変形性膝関節症(knee osteoarthritis, KOA)に対する薬物療法としては、NSAIDの外用薬、NSAIDsやCOX2 inhibitorの内服薬、デュロキセチン(SNRI)、ステロイド関節注射に加えてヒアルロン酸の関節注射(IAHA)が日本ではしばしば行われています。IAHAについては最新のOARSIガイドラインでは推奨していますが、ガイドラインによっては推奨していないものもあり、必ずしも評価は一定していません。この論文は生化学工業が開発したDicrofenacとHAを共有結合させた合剤(DF-HA)のKOAに対する有効性、安全性を検証した第3相臨床試験(RCT)で、筆頭著者は名古屋大学の西田佳弘先生です。
KL grade II, IIIのKOA患者に対して、プラセボあるいはDF-HAを4週ごとに6回投与しました。DF-HAの方が粘稠度が高いので、投与者は有効性、安全性の評価には関与しないことで盲検性を担保しています。Primary outcomeは24週後のWOMAC pain sybscire (VAS)で、12週以降のベースラインからの平均変化をprimary endpointとしています。Secondary outcomeとしてはその他のWOMAC index、50歩歩行時のpain VAS、11-point NRSによる日常での疼痛、SF-36、EQ-5D、アセトアミノフェン使用量 etc.などです。
(結果)440名の患者をそれぞれ220名ずつプラセボ群、DF-HA群に割り付けました。早期脱落例をのぞいたfull analysis setは438名(プラセボ 220名、DF-HA 218名)でした。12週でのWOMAC pain subscoreの変化(最小二乗平均)は、それぞれ-17.1 mm, -23.2 mmで両群の差は-6.1 mm [95% CI: -9.4 to -2.8, p<0.001]とDF-IA群で有意に良好な結果でした。投与後1週目から有意な改善が見られ、有意差はないものの効果は24週後まで持続しました。SF-36のmental component summary score, role/social component summary scale以外のsecondary outcomeについてもDF-IA群jで有意な改善が見られました。治療下で発生したsevereな有害事象(treatment-emergent adverse event , TEAE)は両群とも見られず、serious TEAEはそれぞれ1名(0.5%)、5名(2.3%)でした。プラセボ群では悪心・嘔吐が1名、DF-HA群のserious TEAEとしては、アナフィラキシーショック、アナフィラキシー反応、自律神経発作、不安定狭心症、斜視手術でいずれも重度のものではなく、全体としてはTEAE発生に群間の違いはなかったと結論しています。画像上のKOA悪化が見られた症例についても群間差はありませんでした。
ということで、DF-HAの有効性がRCTで示されたということの意義は大きく、今後の治療薬として有望と考えられます。気になる点としては、対照はあくまでプラセボであって、HAの比較ではない点で、DFとの合剤という点がどの程度有効性に関与しているのかについては今後の検討が必要かもしれません。
Nishida Y et al., Efficacy and safety of diclofenac-hyaluronate conjugate (diclofenac etalhyaluronate) for knee osteoarthritis: a randomized phase 3 trial in Japan. Arthritis Rheumatol. 2021 Mar 22. doi: 10.1002/art.41725.