① 01年9月の米国に対する同時多発テロ事件は世界を震撼させた。わが党は、その時、この残虐非道なテロの撲滅に国際社会が協力することは当然であるが、それは、テロは重大な犯罪であるから、その首謀者を突き止め法の下で裁くために全力を挙げるべきであり、またテロの原因の解消に努めるべきであって、軍事報復はさらに「報復テロの連鎖」を生み出す他ないのだから、軍事力での対処は逆効果だと主張した。
② だが、米国はこれを「新たな戦争」と位置付け、国際テロ組織が潜伏すると見られるアフガニスタンに対して「報復戦争」を開始した。
これは、今日の国際社会が2度の世界大戦の尊い犠牲を教訓に築き上げてきた「戦争禁止」を基礎とする国際秩序を根底から崩壊させ、国家による「戦争を行う権利」を復活させる愚行であり、また1970年の国連総会の「武力行使を伴う復仇行為」禁止決議をも踏みにじるものであった。
③ 当時の小泉内閣は、日米同盟重視を掲げてこの米国の暴挙にただただ追従し、憲法の規定や戦後形成されてきた「専守防衛」など日本の安全保障政策をまったく顧みず、米軍を後方支援する「テロ対策特別措置法」を強行した。小泉首相は、「(憲法との関係については)確かに曖昧さは認める。法律的な一貫性、明確性を問われれば答弁に窮してしまう」としつつも、強行採決したのである。これは、「テロ撲滅」の世論に便乗して「戦争のできる国」へと踏み出すものであった。当然、わが党はこれに断固反対した。
なお、政府はこの「報復戦争」に国連安保理の決議があると強弁するが、それはテロ直後に国連安保理が「行為の実行者、組織者及び支援者を援助し、支持し又はかくまう者は、その責任が問われる」として、国連加盟国に協力を要請したもので、決して「報復戦争」を容認したものではない。
④ この「報復戦争」は、当時、大干ばつによる飢えと寒波に打ち震えるアフガニスタンの無辜の市民にさらに爆撃の恐怖の追い打ちをかけ、何百万の難民を発生させた。そしてこの6年間、米国へのテロを何十倍する犠牲者を生み出した。私たちの指摘どおり、軍事報復は「新たな憎悪と報復テロの連鎖」を引き起こし、テロ撲滅どころか、アフガニスタンにおいて「反政府勢力は著しい増加を見せ」(07年3月国連事務総長報告)、悪化の一途である。
日本は、米艦船などへの給油でこれに加担してきたのである。
⑤ 今臨時国会の最大の焦点は、このテロ特措法の延長問題である。わが党は、次のような理由から、この延長を断固阻止する決意である。
まず第1に、米国などの「報復戦争」はアフガニスタン情勢を一段と混迷させた。国民に納得いく説明もないままテロ特措法を4度も延長して米国に追従することはもう許されない。10月中で打ち切って、改めて人道・復興支援を中心とした対策全体を再検討すべきである。
第2に、アフガニスタンのテロ掃討に名を借りて、イラク攻撃の米艦船などへ給油していた可能性が高いが、そうであれば明らかに戦争に加担する活動である。これについても国民に何ら説明がなされていない。
第3に、国家をもたないテロ組織に対しては軍事力がもはや意味を持たないことが改めて証明された。テロ撲滅に即効薬はなく、テロを生み出す原因である貧困や教育の欠如、経済格差、差別、専制と弾圧、大国の専横などの克服に向けて、国際的な粘り強い対策・協力が必要である。「戦争放棄」を憲法で宣言する日本こそが、こうした民生面での協力の先頭に立つべきであり、遅いようでもこのような国際的努力こそが報復の連鎖を断ち切る有効な方策である。
⑥ 現在、わが国の自衛隊はアジアで最も近代的な装備を有する軍隊となり、軍事費は世界で第5位の軍事大国である。それが、従来の「専守防衛」の国是から踏み出し、海外派兵装備の比重を高めて長距離輸送能力を持つに至り、そしてテロ特措法で自衛隊の艦船が中東へ派遣されてきた。このように、地球の裏側での自衛隊の活動も「防衛」と言うのであれば、その範囲は際限がなくなる。だから小泉元首相は「…答弁に窮してしまう」と言わざるを得なかったのである。
不安定な中東はこれからさらに緊張を増しそうな情勢にある。その時、米国の強硬路線に追従する外交では、米国の戦争に巻き込まれる危険性が非常に高くなる。中東の混乱を武力で抑制する道ではなく、平和的に解決する国際協力が不可欠である。
日本は、平和憲法を持ち、そして世界最大のODA(政府開発援助)を行って信頼を勝ち得てきた国として、時には米国と異なっても、日本の果たせる国際貢献の道を探るべきである。それこそが、「平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思う」との憲法前文に示された国民の決意であり、それを遵守すべき政府の外交姿勢でなければならない。