冬期限定ボンボンショコラ事件(米澤穂信/創元推理文庫)
このシリーズ、確かに四季の一部が欠けていたけれど、長い空白期間を経て番外の「巴里マカロン」が出たこともあり、「冬期」が出るとは期待していなかった。
読み終えた後では、シリーズを完結させるために、今作が必要だった。というよりは、これまでの作品すべてが、今作のための準備だった、とさえ思える。
主人公は交通事故にあい、入院する。不自由で退屈な入院生活と、中学生時代に起きた未解決事件の回想が描かれる。その事件を通じて知り合った、小市民を目指す同志であるヒロインは、途中まで、チョコレートボンボンの差し入れと短いメモでだけ登場する。
そして、限られた情報から、3年前の事件と今回の事故の真相が解明される、安楽椅子探偵的なミステリ仕立てになっている。
特記すべき事項。
本シリーズを特徴づける「小市民」という言葉。通常、特殊な意味合いでしか使われない言葉で、ユーモア推理の風味付けかと思っていたが、主人公とヒロインの間では、自戒を込めた特殊な意味合いを持っていたことが明らかになる。
そして、もうひとつのキーワードである「互恵的」関係は、高校生活の終わりと同時に解消し、新たに、「次善」という言葉が特別な意味を持たされる。
いずれにしてもこのシリーズは完結した。仮に続編が書かれるとしても、それはまた別の物語になるだろう。
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