【真人幼稚園の先生が選ぶ絵本・12月の絵本】
今年度も真人幼稚園の先生方による絵本の紹介をおこなってまいります。これは年間1~2冊の絵本をそれぞれが書店などで選び、教職員同士で読み聞かせをしたり、それぞれ絵本を選んだ理由や見どころなどを発表し合う、教員研修の一環としておこなっている取り組みです。そこで紹介された作品をぜひ皆様のご家庭にもお勧めしたいという願いから、本年は2学期末にこのような形で発表させていただくことといたしました。
さあ、今回はどんな絵本が選ばれたのでしょうか? それぞれ作品を選んだ先生がブック・レビューを書いていますので、それらを参考になさって、この冬はぜひ親子で絵本に親しんでみてはいかがでしょうか。なお、それぞれの作品は園の図書に収蔵され、さっそく貸し出しをおこなっています。
『ようかいサッカー』
聞かせ屋。けいたろう 文 ひろかわさえこ 絵 ポプラ社
(湯浅美咲先生のレビュー)
一つ目小僧のようかいが人間の子どもたちがサッカーをしている様子を遠くから見て、「僕もやってみたいなあ」と呟くところから物語は始まります。一つ目小僧は誰もいなくなった夜にサッカーの練習をし、どんどん仲間を集めてついにようかいサッカーの試合開始!! ゆきおんなのつるつる凍らせる攻撃やろくろくびの首の長いヘディング等々。たくさんの妖怪たちが繰り広げる試合模様に夢中になること間違いなしです♪ようかいがどんな攻撃をするのか予想してみたり、最後にそれぞれの妖怪の特徴が書いてあるページを見て楽しんでみてください♪
『まよなかのおしっこ』
さいとうしのぶ 作 KADOKAWA
(鈴木有咲先生のレビュー)
「きょうからひとりでねます」と宣言したぼく。しかし、その日の夜中にトイレに行きたくなり、目が覚めてしまいます。“戸を開けたらお化けが落ちてくるかもしれない”、“電気のスイッチを押したら壁から手が出てくるかもしれない”、色々な“かもしれない”を想像しながらトイレに向かう僕は無事におもらしせずに辿り着くことが出来るのでしようか…。私も小さいころそうだったなあ、と僕に共感できたり、可愛いお化けがたくさん出てきたりする一冊。ぜひお時間ある時にお子さんとご一緒に「あるある!」と見てみてください。
『ぼくはぼく』
スーザン・ヴェルデ 文 ピーター・レイノルズ 新評論
(本間愛梨先生のレビュー)
日々過ごしている中で誰もが一度は他人と自分を比べてしまうことがあると思います。私自身、何かに悩んだ時、迷った時、辛く苦しい時、なかなか人の打ち明けられず「どうして私って」と自分を責めてしまうことがあります。自分を客観視することは簡単なことではないですが、この絵本は“他人との考えの違い”や“感受性の違い”は当たり前、それはあなたの個性であり、ありのままに感じた自分を責める必要はない、生きていればいいことだってうまくいかないことだってある、だから人生面白いんだ!その気持ちを大切にすることが大事、そう気づかせてくれる絵本です。読み進めていけばいくほど、どんなことがあっても自分を他人に評価される必要はないと自己肯定感が上がり、絵本を読み終わる頃には自分がもっと好きになれている気がします。今よりもっと“どんな瞬間も他人とは違う自分の人生最高!”と思えるように、子どもたち、保護者の皆様、全教職員、全ての皆様にこの絵本をお時間のある時に手に取って読んで頂きたいです。
『ねぞうプロレス』
ひらぎみつえ 作 教育画劇
(田中里奈先生のレビュー)
