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理念なき党の黄昏、そしてそこにないはずの幻を見ている人々

2012-09-22 05:48:30 | 白河アーカイブス

民主党代表選で、現職の野田総理が再選された。しかもかなりの圧倒的大差で。画像はNHKの同時中継より。

 

<議員票も含めた最終票数>

 

残り3人のポイント を足しても野田氏のポイントの半分に至らないくらいの大差がついている。

 

<国会議員が投票する前の、党員・サポーター票と、地方議員票を足した途中経過。上との差が、国会議員票となる。>

 

この、党員・サポーター・地方議員票だけを集計した結果を見ても、野田氏の絶対的優位は変わらないように見える。では、それだけ、民主党(党員も含む)内での野田支持は強かったのか。象徴的なのが以下の記事。

 

民主代表選、党員・サポーター投票率は過去最低(読売 2012年9月22日00時42分)

 民主党代表選の党員・サポーターの投票率は33・7%で、過去最低を記録した。

 無効票も3175票と、過去最多だった。代表選で党員・サポーター投票が行われたのは、2002年9月と10年9月の2回。投票率は02年9月は51・3%、10年9月は66・9%だった。

 党員・サポーター票と地方議員票はドント方式を採用し、党員・サポーター票は都道府県単位、地方議員票は全国単位で得票に応じて配分された。(ここまで)

 

なんと、2010年9月の、菅直人vs小沢一郎の代表選挙ではまだ「民主党熱」が国民の間にもけっこう存在していたようだ。今思えば、それでさえ幻のように思える。あれからまだ2年しか経っていないのに、投票率がほぼ半分にまで下がるとは、「党員・サポーター」とやらの民主党熱は完全に冷めたと言っていいだろう。

 

職場でも、「なぜ野田があんなに大差をつけて勝ったのか」が話題になったが、単に、国会議員も含めて、誰もこの民主という党が今後長続きしたり、選挙の後で連立政権の中に入るにしても、影響力が強い「大政党」として参加できる可能性はきわめて低いと思っているだけなのだろう。次の選挙では、今の民主党の議員は、普通に半分以上は落選するであろうからだ。それだけ、マスゴミが「試しに政権交代を!」と繰り返した2009年夏の衆議院選挙では、民主党が議席を取りすぎた。

wikipediaより> 

 

 

野田が再選を決めた直後の演説でも、以下の二つの言葉が夜のニュースでもピックアップされていた。フジ『ニュースJAPAN』より。

 

「私の心は もはやありません」

「私には今 笑顔がありません」

 

上の発言は、「私心がない」ことを強調するための発言で、「私心を一切持たずに、日本のために我が身を捧げる覚悟だ」という文脈の中でなされたものだ。

下の発言も、「私には今笑顔がないが、多くの日本人を笑顔にしたい」という対比のレトリックを使うためのもので、「私に今笑顔がない」のは、それだけ「真剣」だからだ、ということである。

 

と、文脈に照らせば、高校生の弁論大会のような陳腐さと、認識の単純さだけが逆に透けて見えるだけだ。

 

 

2009年以降、衆議院で民主党だけで308議席も取りながらも、この3年間、ひたすら「迷走」ばかりしてきたのは一体なぜなのか。答えは簡単だ。政党としての基本理念が全くないから、である。

 

自民党だけでなく、当ブログでも何度も書いてきたが、民主党という政党には、その党の基本理念や基本方針を示す「綱領」などが一切存在しない。数日前の記事で原口一博による、「民主党の理念」なるものを紹介したが、それにも「原口一博版であるが」という但し書きが必ずつく。ただ「働く人のために」と言っても、それは「労働組合に所属している正社員の既得権益を守る」というメッセージ以上の何も読み取れないし、その「労働組合に所属している正社員の既得権益を守る」ことが、一体日本をどれだけ良くしてきたのか、についても全く答えが出ていない。というか、「良くなっていない」である。だからこそ、民主党の支持母体である「連合」からも、「原発ゼロ方針」に関しては異論が出てきたのだ。

