ひねもすのたりのたり 朝ドラ・ちょこ三昧

 
━ 15分のお楽しみ ━
 

『都の風』(51)

2007-11-28 07:54:03 | ★’07(本’86) 37『都の風』
脚本:重森孝子
音楽:中村滋延
語り:藤田弓子

   出 演

悠   加納みゆき:京都の繊維問屋「竹田屋」の三女、奈良の旅館「吉野屋」で働く
雄一郎 村上弘明 :毎朝新聞の社会部記者、「吉野屋」の息子で「おたふく」の常連
喜一  桂 小文枝:雄一郎の父
秋子  三木美千枝 :喜一の浮気相手の連れ子、吉野家の養女となる
青年  藤野 亨 :「吉野屋」の宿泊客、海軍への入隊前に春日大社にお参りに来た

      アクタープロ
      松竹芸能

婦人    富田恵子 :「吉野屋」の宿泊客、息子と春日大社にお参りに
弥一郎 小栗一也 :雄一郎の祖父、お常の実父
お常  高森和子 :奈良の旅館「吉野屋」の女将、雄一郎の母

・‥…━━━★・‥…━━━★・‥…━━━★

お常は、雄一郎にすぐに電話をした。 弥一郎、悠、喜一も電話のそばにいる。

動揺しているお常は「雄一郎」と言ったきり、声が出ない。
悠に代わったと知らない雄一郎は
「どうしたんだ、もしかして奈良の部隊が玉砕したことが悠さんに?」と言ってしまう。
「どういうことですか?」と悠。
「‥‥ あぁ悠さん。大丈夫だ、智太郎くんは大丈夫だ。
 確証はないんだ。ガムの守備隊が苦戦してるらしいんだ」と雄一郎は言った。

一番冷静な、弥一郎が電話をとり
「雄一郎、お前に召集令状が来た。大阪の部隊。二十日午前八時までに入隊のこと!
 身元の整理を済ませて直ぐに帰って来い! 雄、聞いとるのか?」
と伝える。
一瞬、言葉を失った雄一郎だったが、「わかりました」と答える。

悠は今すぐ雄一郎に会って智太郎の安否を確かめたいと思いました。しかし今はそうるすべきでないことを悠は知っていました ‥‥


いたたまれなくなった喜一は、工場へ行くと出かけ、秋子も子どもの相手より工場が楽と
出かけてしまった。

「大事な時になるとすぐ逃げ出しおる。ほんまに弱った奴じゃ」

お常は、涙をこぼした。
「新聞社でお国のために働いているから、召集令状は来ないと思ったのに‥
 奈良の部隊が玉砕したっちゅうから、もうここでは召集されないと思ったのに‥
 神様はお目こぼししてくれへんかったか‥‥」

そんなお常を弥一郎が一喝する。

「お常お前らしくないぞ。奈良の部隊は全滅なんかしておらん」
「大丈夫です、大丈夫やと智太郎さんも言うてはりました」と悠

「お参りに行って来ます」と玄関から声がした

悠と、涙を拭いて、笑顔をつくったお常が出て行く。
海軍の息子とその母だった
「申し訳ありません。ただいま新聞をお持ちしようと思っておりましたのに」
「いえ、もう時間がありません。母を頼みます」
「行ってらっしゃいませ」と悠
「わたくしどももご無事をお祈りしております。
 わたくしも散歩がてら私もご一緒させていただきます」
「よく存じてますから」
「いえ息子のために」とお常は言った


出かけた後、弥一郎は悠に新聞を見せようと渡したが、悠は受け取らない。
「何があっても智太郎さんは元気で帰って来はります。私信じてます。
 いろいろ気ぃをつこうていただいてありがとうございました。
 私、雄一郎さんの書かはった記事は信用しません」

夜になり雄一郎が帰ってきた。

「おかえりやす」
「‥‥ただいま」悠をせつなそうに見る雄一郎

雄一郎は、まず蓄音機に近づき「お袋は?」と訊いた
「お台所です。雄一郎さんの晩ご飯作ってはります」
「ぅん。食事は済ませてきたと言ってくれ」

弥一郎が奥から出てきたが、何も言わず部屋へ行く雄一郎。
弥一郎は雄一郎の部屋に持って行く、気がすむまで聴かせてやりたいと蓄音機を運ぼうとする。悠は手伝った。

お常は「心からおめでとうと言えるまで顔が見られへんのや」と
悠に夕飯とお酒を持って行くように頼む。
「あたしはあの軍人さんのお母さんみたいにはなられしません。
 春日大社の御本殿の前で、白足袋になって跪きはって、
 この子をお国のために捧げます、ハッキリ言わはったんや」

ベートーベンが聞こえてくる

「二人で奈良駅へ息子さん送って行った時もニッコリ笑って、サヨナラ‥‥
 あんな笑顔で出征する息子にサイナラなんて‥‥あたしには言えません」

雄一郎の部屋で一緒にベートーベンを聴く弥一郎だったが、雄一郎は途中で針を止めた。

悠が「お二人でごゆっくり」と持ってきたお酒を見て
「まだ息子の顔が見れんようだな。お常も建て前と本音で戦っておる」

そして「お常の代わりにお酌してやってくれんか」と頼む。
悠のお酌を受ける雄一郎。

「ありがとう。お袋よりは悠さんの方がいい」

「雄、悠さんはな新聞を見ようともせんかった。お前の書いた記事は信用せんらしい。
 はっはっはっ」
「すみません。
 けど大阪のおたふくにいたらビフテキ食べさしてもらえるとこだったのに」
「ん?」
「おたふくの女将さん、いつも言ってはりました。
 雄一郎の書かはる記事が新聞に出たらこんなぶ厚いビフテキ食べさしたるって」
「あっはっは、そうだったな~。
 さすがの女将さんも今は雑炊しか食わしてくれないだろうな」

