木野は高尾の辺りです。
「駒木野を経、小仏駅に於て下車し上坂。小仏峠を超へ下坂。渓澗を屈曲
し、6時相模国〔神奈川県〕津久井郡小原駅に着。小松屋に投す。・・・。
9月26日 雨 午前八時小原駅発。相模川に沿ひ・・・与瀬駅を経、左
道を取り下坂。相模川を超へ藤瀬村を歴、復渡河、吉野駅に入る。」
すごいですね。都心を朝6時に出発して、一泊して与瀬(相模湖駅)に達したわけです。まる1日です。いまなら2時間はかからない。
私は、コロナ蔓延の前に歩きに出ました。
でも、ただぶらぶらしに出たわけではなくて、神足が泊まった小原駅に行き小松屋を確かめました。
庭仕事をしていた人に伺うと、斜め前の家を指して、
「その家です」と。
笹子の時と同じく、ここでも屋号が通用しました。
小原の旧小松屋
この右の家がそうです。町並み保存ということで、おおむね昔のままだそうです。そうすると、神足もここから上がったのでしょうか。
そんなことを考えながら、ちょっと休ませてもらいました。
ではここで。
朴:悠然と空に