お父さん、お母さん、ひろくんの3人が繰り広げるある夜の物語。プロレス技のように決まるよ決まる、ひろくんのねぞう! ページをめくるたびに笑ってしまいそうになるねぞうの数々をプロレス中継風にお話していく様子が、子どもたちの心をわしづかみにします。また保護者の皆様も“うちの子もそうだな~”とお子さんに照らし合わせて読むとより一層楽しいかと思います。また、ひろくんにやられっぱなしのお父さん、お母さんですが、大どんでん返しでひろくん突如大ピンチに! このシーンがとても可愛らしくておすすめです。最後の終わり方も家族愛が感じられるので、ほっこりしますし、ご家族の皆さんで我が家のねぞうをテーマに語り合うのも会話が弾むかもしれませんね。ぜひお手に取って読んでみてください。
『つきのこうえん』
竹下文子 文 島野雫 絵 パイ・インターナショナル
(川﨑里紗先生のレビュー)
るなちゃんは寝る前にお母さんに絵本を読んでもらうことが大好き。そんなある日、お母さんに絵本を読んでもらえない日がありました。そんな退屈な夜を過ごしているるなちゃんの元に部屋の窓からナールという男の子がやって来ていいました。「つきのこうえんに遊びに行かない?」こうして、るなちゃんはナールと一緒につきのこうえんに行くことになりました。さて、つきのこうえんとは一体どんなところなのか。るなちゃんはつきのこうえんでどんな夜を過ごすのか。ファンタジーな世界をぜひお子さんとご一緒にお楽しみください。
『おにろうのおつかい』
尾崎玄一郎・尾崎由紀奈 作 偕成社
(佐藤美樹先生のレビュー)
おにろうは、「おにやんま3丁目」に住む賑やかな鬼家族の男の子。ママがおにろうの誕生日に食べたい物をなんでも作ってくれるというので、おにろうは唐揚げの材料「おにとかげ」4匹を買いに出かけます。場所は「おにやんま銀座」にあるお肉屋さんです。おにやんま銀座の通りには、魅力的なお店がずらり! 見たことがあるような、でも私たち人間にはちょっと怪しくて不気味なお店の中を、おにろうはお肉屋さんを目指して進みます。たくさんの誘惑に負けず、お目当てのおにとかげを買えたおにろうですが、最後の最後におもちゃ屋さんの「オニガシマエースのガチャガチャ」に目が釘づけになってしまい…!? おにろうは買い物を成功させ、無事に家に戻ることが出来るのでしょうか? このえほんは絵がとても力強く、鮮やかな色使い、そしておにろうの目線に合わせてアングルが変化することで、おにやんま銀座の臨場感が味わえるとにかくエネルギーにあふれた一冊です。細かいところまで書き込まれており、読むたびに新しい発見があるところも楽しいので、お子さんとご一緒にぜひ繰り返し読んでいただきたいです。
『ゆびのすうじ へーんしん』
齋藤陽道 作 あわい 絵 アリス館
(池田和先生のレビュー)
1から10の数字を指で表し、何に変身できるかなという手遊びの絵本です。指での表し方はなんと手話なのです。1から4までは皆さんが想像している通りですが、5から10が思っているのと違う表し方になっています。イラスト付きなので真似をしながらお子さんと一緒に楽しめる絵本になっています。手話や指文字を知るきっかけになる絵本ですので、ぜひお手に取って読んでみてください。
『ごめんやさい』
わたなべあや 作 ひかりのくに
(圓山陽菜先生のレビュー)
この絵本は様々な野菜が出てきて、色々な遊びを通してダメなこと、よくない事、そして「ごめんなさい」を伝えるときはいつなのかを教えてくれる、学べる絵本になっています。お友達を引っ張ったら痛いんだよ、順番待ちをすること、お友達の物を取らない事などを分かりやすく描かれています。また様々な野菜が出てくるので、色々な野菜を知ることが出来たり、絵も可愛く描かれています。短い時間でも読める内容になっているのでぜひお勧めしたい絵本です。
『ぞうくんはいちねんせい』
ながしまひろみ 作 アリス館
(藤井遥先生のレビュー)
もうすぐ1年生になる年長組のみんなにとっておきの一冊です。
