場所と人にまつわる物語

時間と空間のはざまに浮き沈みする場所の記憶をたどる旅

終の住処にふさわしいカナダ、ビクトリア地方

2024-09-09 16:22:41 | 場所の記憶
 最後に訪れたのはカナダ最西部にある州都ヴィクトリアだった。カナダの中でも季候温暖で、カナダ人が人生の最後にはそこに住みたいと念じている場所であるとされる。 
 雪の中から明るい街に来ただけに、見るものすべてが輝いていた。ヴィクトリアはバンクーバー島の最南端にある街で、
別名、ガーデンアイランドの名で呼ばれている。というのも、歴史的な背景から、英国の影響が色濃く残る街並みには花が溢れ、議事堂をはじめ、歴史ある建物が散見されるからである。
 ダウンタウンには、港を囲むように美しい遊歩道が整い、多くの古い建物を活かした店が立ち並ぶなど、風情ある街並みがつづく。
 海岸沿いの遊歩道には人々があふれ、ある者は陽光の下、ぼんやりくつろぐ者、路上演奏を楽しむ者とさまざまな形で、ゆるやかに流れる時を過ごしていた。
 聞くところによれば、カナダ人は老後になったら、この気候温暖なビクトリア地方に住まうことを理想としているという。
 言われて見れば頷ける。若い時はともかく、老後になったら、この気候温暖で、のんびりと過ごすに最適なこの地は、願ってもない終の住処ということなのだろう。
 喧騒で、神経が逆撫でされるような日本の都会とは対照的なたたずまいの、この地が羨ましかった。
 半日、郊外にあるブッチャード・ガーデンを訪ねた。そこは世界有数のフラワーガーデンで、緑濃い森の中には、幾つもの花壇がつくられ、季節の花々が咲いていた。
 そこでトーテムポールというものを初めて見た。
ポールに彫られている動物や人をかたどった彫像には、先住民が語り伝えたさまざまな意味がこめられているのだろうが、どれもが不思議な感じがした。自然と人間が共生している姿を実感した。

 おしなべてカナダは明るく清潔な国という印象が強かった。