乙骨正生『怪死―東村山女性市議転落死事件』(教育史料出版会1996年5月)
より、引用しました。
できるだけ多くの人に読んでいただく価値がある本だと思いますので、本の内容を忠実に再現しています。
なお、漢数字などは読みやすいように算用数字に直しました。
なお、乙骨さんにはメールで著書を引用している件をご報告したところ、快諾していただきました。
ありがとうございます。
(目次)
□まえがき
□Ⅰ章 怪死のミステリー
□Ⅱ章 疑惑への道のり
□Ⅲ章 対立の構図
■Ⅳ章 たたかいの軌跡
□Ⅴ章 真相を明らかにすることは民主主義を守ること
□あとがき
『週刊新潮』記事をめぐる軋轢
◆私物化された市行政
東村山市議会3月定例会での一般質問に先立つ1995年1月末、朝木さんは『週刊新潮』の取材に応じ、東村山市役所、そして市の行政が創価学会・公明の政治力によって汚染されているとコメント、創価学会職員が市民のプライバシー情報を閲覧できる立場にいることなどを指摘している。
朝木さんのコメントが掲載されたのは、2月9日付『週刊新潮』掲載の「創価学会に占領された『東村山市役所の歪み』」と題する特集記事。同誌の記事は、朝木さんや矢野 『東村山市民新聞』編集長、市長、市幹部、市議会関係者、市民らのコメントを引用しつつ、東村山市では、創価学会・公明の政治力によって、市職員に多数の学会員が不正に採用され、情実人事がまかり通っていること、また、上下水道工事や清掃事業などの公共事業の発注、公営住宅の入居、生活保護の便宜など福祉行政で、創価学会優先の行政が実施されている疑惑を報道。健全な自治体運営を阻む創価学会の政界進出に警鐘を鳴らしている。そのなかで朝木さんは次のようにコメントしている。
「私は自民党から共産党まで党派を問わず、おかしいと思ったらすべて追及するんですが、議員になった当初は、これほど学会問題に直面するとは思ってもいませんでした。
ところが、例の学会と宗門との争いのあと、問題が表面化してきたんです。その市民の相談を受けて、いろいろ調べてみたんですが、学会は実にうまく役所内に人員を配置していました。例えば、納税や国保、年金の窓口で市民の名簿を見られる市民部にも学会員がいるし、そうかと思うと業者と接触する上下水道部にも配置していたんです」
「職員の中には親の代から学会員という人が多いことも分かりました。東村山の公明党を作ったといわれる古株の元市議の息子さんも市役所にいます。この元市議の場合は夫人も学会の有力者で、現在の助役もその人の自宅に出入りしているそうです」
朝木さんが述べているように、公明党東村山支部の支部長を長く勤めた古参議員M氏の長男や、同じく公明党市議I氏の子息は市役所職員。M氏の長男の市役所就職は、公明党の政治力の賜物であることは、地元東村山の創価学会組織では常識だったことを、当時、地元の創価学会組織の一員だった私も鮮明に覚えている。
『週刊新潮』記事は、元学会員である一市民の、
「2年前のことですが、学会の信濃町本部のある職員の奥さんが、いつの間にやら市役所の受付係になっていたんです。採用試験があったとは聞いていないし、どうしてあんなことがあるのか不思議でなりません」
との声を紹介しているが、これもまた事実。採用されたのは、学会本部経理局に勤める「東村山戸田区」(東村山地域)の元男子部長K氏の妻。K氏は、創価高校の出身で、私とは中等部、高等部時代学会活動をともにしている。
また、同誌は市議会関係者の発言として、
「たとえば現在、東村山市は清掃事業を民間会社に委託しているのですが、この中には学会系の会社が含まれています。その業者は長年にわたって、市の指定から外されることがなく、また公明党も、市議会で業者への委託料を引き上げるよう、露骨に圧力をかけてくる。それを自民党の出す議案を通してやるための取引材料にしているんです。とにかく、東村山市では公明党は連立与党である旨味をよく知っている。これが国政の場で発揮されたらと思うとゾッとします」と、創価学会員が経営する会社と公明党議員との癒着の構造を報じている。
◆三色ステッカー問題
東村山市の清掃事業に参入しているY興業の経営者一族が、地元創価学会の幹部であることは 周知の事実。私が創価学会を離れる直前の1975年当時、社長のK・T氏は、東村山市萩山地域の創価学会支部長で公明党の地区委員。その弟で部長職にあったK・G氏は、男子部の部長という地域幹部だった。しかも、公明党の地区委員だったK・T氏は、当時、公明党の市議候補として名前があがったこともある、学会内の有力者として知られていた。
そのY興業の清掃車には、創価学会のシンボルカラーである青・黄・赤のステッカーが貼られている。
1991年、創価学会は、日蓮正宗からの独立を意味する創価ルネサンスの勝利を祝し、広く社会にアピールすることを目的に、この青・黄・赤の三色を配した「三色旗」を、各家庭で掲揚するよう指示している。Y興行の清掃車に三色ステッカーが貼られたのは、そうした創価学会の 指示に基づいていることは想像に固くない。
