【14】
国立駅前の公衆電話でケイに電話を掛ける。
「ケイ、これから行ってもいいか」
「送り届けたの?」
「うん」
「遅かったわね、何してたの?」
「最後だから飲ませろって言われたもので、一緒に飲んだ」
「彼女のその気持ちはわかる。でも、私の気持ちは?」
「え、だからこれからそっちに」
「来なくていい」
「なんで」
「どうしても」
「許してくれたんだろ」
「まだ許してない」
「え」
「当分来ないで」
「・・・」
またまた堂々巡りループだ。
ま、悪いのは僕なんだから、忍耐強く待とう。
期末試験に没頭することで、ケイの気持ちが和むのを待った。
数日後、なんとか試験も無事終わり、帰省する前夜ケイに電話を掛ける。
「明日愛媛に帰る」
「え、そうなの?」
「うん、あっちでケイが許してくれるのを待つよ」
「・・・」
「でさ、もし、構わないならこれからそっちへ行ってもいいかな?」
「うん、待ってる」
折しも、それは数十年ぶりに再開する隅田川花火大会の夜だった。
そのTV中継を眺めながら、
「泊まってってもいいか?」
「いいよ」
「許してくれる気になった?」
「それはどうかな」
「・・・」
「私も明日田舎に帰る」
「愛媛と岩手か」
「割とあるね、距離感」
内心、その後の天野とのことを訊きたかったが、それは宿題とすることにした。
急いては事を仕損じる、ってか。
そして、その夜は柔らかく抱き合って眠る、静かに。
翌早朝、まだ眠っているケイと書き置きを残して部屋を後にする。
『ケイ、泊めてくれてありがとう。愛してる。いつまでも。』
やがてまた、出逢った頃の二人に戻れることを確信して。
外に出てみれば、すっきりとした青空が広がっている。
が、これから本調子になるであろう太陽のエネルギーが高まっているのが分かる。
出逢った日と同じだ。
でも、あの日より確実に夏はピークを迎えていた。
見上げて目を瞑れば、瞼の裏に線状に光のスパークが弾けた。
思えばたったひと月、後にも先にも、僕の人生においてこんな激動の7月は知らない。
そのまま新宿駅に向かう。
そして途中、区役所通り【ウィザード】前を通過。
思えばひと月前、ここからケイとの逃避行が始まったのだった。
まだ人のまばらな新宿東口のスクランブル交差点を渡りながら、もう一度空を見上げれば、太陽が笑ってた・・・
国立駅前の公衆電話でケイに電話を掛ける。
「ケイ、これから行ってもいいか」
「送り届けたの?」
「うん」
「遅かったわね、何してたの?」
「最後だから飲ませろって言われたもので、一緒に飲んだ」
「彼女のその気持ちはわかる。でも、私の気持ちは?」
「え、だからこれからそっちに」
「来なくていい」
「なんで」
「どうしても」
「許してくれたんだろ」
「まだ許してない」
「え」
「当分来ないで」
「・・・」
またまた堂々巡りループだ。
ま、悪いのは僕なんだから、忍耐強く待とう。
期末試験に没頭することで、ケイの気持ちが和むのを待った。
数日後、なんとか試験も無事終わり、帰省する前夜ケイに電話を掛ける。
「明日愛媛に帰る」
「え、そうなの?」
「うん、あっちでケイが許してくれるのを待つよ」
「・・・」
「でさ、もし、構わないならこれからそっちへ行ってもいいかな?」
「うん、待ってる」
折しも、それは数十年ぶりに再開する隅田川花火大会の夜だった。
そのTV中継を眺めながら、
「泊まってってもいいか?」
「いいよ」
「許してくれる気になった?」
「それはどうかな」
「・・・」
「私も明日田舎に帰る」
「愛媛と岩手か」
「割とあるね、距離感」
内心、その後の天野とのことを訊きたかったが、それは宿題とすることにした。
急いては事を仕損じる、ってか。
そして、その夜は柔らかく抱き合って眠る、静かに。
翌早朝、まだ眠っているケイと書き置きを残して部屋を後にする。
『ケイ、泊めてくれてありがとう。愛してる。いつまでも。』
やがてまた、出逢った頃の二人に戻れることを確信して。
外に出てみれば、すっきりとした青空が広がっている。
が、これから本調子になるであろう太陽のエネルギーが高まっているのが分かる。
出逢った日と同じだ。
でも、あの日より確実に夏はピークを迎えていた。
見上げて目を瞑れば、瞼の裏に線状に光のスパークが弾けた。
思えばたったひと月、後にも先にも、僕の人生においてこんな激動の7月は知らない。
そのまま新宿駅に向かう。
そして途中、区役所通り【ウィザード】前を通過。
思えばひと月前、ここからケイとの逃避行が始まったのだった。
まだ人のまばらな新宿東口のスクランブル交差点を渡りながら、もう一度空を見上げれば、太陽が笑ってた・・・
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