少し偏った読書日記

エッセーや軽い読み物、SFやファンタジーなどの海外もの、科学系教養書など、少し趣味の偏った読書日記です。

最終定理

2022-10-22 07:00:00 | 読書ブログ
最終定理(アーサー・C・クラーク&フレデリック・ポール/早川書房)

最近、東京創元社の作品が続いたので、早川書房にも義理立てをしようと図書館で探してみたら、少し古いが、巨匠2人の共著を見つけた。

最終定理とは、フェルマーの最終定理のこと。すでにワイルズによる証明が存在するが、本作は、たった5ページの「簡潔な」証明に成功した数学者の物語。数学の小ネタがいくつか出てくるが、基本的には、人類の宇宙進出に関わるSFなので、数学が苦手でも問題ない。

主人公の波乱万丈の人生と並行して、地球を監視する異星種族や、米国、ロシア、中国のパワー・ポリティクスの動向が描かれる。これらがどのように絡み合い、どのように収束するのかが、本書の趣向。

2008年に刊行された作品だが、現在の視点で読むと、大国間のパワー・ポリティクスの様相が楽観的過ぎて、現実味がないので残念、という面があるのは否めない。(まあ、ある時期までは、経済が発展すればおのずと民主化されるはず、という楽観論があったのは確かだ。)

しかし、テンポのよい物語の展開や、共著者が得意とするテーマへの収束は、久しぶりに、彼らの作品を読む楽しさを思い出させてくれた。

なお、作者もあとがきで断っているが、最終定理の「簡潔な」証明はできない、と考えるのが妥当。もうひとつ、本書には、リーマン予想が証明された旨の会話があるのが気になる。(もちろん、まだ証明されていない。)


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