先週は身銭を切って某ホテルに宿泊していたが、幸か不幸か、そこで朝日さんが無料で配られていた。そこで先週は朝日さんの紙面を、久々に紙の形で(in paper)見ることが多かったのだが、そこでの「1面」の編集方針があからさまに「反原発ありき」すぎて鼻水が止まらなかった(苦笑)。
まず、先週の火曜日、8月21日の朝刊。
「節電効果 ピークも余裕」
次。8月23日木曜日。
「原発0% 支持最多」
そして最後が昨日、8月26日、日曜日。
「国会議員42%『原発ゼロ』」
それぞれの記事を精密に読めば、朝日さんがミスリードしようとしていることと、ミスリードしようとしている方向性についてはよくわかる。たとえば、8/21の記事については、
「ピークも余裕」というタイトルにはしているが、記事の中では、
「ピーク時も電力を融通し合えば」
であるとか、
「ピーク時も5%以上の余裕があった」
という表現が繰り返されている。オイオイ、去年から、関東の50Hz←→関西の60Hzの変換が、1年程度の準備期間ではどうにもならないことがわかっていたことであるとか、 どの電力会社からどの電力会社に「融通」すればいいかは、事後的にしかわからない(つまり、あらかじめ計画を立てることができないのだから、後出しジャンケンをしてるのと同じ発言にすぎない)ことなど、現在の電力事情の難しいところは完全にスルーである。
「5%以上の余裕」という表現も「ものは言いよう」であって、「5%強ぐらいしか余裕がなかった」ということである。いわゆる「でんき予報」で、
・ただいま、電力使用率90%突破!
という表示がもしも出たら、
「なんだ、まだ5%以上も余裕がある!」
と思えるのか、
「ええっ!もう10%切ってるの!!」
と思うのか、どちらの日本人が多いか、ということである。電力会社も株式会社であるから、株主である「ユーザー」がどう思うかが、電力会社の方針を定める上で重要であることは言うまでもない。
そして、この思考実験においては、もちろん後者のように思う日本人が圧倒的に多いだろう。
だとすれば、
「ピーク時も余裕」
などという「タイトル」は、「反原発」という前提(presumption)がなければ打てないものであって、朝日さん側に、必死に「反原発」という「世論」を、「朝日さん購読者層」から作っていこう、という「野心」がなければできないことなわけだ。
ホントに必死なんだね、朝日さん。
8/23の記事も同様だ。テレビなどでのニュースをよく見たが、いわゆる「討論型世論調査」で「原発あり」から「原発0%」へ移ったのは、「よくわからない」あるいは「複数回答」をした層がほとんどであった。一方で「15%」であるとか「20~25%」と、
1 単一の選択肢を選び、
なおかつ
2 具体的な原発の使用割合を答えた
層は、「討論」とやらをしても、ほとんど移動が見られない。すなわち、討論前には意見をあまり明確に持っていない層(だから答えが複数回答になるわけだ)だけが、「原発0%」に移った、という分析が「ごく普通レベル」のものとなろう。
この私の仮説が正しいならば、「討論型世論調査」における「討論」では、「原発0%派」が「とにかく安全を」と繰り返す中で、
「とにかく安全 ならば 原発0%」
という「簡単な論理」に嵌ってしまい、討論後に「原発0%」になびいてしまっただけ、と見ることもできるだろう。
この「簡単な論理」が、どれだけ「持てる者」を優先した「強者の論理」であるかは、当ブログでも何度も書いてきたので、関心のある方は過去の記事を適当に選んで読んでくだされば良いが、要点はこうだ。
・反原発派が「とにかく安全を」と言うときの安全は「放射線からの安全」しか指していない。その中には、電力が供給できずに病院で亡くなる方や、停電のせいで交通信号が止まることで交通事故が生じ、それで亡くなる方や、そして、これが最も重要だが、「節電」と称してエアコンなどを弱めたり止めたりしたせいで熱中症で亡くなる方を全く考えていない、
ということだ。実際に、昨年の夏だけで、熱中症による死者数は942人。救急搬送された患者はその10倍、100倍以上もいるわけだ。
