我家のワン達~サクムク日記

さくらとムックンの日記です

子 鳩

2007-05-24 06:45:48 | できごと・お話し
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もしかしたら新しいワンコの預かりを始めるかもしれないと考え、さくらとムックンと一緒のベッドでウトウトしていたら、何故か幼い頃に助けた子鳩のことを思い出しました。ムク父が小学5年生だったときの出来事です。

ある時、生家の裏畑に植わっていた無花果(イチジク)の木の下で子鳩がバタバタしていました。
どうやら羽を傷めたようで、飛び立つことが出来ない様子でした。
私が近付いたことで更にばたついています。
かわいそうに思い、猫に襲われたら一溜まりもないないのと、無理に動かすと傷に障るので段ボール箱を工夫して中に入れ、少し暗い環境で休ませました。
鳥を飼っている近所の友達に見せると大した傷ではなくて、数日間も羽を使えないようにして傷薬を塗っておけば直るよと教えて貰い、その通りにしました。
同じ友達に子鳩のゴハンを教えて貰い、自転車で店に買いに行き、糞の世話を兼ねて一日3~4回、段ボールの巣箱を掃除し、その度に子鳩を抱き、何かを語りかけていたと思います。
ただ、母からは「その鳩の親は必死に子供を捜しているよ。この家で飼うのはいいけれど、いつでも飛び立てるようにしてあげなきゃだめだよ。もし、お母さんが迎えに来たら必ず放すんだよ。それが一番幸せなんだから」と幾度も言われていました。
傷を治すために、傷ついた羽は身体に紐で縛り付けていましたが、3日目頃からは私の部屋の中を自由に動き回らせていました。
私と鳩が部屋で戯れていると、母は繰り返して同じことを言い「余り一緒にいると別れるときに寂しくなるよ」とも言いました。
捕獲して7日目だったと思いますが(捕獲したのは日曜日で、同じ曜日だったと記憶しています)紐を取り除いて、どこまで回復しているのかを試そうとして子鳩を抱えて裏畑に出、足と身体を手で押さえながらも、羽が自由に動かせるようにすると、とても元気にばたつかせ、飛び立とうとしています。
あぁ、傷は治ったのだなぁと思ってもう一度抱え直すと、いつの間にか、イチジクの木の枝に鳩が留り、こちらを見ながらクルッククゥーと繰り返し鳴いています。
子鳩も同じように鳴いて、羽をばたつかせています。
直感的に親が迎えに来たのだと思いました。
でも、ようやく私の部屋で遊び始めた子鳩を放すことが寂しくなってしまいました。
気が付くと、洗濯物を干し終えた母が私の横に来て、イチジクの木に留まっている鳩を見ながら言いました。
「シゲちゃん、お母さんが迎えに来たんだよ。約束なんだから放してあげなきゃいけない。鳩さんはそれが一番幸せなんだから」。
なかなか子鳩を放さない私の手から鳩を取り上げようとした母の手を振り払い、「約束した通りに放すよ」と泣きながら言い、一度だけ子鳩を胸に抱いてからイチジクの木に向かって、鳩を送り出すように放ちました。
子鳩はそのまま親鳩のもとに向かい、親鳩は枝に留まった子鳩の頭を一二度突くと私の方を見つめ、直ぐに一緒に飛び立ちました。
泣きながら見ていた私と、私を横から抱いてくれた母の頭上で鳩たちが二度ほど旋回すると青空を駆け上がり、見えなくなってしまいました。
母に抱かれて泣きながら青空を見上げていた私に母が言いました。
「動物の親は子を大切に思うし、子は親を忘れない。お前は良いことをしたね」
幼い頃の動物との想い出はチーと云う雌の秋田犬と、この子鳩の想い出が鮮明に甦ります。
多分、小動物に関する私の原体験なのでしょう。
脚色はなく、そのままをお伝えしたつもりです。
何を言いたかったのかと云えば、今の子供やその親たちの、小動物に対する感性は本当に育まれているのだろうか、と云うことです。

ムク父は1953年生まれです。
新潟県の、当時は直江津市(今の上越市)で生まれ、育ちました。
なぜだか分かりませんが、当時の父や母は動物に対する愛情が深くて、少しでも犬や猫にイタズラをすると平手が飛び、必ず言われました。
「お前が犬なら、お前が猫なら、同じことをされたいか」
私は泣きながら首を振り「されたくない」と言うと、次には必ず抱きしめてくれて「優しくしなきゃダメだ」と言うのでした。
小動物に対して優しく接することの意味はこの時に育むことが出来たと思うのですが、今の子達は、特に都市部の子達はどうなのかと、余計な心配をしてしまうこの頃です。
何故なら、犬や猫への虐待や、放置を基とした悲惨な事件が多過ぎますね。
こういった事件は少なからず幼児体験が大きく影響していると思うのですが、接する機会の少ないことと併せ、気を揉んでしまうのです。
幼児期に小動物と接することは、出来れば一緒に暮らすことは心を豊かにし、或いは家族として大切に暮らしていた動物が死ぬということは辛いけれどとても大切な体験が宿り、延いては人間の尊厳についても大切な影響を残すと思うのです。
R指定を受けそうなゲームばかりしていたり、家族や知人との会話の少ない生活ばかりでは心の温かみを知ることが少なく、人との繋がりの大切さを忘れて、否、覚えずに年齢を重ねてゆくような危うさを心配してしまいます。

昔のことを思い出していたらムックンが「ねぇ、オヤツはまだかなぁ~」と言いたげにキュンキュンと声を上げ、さくらは私を見上げながら左肩の顎を乗せてきました。
私は仕方なく?乾燥した鶏のササミをワンコ達に与えます。
バリバリと音を立て、あっと言う間に平らげたワンコ達は「もう少しくれないかなぁ~」と言いたげにこちらを覗き込みます。
私はワンコ達に背中を向けて横になり、寝ようとします。
さくらとムックンは仕方なく、いつもの場所で丸くなり、寝始めました。
いつもの、幸せな夜が訪れました。