今、自衛隊の在り方を問う!

急ピッチで進行する南西シフト態勢、巡航ミサイルなどの導入、際限なく拡大する軍事費、そして、隊内で吹き荒れるパワハラ……

対中国「島嶼戦争」態勢を構築する「鎮西30演習」―「陸自幹部は『即応態勢は整う。後は政府がいかに早く事態レベルを決められるかだ』と公言!

2018年12月09日 | 自衛隊南西シフト
 急ピッチで始まった、西部方面隊の「鎮西30演習」による「島嶼戦争」態勢の構築


(「統合水陸両用作戦演習」で、南種子町沖合から発信した水陸両用車(AAV7)、沖は海自輸送艦「おおすみ」2018年10月22日)
#自衛隊 #南西シフト #沖縄 #宮古島 #石垣島 #奄美大島 #種子島

 陸自西部方面隊が軸になり、全国的「島嶼戦争」態勢を構築する「鎮西30演習」―今年11月中旬からの演習は、全国最大規模の約1万7千人、車両約4500台、航空機約65機が参加して九州、種子島、奄美大島、沖縄島などの琉球列島弧と、十文字原演習場(別府市など)と日出生台演習場(同県由布市など)で行われた。
 これらの演習では、「それぞれ『島』に見立て、鹿児島港から『島の港』に想定した小倉港(北九州市)までミサイル部隊を民間フェリーで運搬。陣地を築いて『敵』の侵攻に備えた」のだ(西日本新聞)。

 この「鎮西演習」の目的について、陸自幹部は公言する。

「(宮古島・奄美大島配備の)中SAMとSSMのミサイル部隊を配備する計画に、陸自幹部は『即応態勢は整う。後は政府がいかに早く事態レベルを決められるかだ』」と

 つまり、来年3月以降に開設する、宮古島・奄美大島(→石垣島・沖縄島)の対艦・対空ミサイルへの配備が、まさしく「有事への発動態勢」づくりであることを言明するのだ。
 
 そして、この「鎮西演習」と並行して10月15~24日までに行われた「統合水陸両用作戦」演習は、まさしく先島諸島への上陸演習として行われた。
 演習が 実施された場所は、「海自佐世保地区から種子島に至る海空域、同島周辺海空域及び同島から海自横須賀地区に至る海空域」とされているが、主要には種子島の南種子町の前之浜海浜公園で行われた(写真)。

 周知のように、マスメディアは、10月12日から中種子町(旧種子島空港)で実施された日米海兵隊の演習については報じているが、この南種子町での自衛隊の統合水陸両用演習については、まったく報道していない。しかも、この演習は、海自輸送艦「おおすみ」まで動員した「島嶼戦争」の上陸演習というすそまじい演習にもかかわらず、メディアは沈黙する。

 だが、以下の記事にあるように、西日本の地方のメディアは、率直である。この「鎮西30演習」、「統合水陸両用作戦演習」が、宮古島、奄美大島への来年3月の対艦・対空ミサイル部隊配置を前提とした、実戦演習である、としていることだ。

 自衛隊の急激に進行する南西シフト態勢下、宮古島・石垣島の新基地建設とともに、奄美大島ー種子島ー馬毛島においても、凄まじい軍事化進行している。この状況を今、全国の人々の力で食い止めない限り、琉球列島弧は、まさに島々全域の軍事化・要塞化が進むだろう。


(統合水陸両用作戦演習で南種子町に上陸した水陸両用車(AAV7))

(情報公開で出された自衛隊の「薩南諸島の軍事化)


(「鎮西30演習」で奄美大島の旧奄美空港に展開した陸自中SAM部隊)
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*陸自、離島防衛へ「布石」着々 九州・沖縄で大規模演習(11/21(水) 11:47配信 西日本新聞)

 「即応態勢」強化で抑止力強化

 陸上自衛隊が離島防衛の「布石」を着々と打っている。中国の海洋進出をにらみ、南西諸島に駐屯地を新設。「即応態勢」を強化し、抑止力の向上を狙う。24日まで約1カ月間、陸自西部方面隊(熊本市)が主体となって九州・沖縄各地で実施中の大規模演習「鎮西30」にも、その強い意思が反映されていた。陸上部隊が海を渡り離島に展開し、レーダーで「見えない敵」に対処する-。変革期の陸自の姿に迫った。

 今演習には全国最大規模の約1万7千人、車両約4500台、航空機約65機が参加。十文字原演習場(大分県別府市など)と日出生台演習場(同県由布市など)では一部をそれぞれ「島」に見立て、鹿児島港から「島の港」に想定した小倉港(北九州市)までミサイル部隊を民間フェリーで運搬。陣地を築いて「敵」の侵攻に備えた。

 15日午後、荒れ野が広がる十文字原演習場。顔を迷彩塗装した陸自隊員が「島」の山中に潜んでいた。近くの背の高い草木の陰には「03式中距離地対空誘導弾」(中SAM)。ヘリや戦闘機のほか、巡航ミサイルもレーダーで探知し、コンピューター制御で迎え撃つ「離島防衛の要」の一つだ。

 実は、もう一つの「要」が演習に先立つ10月中旬、健軍駐屯地(熊本市)で報道公開された。射程100キロ以上とされる「12式地対艦誘導弾」(SSM)。自前のレーダーに加え、海上、航空両自衛隊とも連携し、遠く離れた海域までにらみを利かせる。このSSMを空爆から守るのが、中SAMの「最大の役割」とさえ言われている。

 来春は鹿児島県奄美大島と沖縄県宮古島に新駐屯地を建設

 公開された15、16両日は、猛烈な艦砲射撃で援護された「敵」が優勢で「いかに生き残るか」という厳しい局面を想定。野外病院では医官らが次々に搬送されてくる重傷者の救命措置に追われていた。隊員は「けがが治れば前線に戻す。戦力維持は並大抵ではない」と説明した。

