われらしんじんのこども

真人幼稚園の子どもたちの日々の様子や、
  楽しいエピソードなどをお伝えしています。

おみこしを担ぐ、ということ。

2010-10-28 22:32:00 | Weblog
 子どもたちのお神輿が今年も出来上がった。
 明日は町内を練り歩く日である。クラスごとに知恵を絞り、みんなで意見を出し合って、作り上げた神輿たち。今年はまたどんなものが出来上がっただろうか? 
 
 自分の園のことではあるが、彼らの作り出すおみこしには毎年驚嘆させられる。独創的で、オリジナリティーに溢れている。こんなものまでおみこしになっちゃうんだなあ~という意外性と、同時に、子どもの発想の見事さに感動すら覚えることがある。例年制作活動に入る前には園長として担任たちにある種の方向性は示す。何故子どもとおみこしなのか?とか、おみこしってそもそも何なんだろうね?とか。私たちが子どもと作り上げていく素材としてのおみこしについて、こう捉えてもらいたという基本線は確認する。しかしその先は自由である。まったくのゼロから考えさせる。何をどんな風に作るのか? そのストーリーから意匠に至るまで、すべて担任と子ども達に任せるのである。たしかに、自由ほど辛いものはない。だって何でもアリですものね。『自由は不自由である』と言った先人もいた。しかし、わがしんじんの担任達はそんなことには決して怯まない。むしろ生き生きとしてくるくらい。何もないところから何かを作り上げるくらいの力がなければ、少なくとも子どもの心を動かすことはできないのだ。
 
 そんなこんなで、どんなおみこしを子どもと作るのか、それはそれぞれに任せるしかない、と私は考える。それは人からこうしろと言われたり、どこかから誰かのアイディアを借りてきたりするような類のものではないのである。自分たちで何にもないところからゼロから作り上げたものだからこそ、しみじみと有り難く、愛おしく、みんなで力を合わせて担ぎたくなる。そこに意味があるのだ。
 
 あるひとつのクラスのみこしができるまでには、一筋縄ではいかない紆余曲折もある。意見のぶつかり合いや対立があり、説得と反論、諦めと合意がある。多数派と少数派。最終的に多数決で方向性を決定するのだが、そこへたどり着くまでには長い長い道のりがあり、喜びと悲しみがあり、栄光と挫折があり、時に不条理がある。自分の意見が通る者もいれば通らぬ者もいる。今日は多数派でも明日はひとり孤軍奮闘ということもある。一回では意見がまとまらず、何日も何日も話し合いに時間を費やすクラスもあると聞く。たとえば、たった一本の角(自分たちの怪獣みこしに付けたい一本の角)にさえ、心と心の葛藤があり、ドラマがある。でもそれが大切なことなのだ。それが大事な時間なのだ。私はそう思う。みんなの意見を少しずつ取り入れるためには、お互いに妥協点というものを見出さねばならぬのだ。自己を主張しつつ相手の立場になって考え、やがては妥協点を見出すことのできる仲間。そんな仲間こそが本当の仲間なのだ。そういう経験が、この共同制作である「みこし作り」の本当の意義である。共同制作というテーマとその過程を通して、じつは私たちは子どもの心を耕しているのだ。出来上がったものの出来不出来も勿論大切ではあるが、何より重要なことは、その過程である。

 とにかくそれぞれが意見を出し合い、切磋琢磨し、創意工夫を凝らして作り上げたものであるから、ひとつひとつに子どもたち一人ひとりの願いや夢や思いがぎっしり詰まっている。それはまさに彼らの希望そのものである。あるいはそれはすでに、子どもたちの心の一部である。お神輿とは元来そういうものなのだなあと、この子どもたちの様子を見ていてつくづく思う。みんなの願い、思い、夢、それらのひとつひとつをみんなで形にし、担ぐのだ。心を担ぐのだ。自分の心、そしてみんなの心をひとつに、力をあわせて。 「わっしょい」という言葉がある。みんなの「輪」を「背負う(しょう)」ので、「わっしょい」なのだという説もある。一人ぼっちで担ぐのではなく、みんなで担ぐというところが、またいい。一人の力では到底できないことも、みんなの力が合わさればできるのだ、ということを、厳しく優しく教えてくれた、みんなのおみこし。今年も威勢よく、心と体を全開にして、堂々と担いでもらいたいと切に願う。
 
 あした、晴れることを、静かに祈ろう。

 


*明日は晴れの場合に町内を練り歩き、雨天の場合は屋内運動場でおみこしを担ぎます。園外実施、園内実施いずれの場合も午前八時半に決定し、このブログでもお知らせする予定です。判断がつかない方はこちらでご確認ください。皆様のお越しを心よりお待ち申し上げております。


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