古書肆雨柳堂

小説の感想。芥川龍之介、泉鏡花、中島敦、江戸川乱歩、京極夏彦、石田衣良、ブラッドベリ、アシモフ、ディック

森博嗣『すべてがFになる』

2005-12-11 19:32:16 | ミステリ

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 主人公は犀川助教授西之園萌絵です。犀川先生はN大工学部の建築学科の助教授であり、西之園萌絵はそこの学生です。西之園の父が犀川の恩師であることから二人は懇意にしており、西之園はよく犀川の研究室に行き、雑談をする仲です。この雑談が作品の妙です。

二人とも探偵役です。二人は同じように事件現場に居合わせますが、その姿勢はことなります。事件に対して西之園は役者であり、犀川は観客という趣があります。場合によっては犀川は事件に関わらず、西之園から話を聞いた情報だけで的確に推理することもあります。
 二人のキャラクターも際立っています。西之園はお嬢様です。その生活ぶり、世間知らずぶりには驚かされます。犀川は学者然としています。彼の興味の中心は研究であり、一般的なことには無関心。例えばテレビを見ない、新聞も読みません。西之園のお嬢様ぶりに劣らず驚かされます。
 犀川はコンピューターに造詣が深く、研究でも用いています。作品ではコンピューターがひとつの大きなテーマになっています。当時ではまだパソコン通信でメールを行うのは珍しかったでしょう。それだけではなく、ネットワークが人間社会にどのように貢献できるかというメッセージが読み取れます。パソコンの技術は今から見ると少し時代遅れの感がぬぐえませんが、そのテーマ性は遜色ありません。

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粗筋

 夏休み、犀川と西之園たちはゼミ旅行で妃真加島にキャンプをしにやってきました。この島には真賀田研究所の他は何もありません。ここには天才プログラマ真賀田四季がいます。彼女は幼少の頃から天才の名を欲しいままにしました。またそれ以上に14歳の時に両親を殺害したことが彼女を有名にしました。それ以来彼女は表舞台には出てません。彼女はこの研究所の地下部屋におり、部屋の外に出ることも、外部と連絡することも不可能です。

ここの研究施設は一風変わっています。各個人に部屋が割り当てられおり、連絡はパソコンで行い、実際に人と人が顔を合わせることはないのです。そんな場所で、四季博士が殺されるという事件がおこりました。この場に居合わせた犀川と萌絵が推理をおこなっていきます・・・



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