わたしが好きな映画のワンシーンに、『恋人達の予感』(1989年)の次のやりとりがあります。
―――――
シカゴからニューヨークまでのドライブ旅行の途中、食事を取るためダイナーに寄ったシェルドンとサリー。
[Waitress] What can I get you?
[Sheldon] I'll have the Number Three.
[Sally] I'd like the chef salad, please, with the oil and vinegar on the side. And the apple pie a la mode....But I'd like the pie heated, and I don't want the ice cream on top. I want it on the side. And I'd like strawberry instead of vanilla if you have it. If not, then no ice cream, just whipped cream, but only if it's real. If it's out of a can, then nothing.
[Waitress] Not even the pie?
[Sally] No, just the pie. But then not heated.
以下が日本語訳です。
[ウエイトレス] ご注文は?
[シェルドン] 3番を
[サリー] シェフ・サラダを、オイルと酢を(サラダにかけないで)別に。それとアップルパイのアラモードを。パイは温めて、アイスクリームはパイの上にのせないで横に。もしあれば、(アイスクリームは)バニラではなくいちごを。もしいちごのアイスクリームがなければアイスクリームはいらないから、ホイップクリームだけで。ただしそれがreal(本物、つまり最初から手作りしたもの?)ならば。缶のホイップクリームしかなければ、何もいりません。
[ウエイトレス](アップル)パイもいらないの?
[サリー] パイだけください。でも、(アップルパイだけなら)温めなくていいです。
―――――
この映画の主人公である、シェルドンとサリーの性格の違いを強調したこの場面。特にサリーの注文の仕方が、彼女の気難しい(picky, fastidious)性格をよく表しています。この注文の仕方は大げさだとしても、アメリカのレストランで注文するとき、料理名だけを告げるのではなく、自分好みにアレンジするのはよくあること。だからこそわたしが普段、「卵を抜いて」、「豆を少なめにして、その分ライスを多めに」などの注文にも気安く応じてくれるのだと思うし、そういう意味で、ベジタリアンが生活しやすい環境になっているのだと思います。(もちろん、自分のわがままをきいてくれたら、チップをはずむことを忘れてはいけませんが。)この「自分好みの料理にアレンジする」というのをよく表しているのが、アメリカの多くのサンドイッチ店。以前わたしが住んでいたアメリカ中西部のある町に、サンドイッチの種類を何十種類もメニューに載せていたうえ、「欲しい組み合わせがメニューになければ、作りますのでお知らせください」と記載していた店がありました。もう、ひれ伏すしかありませんね。
何でも最初から丸ごとセットされている日本と比較すると、アメリカは、個人の好みを主張しやすい国。食べ物だけではなく、自転車もそうです。わたしが現在使用している自転車を購入したとき、ハンドルを高いものに変えてもらったうえに、ベル、かご、スタンド、ライトなどの付属品は全て、後で自分で好みのものを購入する仕組みになっていました。つまり、文字通り「世界に一つだけの自転車」(写真)にできるわけです。
サンドイッチにしろ自転車にしろ、個人の好みをかなり反映できて、世界でひとつ、自分オリジナルのものを作る、または作ってもらえるアメリカ。個人主義の国、とアメリカがいわれる所以でしょうか?

(すでに何度かこのブログで紹介したわたしの「世界に一つだけの自転車」。ポートランドのアムトラック(Amtrak)の駅構内で、12月31日撮影。アムトラックは、日本のJRに相当します。自転車を載せることができるので、自転車代を往復で10ドル払い、ポートランドまで持って行きました。ポートランドの街中も、この自転車でスーイスイ。)