くまだから人外日記

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【偽伝】平成八犬伝奇譚with9G 外伝1『哀しき八月の凱歌』 98

2018-04-14 23:31:28 | 【偽書】シリーズ
「先手必勝だ」
「待て。今は間が悪すぎるであろう」
「迷いは身を滅ぼすだけだ」
「功を焦るでない」
初陣の緊張に耐えかねたか、身を潜めていた夏草の繁みから駆け出す少女。
結果それが波乱の合図になった。

「ガラシアの首を捕るのだ。大将軍殿の懐刀たる我等が」
束ねる少女のアルトの声が竹林に控える一団の耳に響く。

「マズイ。様子見だったはずの大将軍の腰衆が功を急いたか。早く知らせねば。それにしても偶然とは言え、真っ先にガラシアを見つけだしたのが大将軍の腰衆だとは。これは神仏の悪戯なのか、時代の趨勢なのか。やはり太閤ではなく大将軍の世の流れは歌舞けぬのか。しかしこのままでは全滅は必至。猶予は無い」
黒装束の間者姿の少女は気配を消してその場を離れる。



「やべえ。腹を括らにゃなるまい」
「自分の力がこれほど難儀と思えるとは」
「いっそひと思いに自害するか?」
「慌てるな。大将に言われている事を忘れたのか。命を絶つのは最後の最後で良い。策を探索するのだ。最後の一瞬まで。自害はその一瞬でも叶う。猿よ。まずは二手に別れ…いや、遅かった様だ」
真田の四人の勇士はその異様な気配をいち早く察していた。

「どうしたのさ。何を慌ててるの?」
杏の問いに答える代わりに四人の勇士達は叫ぶ。
「一刻も早く我らから離れよ。早く」
「今から起こる事は最悪の事態やも知れませぬ故」
「特に江様だけはお守り下され」
「おっちゃん方訳分かんないよ」
杏は戸惑いながら、叫ぶ真田衆の方に問う。
「もしや?」
「信生、お主は義巳を背負ってでも逃げろ!ガラシアが来ておる」
「やはりそうなのか」
信生は慌てて義巳の腕を取り自分の肩に運ぶ。
「誰?ガラシアって」
「男を惑わす妖術を操る優男です。対男性闘士相手なら無敵と言われる…」
信生は杏にそう言うと、慌てる様に義巳を背負いにかかる。

「お〜やおや、優男で悪かったですね。南総の犬士よ」
崖の上に姿を表す襦袢姿の細身の男。





「何故大将軍様の腰衆がこの地に?」
「今はその問いより、あの男がそばに居る事が先でしょう」
「厄介の二乗だな。この状況」
「江様の無事は確認出来ましたよ」





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筆者敬白