北山修 最後の授業 2012.12.14
《きたやまさんが作詞し、加藤和彦さんが作曲した『あの素晴しい愛をもう一度』(昭和46年)はフォークソングを代表する永遠のスタンダード。
加藤とは、電話の留守録機能を使ってやりとりしました。加藤がまずメロディーをつくってハミングでうちの電話に吹き込んでくれた。
それに僕がひと晩で詞を書き、今度は加藤の電話に入れる…。そんなふうにして出来上がった曲でしたね。
加藤からはすぐ「ありがとう」という返事がありました。
《この歌の詞のポイントは、同じ景色を見て「美しい」と思う感性だ。
きたやまさんは、前田重治さん(精神科医)との共著『良(い)い加減(かげん)に生きる』(令和元年)でこう書いている。
「日本人は、この同じものを『肩を並べて見る』というポジションが好きです」…》
日本人は親子で「川の字」になって寝るでしょう。
ある時期、みんなが雑魚寝をして家族が交じり合って過ごす、あるいは幼いころにしてくれたお母さんの添い寝…そうしたことが日本人のメンタリティーを決定してきたのです。
〝横並びの愛〟というのかな。外国の絵画で親子が同じ方向を向いている構図はあまりない。日本人独特の感性なのかもしれません。
あの歌は、同じものを愛(め)でた人たちに「愛」が生まれたことを歌っています。それは花火や雪見かもしれないし、家族の記念写真や学校の卒業アルバムにも当てはまるでしょう。
ホントかどうか知りませんが、英語教師時代の夏目漱石が「アイ・ラブ・ユー」を日本語に訳すのに「月がキレイだ」と教えたというエピソードを聞いたことがあります。
まさに〝この愛こそが素晴らしい〟と日本人は感じてきたのです。
あの素晴らしい愛をもう一度 BY ザ・フォーク・クルセダース
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