ちなみにこの三色ステッカー問題は、朝木さんの不可解な死の直後に開かれた東村山市議会95年9月定例会の一般質問において、矢野市が行政と企業の癒着として取り上げている。ところが、矢野氏が「創価学会」の名前をあげたとたん、議場は、公明議員の激しい野次と怒号によって騒然となり、最終的に矢野氏は、多数決によって発言停止処分に付され、その日一日、発言する機会を奪われることとなった。
傍聴席にはなぜかY興業の常務をはじめとする関係者3名がつめかけており、矢野氏が発言禁止となると、安堵した表情で、公明議員と挨拶を交わして引き上げていった。
先に、池田氏が創価学会の外部企業の社長を集めてする社長会の記録を引用したが、創価学会が直接、その経営を統轄する潮出版社や第三文明社、創造社、栄光建設などの外郭企業の周囲には、創価学会幹部が経営する通称“衛星企業”がそれこそゴマンと存在する。
バブル期に活発な不動産売買を行い、倒産したライベックスや、派手な株の売買を行って話題となった電子機器メーカーのクラウン、さらには住専の日本住宅金融から60億円もの金を借り、これを不良債権化させているコスモスジャパンインターナショナル、そしてネームプレートやプラスチック案内板の製造と販売を手がけるメイバンなどが、その代表。こうした企業は、創価学会のいわば衛星企業として、外郭企業とともに公明と連携して地方自治体の公共事業に食い込んでいる。
例えば、北陸方面を担当する舟津常一副会長の兄が経営するメイバンは、91年に完成した東京都庁の案内表示板をほとんど一手に請け負っている。
石川県に本社を置くメイバンが、なぜ、都庁の仕事を一手に引き受けることができたのか。その背景に、都議会でキャスチングボートを握る公明の影響力がなかったといいきれるだろうか。
◆清掃事業委託料引き上げ要求質問
東村山でもそうした癒着の構造を垣間見ることができる。『週刊新潮』2月9日号の記事で、ある市議会関係者は、公明党の市議が市の清掃事業の委託料の引き上げを露骨に要求していると指摘しているが、93年3月25日開会の本会議での、公明党・罍(もたい)信雄議員の質問は、そうした事実を端的に裏づけるまさに“露骨な”質問である。
「○11番(罍信雄君) それでは、平成4年度東村山市一般会計補正予算(第3号)につきまして、順次質問をさせていただきます。(中略)
ごみ収集委託料減2060万につきましてお伺いいたします。これは平成3年度の当初予算に載せてありまして、それがとうとうできなくて、それで4年度には必ずやるということで4年度の当初予算にまた計上したわけでございます。
昨年の3月議会の中で、我が党は、4年度の予算質疑では根本議員が、また、3年度の最終補正質疑の中では大橋議員がこの問題を取り上げまして、当時の部長さんはこのように言われているわけです。『平成3年度に予定をいたしました1台の収集業務の委託ができなかったことは、所管部長といたしまして種々の問題、課題はあったにせよ、その責任を果たせなかったことは大変申しわけなく、その責任は重大であることを深く痛感いたしておりますので御理解をいただきたい』。こういう答弁がございました。それで、さらに理事者という立場から助役が答弁されまして、『平成3年度に委託できないということは理事者としても非常に遺憾だと思っておりますが、この検討委員会を含めてさらに積極的に対応を重ね、4年度の予算に計上いたしておりますので、この委託についてはぜひとも実施するように、私自身先頭に立ちまして対応してまいりたい、このように判断をいたしているところでございます』と、このように明快に答弁されており ます。
それがですね、この4年度の最終補正の段階にきましてですね、新しい条例との関係があると、先ほどの部長のお話がありましたけれども、結局4年度もまたできなかった。 こういうことになるわけですね。そのことにつきましては5年度の補正で組んで実施したい旨の話も聞いておりますけれども、今後の対応につきまして、過去のいきさつも含めまして、具体的に、責任のある答弁をお願いしたいと思うんですね」
要するに、東村山市では、平成3年度に新たに2060万円のごみ収集業務の委託を予定していたが、これが延期となった。公明党は、たびたびこの問題を議会で取り上げ、 早期実施を要求しているにもかかわらず、これが実施されていないのは遺憾だ。速やかに業務を委託せよと、罍市議は、市当局に対して圧力をかけているのである。
白抜きとなった創価学会に関する朝木さんの質問が行われたのは、この質問のわずか2時間後。公明党は、創価学会系業者の利益拡大をはかる一方で、創価学会を批判する言論を封殺してはばからなかったのである。
【解説】
公明党は、創価学会系業者の利益拡大をはかる一方で、創価学会を批判する言論を封殺してはばからなかったのである。
公明党の腐敗を追及しようとする朝木さんの発言を封じようとする公明党議員のおぞましさ。
獅子風蓮