「よしっ、じゃワシがチキンテキを食わしてやる」
「それはありがたい」
「その前にな、明日二人で春日さんにお参りに行って来い」
「いやです。春日さんはいくさの神様ですやろ?
 今日のお客さんみたいな気持ちには私はなれません」
「今日のお客って?」
「海軍の特別任務に就きたいって言ってはる息子さんとお母さんです」

酒を飲む雄一郎

「雄一郎さん、特別任務って言うても死にに行くのとは違いますね?」
「同じ戦争に行くんなら特別任務に就く方が男らしいのは確かだ。
 たった一人大空を飛び、敵の軍艦に体当たり」
「‥‥体当たり‥‥」
「ホントにそんな時が来たら、いや多分来る筈だ」

「悠さんなぁ。
 春日大社というのは本来戦の神様なんかじゃないんじゃ。



 それが証拠に、よばしらの神様の神殿の文様を見ればいい。
 戦には矛と盾が必要だ。戦の神様なら矛は上を向いている筈だ。
 それが春日さんのは下を向いている。本来は平和の神様なんじゃ。
 春日さんの灯籠に灯が入るのが節分と八月十五日。春日さんのまんとうろうじゃ。
 千年も昔から平和を願いながら死んで行った人びとの魂を供養する日じゃ。
 昔、唐の国へ旅をするのは生きて帰れないと言われ、勅使に任命された者は死を宣告されるのと同じ。
 それでも日本の国の為に、命をかけて旅をする。
 その平和の使者の無事を祈って春日さんにお参りしたそうや」



夜の春日さんにお参りする悠と雄一郎

「何でお祈りしはらへんのですか」
「どうせ死ぬのなら平和の使者として死にたかった」
「雄一郎さん‥‥」
「いや、みんな平和の使者のつもりで戦争に行くんだと、自分を納得させているのかもしれないな。
 いつか智太郎君に言ったことがある。
 僕は好きな人がいても待っていてくれなんて言えないってね。
 言わずにはおれない気持ちが今になってわかる」

「言うてあげて下さい。その人に。きっと喜ばはると思います」

「‥‥」雄一郎は小さく笑って歩き出した


 悠は雄一郎の言葉にできない思いを理解するにはまだ若すぎました
(ナレーション)



(つづく)




『ちりとてちん』(51)

2007-11-28 07:49:59 | ’07 77 『ちりとてちん』
作  :藤本有紀
音楽 :佐橋俊彦
テーマ曲ピアノ演奏:松下奈緒

語り :上沼恵美子

   出 演

和田喜代美  貫地谷しほり
緒方奈津子  原 沙知絵:塗箸の取材に来た、フリーライター
徒然亭草々  青木崇高 :落語家、徒然亭草若の二番弟子
熊五郎    木村祐一 :酒場「寝床」の店主
磯七      松尾貴史 :散髪店(磯村屋)の店主。酒場「寝床」の常連
菊江      キムラ緑子:「菊江仏壇店」の女主人。酒場「寝床」の常連

和田清海   佐藤めぐみ:喜代美と同姓同名の同級生 エーコ。
               大阪の大学に入学、お天気おねえさんになる
徒然亭小草若 茂山宗彦 :タレント落語家、徒然亭草若の実の息子、草若の三番弟子
徒然亭草原  桂 吉弥 :落語家、徒然亭草若の一番弟子。
徒然亭四草  加藤虎ノ介:落語家、徒然亭草若の四番弟子。中国料理店「延陽伯」でバイト中?
野口順子    宮嶋麻衣 :喜代美の同級生、高校卒業後は家業の「魚屋食堂」を手伝う
咲        田実陽子 :酒場「寝床」の店主・熊五郎の妻
野口幸助    久ヶ沢 徹 :「魚屋食堂」の店主、順子の父。
野口松江    松永玲子 :「魚屋食堂」を切り盛りする、順子の母

      福井県小浜市のみなさん
      劇団東俳

和田小梅   江波杏子:喜代美の祖母、もと芸者
徒然亭草若 渡瀬恒彦:元天才落語家。徒然亭一門会の後、高座復帰を宣言


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清海(佐藤めぐみ)が華やかなスポットライトを浴びている姿を見て、喜代美(貫地谷しほり)は草若(渡瀬恒彦)に「落語のけいこをしてほしい」と訴えるが「さしたってるやないか」と相手にしてもらえない。焦る喜代美は心配して訪ねてきた清海に八つ当たりして、追い返してしまう。落ち込む喜代美の姿を見て、草若は温かいお茶を差し出し、話を始める。





順ちゃんとこで小梅さんが言った

  「仰山笑て生きていこう思うたら、
   ポ~ンと思い切りよう飛ばなあかんのかも知れませんな」

って ‥、飛ぶってなんだろうな~。何の比喩かな~