日本野球機構(NPB)が日本プロ野球選手会との事務折衝で、統一球を今季から変更していたことを認めたというニュースが話題になっています。
規格そのものを変えたわけではなく、昨季までの統一球に反発係数の下限を下回るボールが目立ったため、規格内に収まるように修正を指示したとの説明で、「本当に」この話通りだとすれば、別におかしなことではありませんが、この話を「隠していた」ことからも、額面通りに受け取ることは出来ません。
2011年に統一球を導入し、ホームランが激減し、投手の防御率がものすごく良くなりました。それでも、西武の中村選手は40本以上ホームランを打ちましたから、実力がある選手はしっかり打てることを証明しました。逆に言えば、実力がある選手が少なかったということも言えます。
本当に面白い試合というのは大味な打撃戦ではなく、良い投手との息詰まる勝負の末に打者が何とか攻略しようとする試合だと思います。古くなりますが、長嶋対村山、王対江夏など、簡単に打てないからこそ、打った時の価値があったと思います。あの頃は、本塁打を10本以上打つ選手もそんなに多くはありませんでした。
しかし、単純に見ていて面白いのは打撃戦です。「単純に」というのは、あまり考えずに野球を見るということであり、そういう観客、ファンが球団の観客動員に影響するのも事実だろうと思います。恐らくそんな思惑もあって、投手側に有利に振れ過ぎた統一球を戻そうとしたのではないかと推測されます。
しかし、問題なのは、それを「隠して」いたという事実です。昨年と今年では、本塁打数が同時期で比較して1.5倍になっているそうです。これを見ると「記録」への信頼性が大きく揺らぎます。記録って恣意的に「作れる」ものだと思われても仕方がありません。
確かに統一球は打者に不利に振れ過ぎたように思いますが、逆に考えれば、打者を鍛えることにつながり、松井秀喜がアメリカにわたってから不在だった本当のホームランバッターを育てる機会になったかもしれません。その方が結果的に、プロ野球の人気を高めることになったかもしれません。いずにせよ、今後は秘密主義ではなく、オープンに物事を運ぶことが必要ですね。
陸上界では今、高校3年生の桐生と、ロンドン五輪準決勝進出の山縣(慶大)が、10秒の壁を破るのではないかと大いに期待されています。これまで10秒の壁を破り9秒台で走ったのは、84人しかいないそうですが、そのうち82人が黒人で、残りは豪先住民のアボリジニとの混血の豪選手と2~3年前に9秒台を出したフランスの白人選手です。それくらいの大きな壁だということです。
伊東浩司がアジア大会で10秒00を出してから15年近く経っていますが、未だに日本記録は更新されていません。それは、これがただの日本記録ではなく、10秒の壁だからです。誰かが10秒の壁を破れば、そう時間をおかず複数の9秒台選手が誕生するだろうと言われているそうです。それくらいこの壁は大きいわけです。しかし、大きいからこそ、時間はかかっても桐生、山縣という選手たちを育てたのでしょう。
統一球も「記録を作る」のではなく、「選手を作る」ために活用すべきでしょうね。