・その一方で、放射線による死者は、あれから1年以上も経つのにまだ一人もいない。これが明確な「現実」である。
(前略)厚生労働省によると、昨年の熱中症による全国の死者は942人。
したがって、
・「とにかく安全を」
というのなら、
・「しっかり管理をした上での原発」
という選択肢しか残らないはずなのだがなあ。単位価格あたりのエネルギー量から言っても、再生可能エネルギーは言うに及ばず、化石燃料も原子力には全く勝てないのだから。このページによると、1グラムあたりで生み出せるエネルギー量は、原子力は化石燃料の300万倍である。桁が違うとはこのことだ。
したがって、「とにかく安全を」ならば「原発は0%しかない」という論理は、何も考えていない情報弱者のそれであり、実際に熱中症で亡くなったり救急搬送されている患者のことだけをきれいに忘れることのできる、「想像力が極端に低いバカ」かつ「電気代が桁違いに上がってもかまわない」という「経済的強者」だけなのである。
そりゃあ、若者の多くが「反原発」に全然なびかないのも納得である。
8/26の国会議員へのアンケートも失笑ものだ。朝日さんは必死に
(主旨として)「自民党議員は今まで原発を推進してきただけに、ハッキリと答えられなくて困惑している」
と書いているが、当ブログで以前指摘したように、将来の原発依存度を50%程度まで上げる、と決定したのは他ならぬ鳩山政権である。私の記憶が正しければ、鳩山由紀夫は民主党の代表だったはずだから(苦笑)、
・今まで「最高」に原発を支持してきたのは「民主党(+社民党+国民新党)」である。
という「事実」を、朝日さんはこれまたきれいに忘れることができた上で、上記のような主旨の記事が平気で書けるということだ。
まあ、この日の朝日さんの記事には、中ほどに、朝日さんに回答をしてきた国会議員の回答を一覧にして載せているので、それについても機会があったら記事を書きたい。
というわけで本筋に戻るが、どの日の記事も、
・著しく事実認識能力が低い
または、
・著しく想像力が低い
という条件を満たしていなければ書けないし、しかもそういう記事を平気で1面に載せるには、中学生も真っ青な「リテラシーの低さ」が要求される。それを易々と越える朝日さんのクオリティって・・・。
朝日さんの、読者をバカにしきったこの記事執筆&編集方針・・・一体なんなんだろうね?
以下引用です。
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■異例の再輸出
スペイン、フランス、ブラジルなど液化天然ガス(LNG)輸出に縁のなかった国を出たタンカーが、次々と川崎や名古屋に入港している。これらの国が貯蔵するLNGを、日本の電力会社が高値で再輸出させる異例の手段をとったためだ。
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つまり、先進国のストック分まで購入していたとのこと。
さらに、あらゆる手立てで集めた結果、中心になったのがカタールとの短期契約(高値です)だそうです。カタールは米国への販売を見込み、LNGの(生産の)設備を増強したところ、米国でシェールガス革命が起きて、売り先を失っていたそうです。
この幸運がなければ、燃料が必要な量、調達できず、大規模停電が起きる可能性があったそうです。
電力会社の陰の努力を無視して、「節電したら余裕」と言っている頭のおかしな人たちに呆れます。
また、資源の輸入にはODAがからんでいるそうです。ODAにはお金だけでなく、技術提供(設備や技術者の養成等)も含まれていますが、原子力人材の養成も含まれているそうです。つまり、資源(主に化石燃料)を輸入するために、日本の原子力技術の提供や人材養成も行われているのです。ウランも資源だろう、と言う人がいますが、白河さんが書かれているとおり、発電に必要な絶対量がウランは少ないです。また、個体のため輸送もしやすい。
ODAは資源の輸入のためだけではないですが、資源の輸入という目的も大きい。日本はお金だけでなく、技術も後退すれば、資源を輸入すらできなくなるかもしれません。