新しいホテルやレストラン、カフェがひしめく西ベイルートの中心ハムラ。
その一角にあまり目立たないアラブレストランを見つけました。
鉄製の急な階段をのぼった2階にある小さくて古い店です。
ここはイブラヒムおじいさんがたった一人で切り盛りしています。
おじいさんは75歳。
レバノン南部のシーア派地域の出身です。
自慢の料理はカバブ。
カバブは羊やチキンを串に刺して味をつけて焼く、ちょうど日本の焼き鳥のようなアラブではとてもポピュラーな料理です。
注文を受けてから、ゆっくりと肉を串に刺し始めました。
おじいさんは足が少し悪いので、ときどき椅子に座って作業します。
この店を開いたのは77年。
75年にレバノン内戦が始まって2年目です。
90年に内戦が終わるまで戦争中もずっと店は続けてきたそうです。
あまりきれいとはいえない古びた店ですが、立派な大きな釜が自慢です。
炭火で焼くので、肉は柔らかく、ジューシーです。
狭い厨房はものすごい暑さです。
おじいさんも汗びっしょりですが、かまわず真剣な顔で焼き続けます。
食事の最後にはテーブルまで大きなスイカを持ってきて切ってくれました。
「わしには子供が14人いて、その中のひとりは、夜遅くにここに来て、ときどき手伝ってくれるんだよ」
とうれしそうに話しました。