文化の脱走兵(奈倉有里/講談社)
ロシア文学研究者、翻訳者のエッセイ。
ロシア在住経験もある著者が、2022年から2024年にかけて執筆した文章だから、当然、ロシアのウクライナ侵攻に関する言及がある。
「国や政府とは、その行政単位に暮らす人々や、その国にかかわる人の人権を守るためだけに存在する最低限の必要悪であるべき」
これは、2014年秋(クリミア併合後)の、ロシア人の言葉として紹介されている。
また、「書きたいことを好きなように書いた」というとおり、さまざまな話題が取り上げられている。
例えば、12歳のとき、「かわいいおばあちゃんになりたい」と思った、という話がある。(17歳のときに同じ言葉を発した同級生を想い出した。)
という具合に、さまざまなことを想起させる、奥行きのある文章。
文化が「人と人がわかりあうために紡ぎ出されてきた様式」であるとするならば、この人の文章は、文化の力への信頼にあふれている。
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