 

原発ゼロ事実上見直し 選挙に影響、軌道修正に余地(産経 2012.9.19 00:13)

 2030年代の原発ゼロを目指したエネルギー・環境戦略について、政府が戦略自体の閣議決定を見送るのは、「原発ゼロ」目標が与える国民生活や経済の影響に懸念が広がってきたためだ。経済界だけでなく、民主党の支持母体である連合からも異論が出ており、軌道修正する余地を残した。近く予定されている衆院選にも影響が出かねないと判断したとみられる。

 「政府には責任あるエネルギー戦略をゼロからつくり直すよう強く求めたい」。経団連の米倉弘昌会長は18日の経済3団体の会見で、エネルギー政策の見直しを強く訴えた。

 米倉氏は国家戦略会議の民間議員を辞任する考えを表明。そこまでして強く反対するのは、政府のエネルギー戦略があまりにも国民生活への影響を無視しているからだ。

 議論の過程では、実現不可能なレベルでの太陽光などの再生可能エネルギーの拡大が必要な点や、電気料金が現行の2倍に上昇することなどが示されていた。

 しかし、14日にまとまった戦略は、「30年代の原発ゼロを可能にするよう、あらゆる政策資源を投入する」とするにとどまり、原発ゼロで起こり得る悪影響に対し、具体的な表現を避けた。

 使用済み核燃料の再処理を続けるなど矛盾点も多く、政府内部には、「そもそも閣議決定に値しない」(経済官庁幹部)との見方もあった。

 経済が落ち込めば、雇用に跳ね返るのは避けられず、国家戦略会議では、連合の古賀伸明会長も、経済同友会の長谷川閑史代表幹事の意見に賛同した。政府内ですら、川端達夫総務相が「(目標が)どこまで具体的なものか、きちんと説明すべきだ」とするなど、反対の声があった。

 政府は、このまま閣議決定すれば、支持母体の反発だけでなく、党内の分裂を招く事態になりかねないと判断したもようだ。

 このため、19日の閣議では、新戦略本体は決定せず、戦略の対応方針にとどめる異例といえる対応になった。

 野田佳彦首相は18日の国家戦略会議で、「基本はぶれず、かつ将来を過度に縛ることなく、柔軟な戦略が必要だ」と指摘した。だが、内容だけでなく、政府としての決定方法もあいまいで、エネルギー政策は早くも崩壊し始めている。(ここまで)

 

民主党代表選での、野田以外の3人が、必死に「脱原発を!」と吠えていたのが、いかに支持母体である「連合」の意向を無視したものかがよくわかるニュースだった。

 

綱領もない、政策の優先順位も決められない、どの支持母体の主張を優先するのかもわからないでは、国民が民主党を見る目もどんどんわけがわからなくなる。政府民主党の「行動原理(この言葉が重すぎるのなら、『一般的な行動方針』でもかまわない)」がわからないときに、普天間基地問題での迷走に続き、尖閣沖漁船衝突事故での対応の遅さ、まずさもさらけ出され、そして東日本大震災後の対応の遅さ、小沢一郎をはじめとする「有力議員」が「現地」に入らない状態が数ヶ月続くと。原理もなければ瞬時の対応も「理解不能」となるのは必然であろう。

それが、民主党が政権を取ってからの内閣支持率の推移にも如実に表れている。9月16日のNHK日曜討論より。

 

この、「新内閣になると支持と不支持がきれいに逆転し、その後はトレンドとして「支持」が単調減少していく」という姿は、民主党3内閣のどれでも同じように再現されているのが、ぱっと見るだけで目に痛い。唯一例外的なのは、菅内閣の2010年秋あたりであるが、これが、「菅直人vs小沢一郎」の一騎打ちとなった党代表選挙の時期である。「小沢一郎=悪」と大衆が見なしたことで、消去法で「菅直人=善」となり、一時的に菅内閣の支持率が上がっただけだ。つまり、「政策」ではなく、「仮想敵を作ること」による支持率アップにすぎなかった。オイオイ、ここにも「政策」あるいは「理念」あるいは「的確な対応」のどの一つも存在しなかったわけか。。。

