石田衣良の短編集です。作品の前にどのように書いたか、締め切り前の苦しみとともに(?)述べられていて、半分エッセイのようでもあり、興味深い作品です。例えば『ナンバーズ』では母の死について、『レイン、レイン、レイン』では子供の頃から雨がすきだったこと、『地の精』では土地を購入したことがモチーフとなっています。
『完璧な砂時計』
タイムキーパーという係りがテレビにはあるそうです。この作品の主人公はアナウンサーですが、時間に偏執的です。ですが、神経質な人という感じはなく、作品の雰囲気はファンタジーのように感じました。
あること、この場合は時間の正確さ、について異常までのこだわりを持っていることは魔法を持っているのに等しいではないのでしょうか。
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『ウエイトレスの天才』
客が何を注文したか全て覚えているウェイトレス。こういうのも「職人技」といえるでしょう。人々に広く知られることはなくとも、このような職人はどこにでもいるものなのでしょう。このような人は本当に尊敬できます。このような人とお話してみたいものです。
食べるのが大好きな彼女。男性の前で小食ぶるより、より魅力的に思えます。
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『書棚と旅する男』
仕事をやめ夢見ていた悠々自適の生活を始めた男。彼は船旅を楽しむことにしました。そこで一生を掛けて自分にとって最良の一冊を探すために本を読んでいる男性と出会います。自分に合った本を探す―このことは本好きなら共感できるでしょう。しかし彼はその一冊の候補をどんどん絞り、それ以外の本は捨てていくのです。私はなるべく本を捨てたくないので、これは真似できません。
自分の書棚の本を増やしていくのと一冊に絞っていく。どちらが幸福な読書生活なのでしょう。