ビブリア古書堂の事件手帖Ⅲ~扉子と虚ろな夢~(三上延/メディアワークス文庫)
ビブリア古書堂シリーズの新作。前作~扉子と空白の時~から1年4か月。ずいぶん待たされた気がする。
本についてのいろいろな相談に応じる古書店に、今回持ち込まれたのは、遺品となった約千冊の蔵書をめぐる、身内の争いごと。依頼主は亡くなった古書店主の別れた妻。高校生の息子が相続するはずの個人的な蔵書を、古書店主の父、高校生からすれば祖父が、店の商品として全て売り払おうとしているので、それを止めてほしい、というもの。
蔵書は、三日間開催されるデパートの古本市に出品され、少しづつ売れていく。その過程で起こる事件を解決しながら、だんだんと、ことの真相が明らかになっていく。
ひとつの事件ごとに、ひとつの古書が取り上げられるのは従来と同じスタイル。新しいシリーズでは、扉子を中心に話が進むのかと思ったら、必ずしもそうではなかった。扉子も活躍するが、やはり母親の栞子が物語の中心にいて、時おりまじる一人称の記述は、栞子の夫、五浦大輔の視点で書かれているのも、従来と同様だ。
ということであれば、当然、もう一人の古書のエキスパートも、出てこないはずがない。
作者のあとがきによれば、次作では、シリーズの前日譚、栞子の過去の話も出てくるらしい。