 

 

ところが、こういう「死に体」いや、すでに「半分死体」となっている民主党にも、未だに一縷の望みを託している「市民」がいるようだ。

 

野田代表再選:盛り上がり欠き、有権者は冷淡(毎日新聞 2012年09月21日 22時22分)

 21日の民主党代表選で、野田佳彦首相が大差で再選された。盛り上がりに欠けた代表選に有権者から冷ややかな声が上がる一方、これまでの首相の政権運営を評価する声も聞かれた。【川崎桂吾、市村一夫、青島顕】

◇脱原発集会

 毎週金曜に官邸前で開かれている脱原発集会。21日夜の参加者の多くは「野田首相再選」に冷めていた。

 「原発の再稼働を決めた民主党に期待は持っていない」。そう話したのは、さいたま市の自営業、高橋学さん(42)。原発事故を機に政治への関心が高まり、この日は妻と1歳9カ月になる娘を連れ集会に初参加した。次の選挙は脱原発を掲げる政党を選ぶつもりだが「民主党もダメだが、原発推進の自民党はもっとダメ。他の政党も政権を担えそうにはないし、誰に投票したらいいんでしょう」。

 集会を見守っていた東京都文京区の会社員、松山知生さん(36)は「消去法」で野田首相を支持。「2030年代原発ゼロの閣議決定を見送るなど、外圧には弱いと思うが、私たちの声を聞いてくれそうな気がする。自民党では原発ゼロの言葉も出てこなかったでしょうからね」と話した。

◇お膝元・千葉

 首相のお膝元である千葉県船橋市の会社員、江川洋介さん(47)も「軸がぶれない点を評価している。特例公債法案や『1票の格差』是正などの懸案に道筋をつけるため、場合によっては任期いっぱいまで務めて」とエールを送った。

◇県連分裂の岩手

 民主党県連が分裂状態になった岩手県では、津波被害を受けた釜石市の主婦、小池テル子さん(62)が「真面目に働いている印象だが、十分といえない面もある。多くの被災者の希望は住まいの再建。増税の控除が必要だし、町づくりや土地のかさ上げなどの遅れで進まない住宅整備などの対策を早く示して」と注文を付けた。(ここまで)

 

 

>次の選挙は脱原発を掲げる政党を選ぶつもりだが「民主党もダメだが、原発推進の自民党はもっとダメ。他の政党も政権を担えそうにはないし、誰に投票したらいいんでしょう

 

出たね、毎日さんがすぐに飛びつきたくなるような言葉が(笑)。これも以前ここに書いたように、原子力は、化石燃料と比べて、単位重量あたりで発するエネルギーが300万倍である。

だから、建設自治体に湯水のように原発助成金を渡しても、化石燃料より安価になっているのだ。こういう「基本的事実」を見ないまま、

「あんな事故(しかし、そのほぼ100%は、危険がないことを危険だ危険だと騒いでいることだけである。その証拠に、「お先真っ暗」と勝手に判断した人が自殺した以外は、放射線による死者は未だに一人も出ていない。その一方で津波による死者数は2万人以上である)」があったのだから、どんなに苦しくても、これからは「脱原発」しかない!

と、ただ「思いたい」という気持ちだけから、未だに毎週金曜日に首相官邸の周りでデモに興じている「自称市民」は、実に頭の悪い人種なのだなと言わねばなるまい。

 

 

上の記事って、野田は、「原発ゼロ!」を叫ぶ人への人気が特に高いってことを言いたいだけの記事なのか?「軸がぶれない」という評価も、単に他人の言葉に耳を貸さずに、増税と決めたら増税へ一本道!という姿勢であるとも言えるからなあ。何の参考にもならない。

 

 

というわけで、沈みかかっている太陽に、「反原発」の願いを託す反原発派が、「消去法」とやらで手を合わせている姿が頭に浮かんだとさ。 

 

 



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