 九州本土から日本最西端の沖縄県与那国島まで距離約千キロ以上。従来、この広大な海域で陸自の拠点は沖縄本島だけ。16年の与那国島への沿岸監視隊設置を皮切りに、来春は鹿児島県奄美大島と沖縄県宮古島に新駐屯地を建設。今後は同県石垣島にも駐屯地を置く計画だ。

 「空白地帯」を埋め、中SAMとSSMのミサイル部隊を配備する計画に、陸自幹部は「即応態勢は整う。後は政府がいかに早く事態レベルを決められるかだ」と言う。だが、課題はある。日本版海兵隊とも言われる陸自「水陸機動団」を運ぶ輸送機オスプレイの佐賀空港配備や、石垣島への部隊配置には地元に反対や慎重論が根強く、丁寧な説明が欠かせない。

 陸自が描く「完成形」の実現はまだ見通せない。それでも、今年から南西諸島への即応態勢を担う「機動師団」に改編された第8師団の吉田圭秀師団長は演習の意義をこう表現し、国民の理解を求めた。「われわれは刀を一生懸命に研ぐが、それは抜かないため。抑止力を高めるためなのです」
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*垣間見た離島防衛の備え 「鎮西30」ルポ(朝日新聞九州版、2018年11月24日03時00分)

 陸上自衛隊で最大規模の演習「鎮西30」が24日まで、九州・沖縄各地で実施されている。海洋進出を活発化させる中国を念頭に、自衛隊は近年、南西地域の守り固めに心血を注ぐ。演習の現場で、陸自がめざす備えの形が垣間見えた。

 鎮西30は10月22日に始まり、西部方面隊(約3万人)を中心に約1万7千人・車両約4500両・ヘリなど約65機が参加している。陸自が報道機関に演習を公開した今月15、16の両日、陸上自衛隊日出生台(ひじうだい)演習場(大分県玖珠町など)と十文字原(じゅうもんじばる)演習場(同県別府市)に入った。

 初冬の高原はススキの枯れ草で黄金色に染まっていた。山々にいだかれた二つの演習場は、この時期「島」になる。離島をめぐる攻防が演習のシナリオだ。

 所々に、草木の葉を模した偽装…
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*対艦ミサイル演習を初公開 離島防衛の柱(朝日新聞九州版、2018年11月22日03時00分)

偽装網で隠される12式地対艦誘導弾=2018年11月21日午前7時24分、熊本県山都町の大矢野原演習場、田中久稔撮影
https://www.asahi.com/articles/ASLCP4JHNLCPTLVB003.html

 九州、沖縄の防衛を担う陸上自衛隊西部方面隊の最新装備、12式地対艦誘導弾(12SSM)の演習が21日、熊本県山都町の陸自大矢野原(おおやのはら)演習場で初めて報道公開された。日本に対する武力攻撃への対処を想定し、沿岸に近づく艦艇を迎え撃つ訓練を繰り返した。

 12SSMは陸上から発射する対艦ミサイルで、従来のミサイルより射程や精度が向上。訓練機関を除き全国で唯一、西部方面隊の第5地対艦ミサイル連隊(熊本市)に配備されている。南西諸島などの離島防衛の要となる装備の一つで、来年3月に駐屯地ができる鹿児島・奄美大島などにも配備される予定。

 演習は、陸自最大規模の実動演習「鎮西30」の一環で、艦艇による夜間の攻撃を想定して行われた。未明の午前1時過ぎ、大分・日出生台演習場にある本部からの命令を受け、大矢野原演習場に待機する発射機を積んだ車両が出動。ミサイルの入った筒を空に向け、洋上の艦艇に狙いを定める操作をした。鹿児島・宮崎県境の霧島演習場でも同様の演習をした。(田中久稔)
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*ミサイル部隊の演習、初公開 陸自西部方面隊、山都町で(熊本日日新聞、11月22日)(2018/11/22 08:0012/7 )
https://this.kiji.is/438111849471001697

 陸上自衛隊西部方面隊(総監部・熊本市)は21日、山都町の大矢野原演習場で、地上から敵艦船を攻撃する地対艦ミサイル部隊の「12式地対艦誘導弾」演習を報道陣に初めて公開した。

 九州各地で10月から実施している陸自の大規模演習「鎮西演習」の一環。同部隊の訓練は19~23日、県内外の4演習場であり、西部方面特科隊の約880人、車両約280台が参加し、指揮命令の伝達や隊員の基本動作を確認する。

 21日の大矢野原演習場には、沿岸部に敵艦船が接近したとの想定で、第5地対艦ミサイル連隊(同市)が展開。旧来型より射程が長く命中精度が向上した最新鋭の同誘導弾は、同連隊に国内で唯一配備されている。隊員らは未明から明け方にかけ、ミサイルを車両に装塡[そうてん]し、発射する直前までの動作を計3回繰り返した。

 地対艦ミサイル連隊は全国5カ所に編成。南西諸島の防衛力強化のため、来年3月末には奄美大島(鹿児島県)と宮古島(沖縄県)に駐・分屯地を開設予定で、第5連隊指揮下の部隊を配備する方針。西部方面総監部広報室は「南西地域の防衛の『空白地帯』を埋める抑止力の要の部隊。訓練を通して対処能力をさらに向上させていく」としている。(前田晃志)
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自衛隊の南西シフト全体の詳細については拙著を参照
『自衛隊の南西シフト―戦慄の対中国・日米共同作戦の実態』(社会批評社)、リンクで同書のプロローグが読めます。
https://hanmoto.tameshiyo.me/9784907127251