少し偏った読書日記

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チャイナ・セブン<紅い皇帝>習近平

2021-01-17 09:49:56 | 読書ブログ
チャイナ・セブン<紅い皇帝>習近平(遠藤誉/朝日新聞出版)

6年余り前に、朝日文庫から出た『チャイナ・ナイン』を読んだ時の衝撃を覚えている。そこには、上位9人の多数決ですべてが決まる中国の権力構造と、習近平が国家主席に選ばれた経緯が、克明に描かれていた。ここまで内実を暴露して大丈夫なのか、と心配になると同時に、あとがきに記された著者の覚悟を読んで、心を動かされた。

その本で、9人が7人に変わったこと、その事情は近く刊行される『チャイナ・セブン』で解説する、との予告があった。文庫での続編を期待するうちに年月が流れたが、ついに文庫化されることはなく、ようやく最近になって手に入れた。刊行は2014年11月だから、文庫本のすぐ後に出たことになる。

この本では、習近平の生い立ちを詳細に記述し、そこから彼の改革の意図を読み取っている。また、次期チャイナ・セブンの予想もしている。現時点で振り返ると、その分析は正確だが、一点で大きく異なっている。従来の慣行では、国家主席は2期までで、次の国家主席になる人物が、2017年に選ばれるはずだったが、実際には選ばれなかった。習近平は、自ら国家主席を3期以上務める道を選んだのだ。この本の執筆時点でそれを見通すことはできなかっただろうが、著者のその後の記事を探すと、そのあたりの事情も解説している。

著者は、習近平が改革と強権の路線をとらざるを得ない事情を読み解きつつも、最後は「自由と民主」が勝つはずだと信じているようだ。しかし、私はそれほど楽観的になれない。

ユヴァル・ノア・ハラリは『ホモ・デウス』の中で、人間至上主義に替わってデータ至上主義が優勢になれば、自由主義と民主主義は、発展の必要条件ではなくなると示唆している。

この予言が実現しないことを、強く願っている。


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