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じゃがブログ ~さいとう小児科~

じゃが院長のつれづれ日誌をメインに、趣味(合唱・囲碁・絵)や道楽(温泉・ラーメン・酒)にまつわるエッセーを掲載。

機械(奇怪)なる「最後のお願い」

2016年03月15日 | ◎囲碁の道

あれよと言う間に、コンピューターが3連勝してしまいました。二日連続で対局し中一日で再び対局という、気持ちを立て直す暇を与えない日程は、「心ある」ニンゲン棋士にとってキビシイ条件ではなかったかと思います。対するコンピューターは、その3連勝した対局すら次への肥やしになっており、元より疲れを知らないだけでなく、勝利に浮かれることもありません。

あ~、このままニンゲンの5連敗で終わってしまうのかなぁ~、と荒涼とした気分に襲われました。自動車が発明されたからといってヒトが走ることを止めてしまったわけではない、というのも分かるのですが・・・やっぱり、人間の持つチカラに夢を託したい。せめて一矢報いてほしいと思いました。

そして、3連敗の翌日。既定のとおりとはいえ、イ・セドル九段にとってはまことにキビシイ第4戦が始まりました。交互に先番を打つ決まりですから、今回はコンピューター「AlphaGo」の黒番(先手)です。

途中過程の手の善悪などは私に論ずる資格はありませんので省略しますが、中盤の白(イ九段)の78手目が本局の流れを変える「鬼手」だったそうです。「妙手」でも「好手」でもいいのですが、この一手はそれまで蓄積された膨大な対局データから最善の対応を選択するコンピューターの着手に乱れを生じさせました。AlphaGoが明らかに混乱したのです。

不思議な現象が起こりました。それまでニンゲンを超える冷静かつ正確な対応をしていたコンピューターが、なんとも不可解な着手を連発し始めたのです。取られている(すでに生きる見込みのない)石から動き出して、動いた石をぜんぶ取られてしまったり、ほとんど勝敗には関係のなさそうなヨセを打っては損を重ねたり、明らかに相手のポカ(うっかりミス)を期待するような見え見えの手を打ったりと、それまでの高潔な着手からは信じられないほどのあるまじき着手を連発する体たらく。あまりの豹変振りに驚きつつも、これが機械のなせる奇怪なるワザであろうかと、我が口からおやじギャグまで飛び出す始末。

もはやどうにもアキマヘン状態に陥り、ついにAlphaGoが投了しました。投了時の局面は、素人目にも美しくありません。ニンゲン同士の対局ならば、とりわけプロ棋士の対局ならば、「投げ時」というものがあります。もはや勝機がないと察した側が、「カタチづくり」をするわけです。これは囲碁に限らず将棋の場合だって同じこと。そこに負ける者の潔さを感じ取ることができます。

「カタチづくり」は、将棋の場合だと主に「一手すき」という「つぎに詰めますよ」の状態にすることを指し、囲碁では「最後のお願い」という「ここを正しく応対されたら負けを認めます」という一連の折衝を指します。そこになにがしかの勝機、勝敗のあやがあればいいのですが、たいていはダメとしたもの。。。

第4局でAlphaGoがとった「最後のお願い」は、(高倉)健さんが映画『幸福の黄色いハンカチ』で言った台詞、「草野球のキャッチャー」を思い起こさせました。

そのココロは、「ミットもない」です。

膨大なプロ対局の棋譜の蓄積から抽出された「最善(と思われる)手」が、コンピューターAlphaGoの着手だとするなら、勝ち碁は鬼の如し(本来は将棋で使われる表現です)を体現した第1~3局までと比べ、この第4局の白78手以降の応接はあまりに稚拙でした(もちろん全着手がそうだという意味ではありません)。

「深層学習」deep-learningというAIシステムにも、まだ改良の余地がたくさんあるのでしょうね。

チャンバラ・ギャグで、いかにも強そうなやくざの用心棒が、剣を抜くまでの凄みから一転、突然刀をかつぎ土埃をたてながら逃げ去るのにも似て、この豹変ぶりにはガッカリしました。3の倍数のときだけアホになる、というギャグもありましたね。あんな感じ。。。

さて、今日はいよいよ最終第5局です。前回コンピューター攻略の糸口を見出したイ九段が、そこをさらに突いて完膚なきまでに叩きつぶしてほしいものです。この最終局で、負け越した2局ぶんの鬱憤を晴らしてほしいというのが、囲碁愛好家の願いでしょう(私の願い、ではあります)(^^)。

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