ぞうくんはもうすぐ1年生。楽しみと不安の気持ちが入り混じる複雑な気持ちで小学校へ向かいます。きっと年長組のみんなも同じ気持ちではないでしょうか。この絵本は「間」を大切に表現されており、ぞうくんの複雑な気持ちの変化がセリフがなくても細かな表情から読み取ることができます。文字は多くないため子どもたちが一人でゆっくり読むことができ、ぞうくんの気持ちと自分を重ねて共感したり、小学校への不安が楽しみや安心に変わったりと心に響く一冊になったら嬉しいです。
『すなばばば』
鈴木のりたけ 作 PHP研究所
(中川梨華先生のレビュー)
公園や幼稚園の園庭にもある砂場。お山を作ったりお料理をしたりと色んなことをして遊べる砂場。そんな砂場で遊んでいたら…。空から砂場がすなばばばばばばと降ってきて文字も埋まっちゃう。そこへすかばが出てきて一緒に文字を探したり、色々な砂場を見たりしていると~。はぐれた友だちとすなばったり。すぐにでも砂場で遊びたい!もっと遊びたい!と思えるような絵本となっています。大人が読んでもいつの間にか笑ってしまう絵本となっていますので、ぜひお子さんとご一緒に読んでいただけたらと思います。
『じゃんけんぽんのおともだち』
オノガワアサコ 作 岩崎書店
(高橋友佳先生のレビュー)
いつも仲良しのグーとチョキとパー。ある日、グーとチョキがけんかをしてしまいました。パーが仲直りするように言いますが、二人ともちっとも聞いてくれません。腹が立ったパーは「もっと気の合う素敵な友達」を探しに飛び出しました。そんなパーの前に現れるのは個性的な形をしたクセの強い様々なお友達ばかり。さあ、このあとパーは気の合うお友達を見つけることが出来るのでしょうか。リアルな手にユニークな表情のついた“キモカワ”なキャラクターたちが見所で、お子さんと一緒に手も動かしながら楽しめたり、最後にはほっこり心温まるお話となっているので、色々な楽しみ方が出来る一冊となっています。ぜひ手に取ってご覧ください。
『だがし屋のおっちゃんは おばちゃんなのか?』
多屋光孫 作 汐文館
(園長のレビュー)
駄菓子屋のおっちゃんは本当はおばちゃんです。名前はハルコと言います。だけどおっちゃんは体は女性ですが男性の心を持って生まれてきました。これまで絵本の世界ではほとんど取り上げられなかったいわゆるLGBTQのテーマを真正面から取り上げ、きわめて今日的な課題を子どもたちにもわかるよう丁寧に描き、心温まるエピソードとして教えてくれます。差別や偏見を少しでもなくし、みんなが互いに違いを認め合えるような社会にしていくためにも、このような絵本がこれからの時代には必要なのだと思います。
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さて、今回の先生方が選んだ絵本の紹介はいかがでしたか? 真人幼稚園の子ども達は本当に絵本が大好きです。元気いっぱい遊ぶときは遊び、思い切り体を動かす。一方で、集中して絵本を読んだり、何かを作ったり、友だちや先生の話に耳を傾けたり、そういったこともとても得意です。その静と動、集中と発散のバランスが子どもの成長にはとても重要なのだと思います。そのような意味においても、心と体を鍛えるために絵本はとても大切なツールです。そしてなにより、お気に入りの特別な一冊があるということは、子ども達にとって何物にも代えがたい宝物であり、生涯にわたりその子どもを支えてくれる(時に本当に勇気づけてくれる)、大切な財産になるはずです。ぜひこれらのレビューをご参考になさって、図書館や本屋さんに親子で足をお運び頂き、お子さんと自分だけのお気に入りの一冊を探してみてはいかがでしょう。書棚の片隅で絵本たちは皆さんに発見されるのを待っています。
それでは皆様、新年1月にまたお会いいたしましょう!
*【今日の一枚】今日22日昼過ぎの園庭です。積雪はおよそ30㎝くらい。