NPO九州森林ネットワーク

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カーボンオフセット CO2削減のトレーサビリティ

2009年04月28日 05時15分36秒 | <日々徒然・イベント>
第11回九州森林フォーラムが4/24,25、福岡県久山町で開催されました。
「森づくりによる低炭素社会づくりに向けて」と題して、カーボンオフセットについて学習し、その可能性について議論しました。

今回のフォーラムに参加するまで、カーボンオフセットの内容、排出権取引との違いなど、あまり詳しいことが理解出来ていませんでしたが、非常に解りやすいフォーラムでした。下記は、鹿児島の理事、村田の今回フォーラムについての個人的なメモです。間違い、もう少し説明を要する部分は、どうぞ修正、説明のコメントをお願いします
  <フォーラムの写真スライドショウ>  http://homepage2.nifty.com/jinenmoku/shinrin9net/
 (九州森林ネットワークHPトップからも入れます。)

「カーボンオフセット」って何でしょう?
今回のフォーラムで、基調講演をして頂いた小林紀之先生の説明では、
「カーボンオフセットとは、私達の日常生活で努力しても削減できない排出量を、他の場所や他の活動による排出量の削減や吸収量によって埋め合わせる(相殺する・オフセットする)手法のこと」
(小林紀之、温暖化と森林)

最近、コンビニで売られている商品にもカーボンオフセットのマークが付いているモノがありますね。今年の年賀ハガキでも、カーボンオフセット付きハガキが発売され、じねんもくも、使わせて頂きました。カーボンオフセットの概念は、1997年、イギリスで生まれましたが、日本では、昨年、環境省が指針や認証基準に関する検討会が作られ、最近やっとその考え方がまとまってきました。現在、商品についているカーボンオフセットは、海外でのオフセットを商品に付加しているようです。できれば、日本のカーボンオフセットを使いたいですよね。日本のカーボンオフセットクレジット「J-VER」とその実施規則が昨年11月にまとまったそうです。

カーボンオフセットと聞くと、排出権取引をイメージする人が多いと思います。金融取引、マネーゲームの対象になって実質的な二酸化炭素削減と関係ない動きになっている部分もありますね。カーボンオフセットと排出権取引は少し違います。

今回のフォーラムでは、森林のCO2吸収によるカーボンオフセットを議論したわけですが、実際の林業でどの程度のCO2削減になるか厳密に検証して、また、その作業にどれだけの費用が掛かっているかを算定し、そのCO2削減につながる作業を共通の基準で認証します。それを、企業等に買ってもらう。
企業は、それを商品等に添付して売ることも出来ます。その商品がどれだけのCO2削減の価値があるかも明示出来ます。
林業でCO2削減するためには、伐採したら植林し永続的に管理しないといけません。永続的な管理を保証するのが森林認証になります。木を使うだけでは、木を植えるだけでは、CO2削減にはならない。木材のトレーサビリティが確保されていないとCO2削減が実証できない。山火事等で消失しても意味が無くなるので、そのリスクも3%のバッファーを確保して計算するそうです。
少し、めんどくさい話ですね。確かに複雑ですが、木材のトレーサビリティを管理することで、CO2削減のトレーサビリティ、削減効果が実感できるようになるわけです。

このようなストーリーはどうでしょうか。新潟県、高知県で検討されているようです。
トキは、知ってますよね。トキの生息地を守るために森林農地をしっかり管理して、エサになる動植物がバランス良く生きていける環境を作ります。この活動は、健全な森と田んぼ、畑を作るコトになり、CO2削減にもつながります。また、四万十川の水質改善の話も同じです。そのような活動によってどれだけのCO2削減が行われるか、その作業にどれだけの費用がかかるかを評価し、その内容は開示され、J-VERクレジットが認証されます。そのJ-VERを企業が購入し、商品につけて売ることができます。その商品で、どれだけのCO2削減がつながるか、その削減は、どのような活動によるものか明示出来ます。
排出権取引は、実際の削減行為と離れてマネーゲーム化してしまいましたが、カーボンオフセットは、削減作業の評価を厳密に行うこととCO2削減のトレーサビリティを明確にするコトを大切にしています。

さて、今回のフォーラムでは、一日目、会場久山町の水源になっている里山を見学しました。写真の切り株をよく見ると、緑色のタグが打ってあります。伐採した場所を特定するためにGPS(ナビ)のデータも利用しているそうです。木材のトレーサビリティを確保するためです。

伐採後の植林も行われています。写真の白い柱、スギの苗木を守るためのプラスチックの柱状ガード、テトラガードです。この植林の前に、山桜等の広葉樹を植えたそうですが、野ウサギ等に枝を食べられ全滅。今回は、シカの害に備えて、テトラガードを設置したそうです。一本、材料代、1110円。

フォーラム前夜の懇親会。公民館を使っての質素な会でしたが、とても盛り上がり、宿に帰ってからも、夜半過ぎまで議論は続きました。

フォーラムでは、午前中、日大大学院法務研究科教授の小林紀之氏の基調講演があり、カーボンオフセットの温暖化対応の中での位置づけや枠組み作りの現状、先進的な取り組みの紹介して頂いて、解りやすい講演でした。

午後からは、パネルディスカッション。(基調講演を行って頂いた小林紀之氏。カーボンオフセット事業に取り組んでいる、北海道下川町地域振興課長春日隆司氏、More trees 事務局長水谷伸吉氏。九州森林ネットワーク理事の諸塚村企画課長矢房孝宏氏、山村塾事務局スタッフ小森耕太氏、コーディネーター三浦逸朗氏。)

現在、カーボンオフセットは間伐促進事業への適用が多いのですが、次回のフォーラム(2009年11月 水俣)は、再造林放棄地の問題にカーボンオフセットが適用できるか検証することになりました。
興味のある方は、是非ご参加下さい。  (村田/鹿児島)

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