設定
この作品は東野圭吾『名探偵の掟』の発展版ともいえる作品です。『名探偵の掟』では、推理小説におけるお約束の構造を破壊することがテーマですが、この作品では小説のお約束をブチ壊しています。
小説のお約束とは例えば
・山場は詳細に書く
・筋と関係ないところは省略する
・事件解決には主人公が関わる
である。改めて書くのが馬鹿馬鹿しくなるほど当たり前のことですが、われわれはそれだけ小説のお約束にがんじがらめになっているということです。
といっても、このお約束があるからこそ小説が成り立つわけです。筋と関係ないことまで書いていては、何の話かはわかりません。関係のないところまで書いていては、煩わしくなってしまいます。山場に主人公が登場しなければ面白くありません。(そもそもそれでは主人公とはいえませんよね。)
簡単に言ってしまえば、主人公の妻と娘が誘拐され、息子とともに助けに行くという単純な話です。しかしこの作品では1行1分(だったかな?)と決められています。
冒頭で、家に妻がいないと気づくまでも、玄関の様子、つけたテレビのことといった筋に関係のないことまで詳細に書かれています。「誘拐事件が起きた」としばらくわかりません。
車での移動、途中での食事も詳細に書かれています。
本来であれば、例えばミステリであれば解決の手掛かりだけを読者に示します。でも実際ではそうではないわけです。重要な事項も余計なものもごっちゃになって横たわっています。
実は、どうでもいう背景も舞台になりうるというのが作者の意図かもしれません。
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