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愛のカタチ 場所と人にまつわる物語  

愛の百態

時間と空間のはざまに浮き沈みする場所の記憶をたどる

意外な結末

2024-12-15 21:37:41 | 愛のカタチ
「男と女の仲は、思うようにいかないものだ」とつくづく幸雄は思った。幸雄は初世という名の三つ年下の妻と東京の西郊外
にある小さなアパートで所帯を持っていたが、ある日、家に戻ると妻の姿が消えていた。
数日後、妻の親から、「私、家を出るから探さないで」という報せがあったことを聞く。自分の妻が突然、自分の知らない世界に消えていってしまった。
それは不可解な朧な世界だった。初世と過ごした幸せな日々が走馬灯のように頭をくるくる回っていた。
それらがすべて終わった実感がどっと胸に流れこんできた。
後日、妻には男がいて、その男のところに走ったことがわかった。それは妻の友達から聞いた噂だった。
その男とはどんな男か、幸雄は突き止めたく思った。妻はその男に騙されて、こんなことになったのに違いないと確信した。
その男の正体をつかみたい、幸雄はそう思い、心当たりのある人や場所をあちこち探し回った。
するとひとりの男の姿が浮かび上がってきた。その男は、なんと家にしばしば出入りしていた親友の浪川智也だった。疑うとすべてが合点できた。
そういえば、智也が家に遊びに来た時など、妻が妙に明るくはしゃいでいたことが思い出された。ぎりぎりと歯を噛み締めながら、幸雄は夜の町を走った。
気づかなかったが、お互いが目配せをしていたかも知れなかった。知らなかったのは自分だけだったのだ。幸雄は愚かな自分を恥じた。
後日、幸雄は、智也の住む、西武線沿線沿いにあるアパートに押しかけた。
そこには妻が一緒にいた。一瞬、驚いた様子をみせたが、すぐに幸雄を突き放すような目になった。幸雄は二人からすべてを聞き出したかった。
二人とのやりとりのなかで、妻が「私、ずっと前からこの人が好きだったのよ」と言った言葉が幸雄を打ちのめした。
妻の口から直接、そんなことを聞くとは思わなかった。
「そういうことだったのか」と幸雄はあらためて事の真相に愕然とした。男と女って、いろいろなことがある、ということを
今さらながら深く幸雄は知ることになった。
が、それを知った時にはすべてがもう遅すぎたのである。それを知った時にはすべてがもう遅すぎるのだ、と幸雄は悟るのであった。

別れることは何でもない。しかし、別れたことの記憶が蘇るたびに、別れの持つ意味が次第に大きくなる。
そして、ついに、人を愛するということは、別れるためであることを理解するのである。