「日本の映画は遂にハリウッドを越えた!!」
そう言っても言い過ぎではない出来栄えだった。
優れた原作と優れた映像技術が融合した
上質のエンターテイメントでした。
行ってきましたよ「ローレライ」試写会、予告どおり今回はその感想など
原作は、福井晴敏「終戦のローレライ」で、その映画化です
(詳しいストーリーは公式HPで確認して頂くと良いかと思います)
太平洋戦争末期の1945年8月、広島に続く第2、第3の原子爆弾投下を
阻止すべく、絹見少佐(役所広司)が命じられた任務とは、ドイツ軍から
接収した戦利潜水艦【伊507】たった一艦による南太平洋、テニアン島
(原爆を積んだ爆撃機が離陸する発進基地)への奇襲攻撃だった。
一見無謀な任務と思われたが、この戦利潜水艦【伊507】には
ナチスドイツによる特殊な敵艦探知システム"ローレライ・システム"が
搭載されていた。このシステム、米軍曰く「世界の勢力図を塗り替える」
ほどの代物で、そのシステムのオペレータを日系ドイツ人の少女"パウラ"
(香椎由宇)が務めていた、しかしそのシステムと彼女自身には多くの謎が・・・
そんな矢先、遂に第2の原爆が長崎に投下された、そして第3の原爆の
標的になったのは首都、東京だった。原爆投下を阻止すべく【伊507】は
テニアン島に集結した米艦隊に最後の戦いを挑む。
【映像、ストーリー】
とにかくスゴイ映画です、最初から最後まで息もつかせぬ展開で
怒涛のようにストーリーが進んでいきます、俺の場合あまり退屈な
映画だと途中で尻が痛くなるんですが、この映画は全くそれを感じません
上映時間2時間8分があっと言う間に過ぎていきました。
特に凄いのが、米艦隊と潜水艦による海戦の様子で
これはハッキリ言ってスクリーンで観ないとウソです!
主役である潜水艦【伊507】が途中で撃沈される訳がないと
分かっていても、魚雷をかすめるシーンや機雷が後方で
爆発するシーンは、思わず力が入るほどの迫力でした。
序盤の敵艦隊に向けて艦砲射撃を実施するシーンも秀逸で
急浮上して海面にその姿を現し、敵艦隊に向けて即座に射撃実施
砲弾が海面に波を立て飛んでいき敵艦隊に命中→そして急速潜航
という一連の流れは、観ていて本当に背筋がゾクゾクしました。
また最後の戦闘は、とある事情により敵艦隊を撃沈する事無く
航行不能にしなければならず、その為に信管を抜いた魚雷で応戦します
見る側としてはモヤモヤ感を煽られる訳ですが、最後は信管の入った
魚雷で敵潜水艦を撃破→そんで観ている我々もスッキリー!となる訳です
これについては思わず俺も、作り手に対して「巧いなぁー!」と
舌を巻いてしまいました。ここら辺の作りも、この作品が1級品の
エンターテイメントであると言える要因なのではないでしょうか。
【人間模様、ドラマ】
伊507やローレライシステムを取り巻く人間模様もしっかり
描かれていて、作品により一層深みを増しています。
皆熱いんですよ、それぞれ戦う理由があって。
ただし、この部分については小説のほうが
より深く描かれているのではないでしょうか?
絹見少佐(役所広司)
軍人であるがために妻を幸せに出来なかった事を悔いている、艦長
木崎(柳葉敏郎)
副艦長的存在で立場上厳しくも、部下に大きな理解を示す
5歳の娘がくれた綾取りの紐を手首に巻いている
折笠(妻夫木聡)
元人間魚雷の搭乗員、戦争で父母兄を失っている
その為、最初は自分も死に急いでいる感があったが
パウラとの出会いによって、気持ちに変化が・・・
清永(佐藤隆太)
折笠と同期で親友、元人間魚雷搭乗員
本人曰く「世が世なら甲子園の花形」
こよなく野球を愛している
パウラ(香椎由宇)
ローレライシステム、オペレーター
日系ドイツ人(クォーター)悲しい過去を持つ
田口(ピエール瀧)
鬼の掌砲長だが、銀座のパーラーで働いていた経歴を持つ
南方戦線での壮絶な過去がある(とにかく彼イイんですよ!
人間味があって、俺的にかなりナイスなキャスティングです)
岩村(小野武彦)
酔いどれ(?)機関長、いかにも技術屋的な気質で味わい深い人物
時岡(國村隼)
伊507の軍医、終盤、艦を離れる若者に愛用のカメラを託す、渋い!
主な人物を取り上げてみましたが、その他エリート将校(堤真一)の
思惑や(これにより伊507は大きく翻弄される)敵駆逐艦の伊507に対する
恐れと憎悪(拿捕を命じられるが納得いかず、よしんば撃沈したい)などが
交錯します。
ざっと挙げただけでも、これだけの人物描写が作品中で語られますが
説明ぶった形ではなく、あくまでも無理なく物語りに絡んでいきます。
ここら辺は恐らく原作「終戦のローレライ」の出来の素晴らしさに由来する
所だったのではないでしょうか。
そして、観る者それぞれに訴えかけるシーンも多く
「大人たちが起こした戦争に、お前たち子供まで巻き込んでしまった・・・」
云々のシーンには、思わず俺も、我々大人たちの、これからの子供達に
対する責任を深く考えてしまいました。
しかし、物語の舞台が太平洋戦争とは言え、決して重い内容では
ありません。見る者に希望(救い?)を持たせるような終わり方で
最後は素直に「良かったし、面白かった」と思いました。
あと、この作品、様々な映画への尊敬や敬意が込められているように感じます
伊507とN式なんか、まるで天空の城ラピュタのタイガーモスと偵察用の凧
のようです(折笠とパウラ乗ってるし、あっちはパズーとシータだし)他にも
エリート将校の浅倉大佐の思想はまるで(逆襲のシャア)のキャスバル的だし
パウラなんか、まんまニュータイプだし(ナチスの研究所=フラナガン機関)
まぁこれは俺の妄想なんでしょうが、そういった観方も一つの楽しみと
言えるのではないでしょうか。
幸い今回は試写会で鑑賞することが出来ましたが、1,800円?
1,600円?払っても十分に元が取れる作品だったと言えます。
間違いなく人に薦められる作品でした(もう一度劇場で観たいと思った)
最後に全くの余談ですが、劇中ドフトエスキーの「罪と罰」の
下りが語られますが(主人公が本当に殺したかったのは云々)
「罪と罰」と言えば高校生の頃、思いつき(気まぐれ?)で
読んでみたくなり、学校の図書館から借りたはいいが
100ページも読んだ所で(我慢して読んだが)あえなくノックアウト
でその本は未だに学校に帰されず、実家にあったりする事を
この場を借りてお詫び申し上げます、本当にゴメンなさい
でもね、あの本読めねぇーよ!(意味わかんねぇし)
ロシア文学なんて一生理解できねぇーぜ!ハラショー!